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『ニュースの狭間』
アメリカ3D最新事情 2009年は「次世代3D元年」!
革命を起こすドリームワークス・アニメーション“Ultimate 3D”

 
2008/03/15

ニュースの狭間
取材現場でふと目についたこと。毎日ニュースを報道していて、見えてきたこと。バラエティ・ジャパン編集部員が流れていく「ニュースの狭間」にあるトピックを取り上げ掘り下げていくコラム。エンタテインメント・ニュースから、世界が見えてくる。

次世代3Dはカラー映画登場と同様のインパクト

ジェフリー・カッツェンバーグ
ジェフリー・カッツェンバーグ
 3月11日、ショーウエストの開幕式で、ドリームワークス・アニメーションの代表ジェフリー・カッツェンバーグ氏が、最新の3D映画製作技術“Ultimate 3D”を独自に開発して製作した“Monsters vs. Aliens”の一部を上映し、関係者の喝采を浴びた。

 カッツェンバーグ氏は、来年2009年を「次世代3D元年」と呼ぶ。これから我々が目にする3D映像はこれまで見たこともないもの、つまり、約70年前にカラー映画が登場した時と同じくらいのショックを人々に与える「革命」だと豪語するのである。大変、大仰なことを言っているようであるが、“Monsters vs. Aliens”の一シーンを観ただけで、これが納得できてしまうのだ。

 かねてより、3D映画鑑賞による未曾有の体験こそが、観客の足を劇場に運ばせ、ひいては映画ビジネスの再活性化を進める鍵となると業界に説いてきた同氏。彼が3Dに映画業界の未来を見たのは『ポーラー・エクスプレス』のIMAXでの3D上映だったという。人間は五感を刺激されて初めて感動を覚える。映画にとって重要なのは、五感の中でもとりわけ聴覚と視覚。これこそが観客を劇場に呼ぶ方法だと考えたようだ。

“Ultimate 3D”とは?

“Monsters vs. Aliens”
“Monsters vs. Aliens”
 では、ドリームワークス・アニメーションが開発した新しい3D映画製作システム “Ultimate 3D”(究極の3D)とはどういうものなのだろうか。

 これまでの3D映画は、ほとんどが2Dで製作され、編集を終えた段階で3Dに変換される、という方法で作られてきた。2D映像と比べて奥行き感は出るものの、本当に3Dを実感出来るのは、武器や動物などが観客の方に向かって飛び出してきた時だけだった。ところが、ドリームワークス・アニメーションでは、「観客がまるで場面の中に入り込んでしまったような感覚を覚える」ことを目指して、新しい3D映像を作り上げたという。

 3D映像を編集の段階で変換するのではなく、一から作るために、開発された“Ultimate 3D”システム。このシステムにより、ドリームワークス・アニメーションでは“Monsters vs. Aliens”の製作の段階から、2D映像と3D映像、同時に製作している。

 このシステムを開発した際、ドリームワークス・アニメーションでは、2D作品『カンフー・パンダ』(今年6月6日全米公開。日本公開は7月28日予定)の一場面を抽出し、3D映像を一から作り上げるというテストを行っている。このテストに選ばれたのは、長い間、牢屋に入れられていた極悪キャラクターが脱獄する、というシーンだ。カッツェンバーグ氏によると、3D映像にするのが最も難しいのは、「暗い」、「(動きが)速い」、そして「(カットが)速い」という場面。この脱獄シーンはこれら全てを備えたものであるため、このシーンを3D映像に出来れば、それ以外のシーンは問題なく作れる、と考えたためだという。

 そして、見事にこのシーンを満足度の高い3D映像にすることが出来、確信を掴んだ同社は、いよいよ“Ultimate 3D”で全編を3D製作するという、同社初の試みに挑んだ。

 その手順は以下の様なものだ。

Ultimate 3D
撮影

“Monsters vs. Aliens”監督の1人ロブ・レターマン
“Monsters vs. Aliens”監督の1人ロブ・レターマン
 まずは、CGで作られたキャラクターや背景のイメージをコンピューター上の「セット」に入れ、動かす。この時、“Ultimate 3D”では、実写作品を撮影するのと同じように、カメラに見立てたデジタルの小型モニターが三脚の上に置かれ、部屋の天上に設置された特別のセンサーでカメラ・モニターの動きを読み取ると、目の前のスクリーンにカメラの動きがそのまま現れる。つまり、これにより、撮影監督が実際に「カメラ」を動かしながら、監督と共に位置やアングルを決めていけるのだ。

Ultimate 3D
編集

“Monsters vs. Aliens”もう1人の監督コンラッド・ヴァーノン
“Monsters vs. Aliens”もう1人の監督コンラッド・ヴァーノン
 そうして撮影された映像は、左目用の映像と右目用の映像と2通り作られる。これらは、一見同じに見えるが、微妙に位置がずれているため、重ね合わせて3D専用メガネで見ると、立体的に見える、という仕組みである。ドリームワークス・アニメーションでは便宜上、左目用の映像を2D版として編集。3D版も同時に作られていく。ここで2つのバージョンの違いが発生するのだが、それは主に画面進行のペースだという。3D映像の場合、人間の目は、見ているものを認識するのに、通常より少し時間が余計にかかる。そのため、速く動く物体に関しては、通常の2D映像より、やや遅めに動かす必要があるという。もちろん、観客にショックを与える目的の映像はこれに当てはまらないのだが。

Ultimate 3D
調整

 3Dで編集された場合、一つ一つのカットは問題なく見えても、それらを繋いだ時に、違和感が出ることがあるという。例えば、前の場面でキャラクターが立っていた位置と、次の場面で別のキャラクターが立っている位置の距離感が合わないと、場面が切り替わった際に、観客の目が察知してしまい、滑らかさを失ってしまうというのである。これは、非常に微妙な違いなのであるが、ドリームワークス・アニメーションでは、この違和感を失くすために、画面の焦点深度を調節するソフトを開発した。場面場面の繋がりを見ながら、焦点の深度を変えることによって、観客の目に違和感を与えずに物語りを進行することが出来る。つまり、彼らの仕事が「観客に気づかれないことこそ、成功といえる」のだという。

Ultimate 3D
でも結局は物語ありき

“Monsters vs. Aliens”
“Monsters vs. Aliens”
 こうして出来上がった映像は、まさに、カッツェンバーグ氏が目指していた通り、観客がその場面の中にいる様に感じることが出来る、素晴らしい映像の連続。しかしながら、同氏はあくまでも物語ありき、であることを強調する。どんなに映像が素晴らしくても、観客は物語を観に来るのである。いい物語を、最もいい形で表現する。これこそが、いつの時代にも映画ファンを満足させる映画と言えるだろう。

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text by Tomoko Ishibashi (Variety Japan LA)

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