多くの人々に愛される宮崎作品。そのスピリットを体現した場所が三鷹の森ジブリ美術館だ。館長の中島清文さんを訪ねた。
金融業界からアニメ業界へ

(c)Museo d’Arte Ghibli
(c)E.Vasnetsova & N.Filipchenko
(c)E.Vasnetsova & N.Filipchenko

緑溢れる美術館の入口
豊かな自然に囲まれ、まるで森に溶け込むように、三鷹の森ジブリ美術館は存在する。入り口で待ち受けるトトロに挨拶をする子供、クリスマスツリーの下で語らうカップル、ジブリ作品の原画に魅入る外国人観光客……訪れる人たちの年齢も国籍もバラバラだが、ひとつだけ共通点がある。ジブリ作品を愛しているということだ。
現在、ジブリ美術館の館長を務める中島清文さんもジブリ作品を愛する者のひとり。しかし、元銀行員という経歴はアニメ業界においては異色だ。
現在、ジブリ美術館の館長を務める中島清文さんもジブリ作品を愛する者のひとり。しかし、元銀行員という経歴はアニメ業界においては異色だ。
「10年ほど前から、銀行員としてスタジオジブリを見ていました。“『千と千尋の神隠し』はどうしてこんなにヒットしたのか”とか、メカニズムを知りたかったので、スタジオジブリの鈴木敏夫プロデューサーに会うたびに質問をぶつけていました。そうしているうちに、密にお付き合いさせていただくようになって、縁あってジブリに入り、一年したら宮崎吾朗前館長がアニメーション監督になるということで、鈴木から“やれ”と言われまして(笑)。まさに縁だけ。ご縁あってここにいますって感じです」
アニメ制作の流れ:背景画を描くところ
映画の生まれる場所:美術室
アニメ制作の流れ:仕上げ・細かい色指定
(写真:左から)映画の生まれる場所:美術/映画の生まれる場所:作画室/アニメ制作の流れ:仕上げ・細かい色指定
企画展の開催

絵本「3びきのくま」の世界を体験
館長に就任してから、ジブリ美術館のメインである企画展示を三度経験した。最初は「アルプスの少女ハイジ展」、次に『ウォレスとグルミット』で有名な「アードマン」展、そして現在開催中の「3びきのくま展」。もともとアニメや絵本に精通していたわけではない中島館長は、それぞれの世界を理解するために、勉強したという。

“くまサイズ”の家具
「企画・構成は宮崎(駿)監督なので、宮崎監督に直接インタビューしたりして、理解しようと務めました。例えば、「3びきのくま展」には、子供が子供らしくあるための環境が必要だという宮崎監督のメッセージが込められています。美術館という場所を使って、宮崎監督やスタジオジブリの理念をどう伝えていくか。それを考えるのが僕の仕事だと思うんです」
ライブラリー事業で世界のアニメーションを紹介
そして、2007年。中島館長は、世界のアニメーションを発信することを目的とした“ライブラリー事業”をスタートさせた。新旧問わず、優れたアニメーションを映画館で上映し、DVDで紹介するという新事業は、これまでにアレクサンドル・ペトロフ監督の『春のめざめ』、ミッシェル・オスロ監督の『アズールとアスマール』を成功させ、12月15日には1957年にロシアで作られたレフ・アタマーノフ監督の『雪の女王<新訳版>』が公開される。

トトロがお出迎え

エントランスホールの天井のフレスコ画
「元々は宮崎監督が言っていたことなのですけれども、アニメーションは本来、絵を動かして見せるもの。それを一場面を切り抜いてごもっともな絵として美術品のように飾っても意味がない。でもここでやる以上、基本的には展示として紹介するしかない。長編映画はかけられないし、ジブリ作品そっちのけで違う作品をやるのはおかしいし。そういう世界のアニメーションをきちんと紹介する場所が欲しいということで、ライブラリー事業を始めることになったんです。それともう一つ、商業映画として上映するのは難しいような作品の中にもいいものがたくさんありますから、そういう作品をうちで紹介できないだろうかと思いました。最初はDVDから始めようとしたんですけど、たまたま“ジブリで紹介してくれないか”と良い作品が集まってきたので、だったら劇場公開からやろうということになったんです」

今年のクリスマス装飾(~12月26日)のテーマは『雪の女王』
ジブリ美術館の名前を冠した事業だけに、作品選びが非常に重要になってくる。しかし、その選択基準は思いのほかシンプルなものだ。
「高畑監督と宮崎監督が基準です。二人に見せてダメと言われない作品にしないといけないと思っています。考え方としては、ジブリと同じ志で作っている作品。物作りにこだわり、メッセージが込められていて、子供たちに希望を与えてくれる作品ですね。過去の作品ならば、高畑、宮崎が影響を受けた作品を紹介していこうかと。ライブラリー事業を始める前に去年公開した『王と鳥』は、高畑、宮崎の二人ともが影響を受けた作品です。高畑は『王と鳥』を見てアニメーションの世界に入ったし、宮崎はいろんな映像表現を参考にしています。“古い作品ですけど、いい作品ですから見てください”というスタンスだったんですが、思っていた以上に反響がありました。今度公開する『雪の女王』は、宮崎監督に多大な影響を与えた運命の作品です。誰かを助けたい、誰かを守りたいという一心で運命に立ち向かっていく宮崎作品の主人公というのは、『雪の女王』から影響を受けているんです。それだけではなくて、雪の女王は、ロシアの厳しい冬や自然の脅威を象徴しているんですが、それと人間のどっちが勝つかという欧米風の考えではなく、ある時は脅威になるけど、ある時は助けてくれる存在になるという共存の考え方も、宮崎監督の作品に通じると思います。『雪の女王』のいいところを引き継いで、進化させてきたのが宮崎作品なのではないかと思います。宮崎ファンであれば必ず一度は見て欲しい作品ですね」
「高畑監督と宮崎監督が基準です。二人に見せてダメと言われない作品にしないといけないと思っています。考え方としては、ジブリと同じ志で作っている作品。物作りにこだわり、メッセージが込められていて、子供たちに希望を与えてくれる作品ですね。過去の作品ならば、高畑、宮崎が影響を受けた作品を紹介していこうかと。ライブラリー事業を始める前に去年公開した『王と鳥』は、高畑、宮崎の二人ともが影響を受けた作品です。高畑は『王と鳥』を見てアニメーションの世界に入ったし、宮崎はいろんな映像表現を参考にしています。“古い作品ですけど、いい作品ですから見てください”というスタンスだったんですが、思っていた以上に反響がありました。今度公開する『雪の女王』は、宮崎監督に多大な影響を与えた運命の作品です。誰かを助けたい、誰かを守りたいという一心で運命に立ち向かっていく宮崎作品の主人公というのは、『雪の女王』から影響を受けているんです。それだけではなくて、雪の女王は、ロシアの厳しい冬や自然の脅威を象徴しているんですが、それと人間のどっちが勝つかという欧米風の考えではなく、ある時は脅威になるけど、ある時は助けてくれる存在になるという共存の考え方も、宮崎監督の作品に通じると思います。『雪の女王』のいいところを引き継いで、進化させてきたのが宮崎作品なのではないかと思います。宮崎ファンであれば必ず一度は見て欲しい作品ですね」
自然と馴染み調和する建物
ライブラリー事業という新事業を始めて、中島館長の忙しさは増すばかりだが、毎日欠かさず行なっていることがある。
「屋上で毎朝鐘を鳴らしております。快感です(笑)。季節を感じられるんですよね。初夏の頃には夾竹桃の白い花が咲き、夏になると緑が本当に濃くなって、秋になるとススキがあって、冬になると葉っぱが落ちていく……。屋上だけじゃなくて、屋上から見る風景。周りとの調和というか、ジブリ美術館は本当に森の中にある感じがして大好きなんです。宮崎監督が言っていることなんですけど、この建物は時が経っても古びないように作ってあるんです。漆喰壁や鉄、木材も本物を使っているので、建物自体はどんどん古くなっていくんですけど、周囲ときっちり馴染むはずだと。もちろん館内に関しては、スタッフが飽きないように少しずつ小物を入れ替えたりはしてますけどね。クリスマスの装飾も、スタッフそれぞれがこだわりのエリアを設けて飾りつけているんですよ」
「屋上で毎朝鐘を鳴らしております。快感です(笑)。季節を感じられるんですよね。初夏の頃には夾竹桃の白い花が咲き、夏になると緑が本当に濃くなって、秋になるとススキがあって、冬になると葉っぱが落ちていく……。屋上だけじゃなくて、屋上から見る風景。周りとの調和というか、ジブリ美術館は本当に森の中にある感じがして大好きなんです。宮崎監督が言っていることなんですけど、この建物は時が経っても古びないように作ってあるんです。漆喰壁や鉄、木材も本物を使っているので、建物自体はどんどん古くなっていくんですけど、周囲ときっちり馴染むはずだと。もちろん館内に関しては、スタッフが飽きないように少しずつ小物を入れ替えたりはしてますけどね。クリスマスの装飾も、スタッフそれぞれがこだわりのエリアを設けて飾りつけているんですよ」
鐘を鳴らす塔
屋上にはロボット兵
吹き抜けの中央ホール
随所に仕掛けがある
(写真:左から)開館の鐘を鳴らす塔/屋上にはロボット兵/吹き抜けの中央ホール/随所に仕掛けがある
※ジブリ美術館は、日時指定の予約制です。入れ替え制ではありません。チケット(入場引換券)は全国のコンビニエンスストア ローソンだけで販売しています。http://www.ghibli-museum.jp/ticket
※ジブリ美術館は、日時指定の予約制です。入れ替え制ではありません。チケット(入場引換券)は全国のコンビニエンスストア ローソンだけで販売しています。http://www.ghibli-museum.jp/ticket
中島清文
1963年、栃木県小山市生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友銀行(現・三井住友銀行)に入社。2004年4月にジブリ美術館の管理・運営を行う財団法人徳間記念アニメーション文化財団の事務局長に就任。2005年6月に三鷹の森ジブリ美術館館長に就任。
1963年、栃木県小山市生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友銀行(現・三井住友銀行)に入社。2004年4月にジブリ美術館の管理・運営を行う財団法人徳間記念アニメーション文化財団の事務局長に就任。2005年6月に三鷹の森ジブリ美術館館長に就任。

(c)2004 Films By Jove Inc. in association with Soyuzmultfilms studio
『雪の女王』
●原作:H・C・アンデルセン「雪の女王」 監督:レフ・アタマーノフ 脚本:L・アタマーノフ、G・グレーブネル、N・エールドマン 美術:A・ヴィノクーロフ、L・シュワルツマン 音楽:A・アイヴァジャン
●声の出演:Y・ジェイモー、A・カマローワ、M・ババノーワ、G・コナーヒナ、V・グリプコーフ
●配給:三鷹の森ジブリ美術館
●1957年/ソ連(ロシア)/65分/2007年12月15日日本公開
text by Takeshi Oka
photographs by Munetaka Harada
●原作:H・C・アンデルセン「雪の女王」 監督:レフ・アタマーノフ 脚本:L・アタマーノフ、G・グレーブネル、N・エールドマン 美術:A・ヴィノクーロフ、L・シュワルツマン 音楽:A・アイヴァジャン
●声の出演:Y・ジェイモー、A・カマローワ、M・ババノーワ、G・コナーヒナ、V・グリプコーフ
●配給:三鷹の森ジブリ美術館
●1957年/ソ連(ロシア)/65分/2007年12月15日日本公開
text by Takeshi Oka
photographs by Munetaka Harada























