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『ピーター・バート、かく語りき』
企業のルールに従うハリウッド

 
2008/04/04

ピーター・バート
米バラエティ誌 編集長。ウォール・ストリート・ジャーナル紙とニューヨーク・タイムス紙のレポーターを経て、1967年にパラマウント・ピクチャーズへ。『ゴッドファーザー』『ペーパー・ムーン』『ローズマリーの赤ちゃん』など数々の名作のプロデュースに関わり、77年、独自の製作会社を設立。そこで『郵便配達は二度ベルを鳴らす』などの作品をプロデュースする。MGM/UAの上席副社長を経て、89年よりバラエティ誌の編集長兼副社長を務める。

業界は古き良き時代を懐かしむ

 ニュースを追う人間は、どこででもネタを探している。例えば、私にとってのトレンドウォッチャーの1人は、近所の薬剤師である。彼の所に通う常連客たちには、ショービジネス界で働く面々が多い。「街のムードは暗いようだね」と、先週彼が私に言った。「抗うつ剤がすぐに品切れになってしまうよ」。

 この薬剤師の話は、先週我がバラエティでも取り上げた話を裏付けるものだ。これは一種の“真昼の暗闇”的な感情、つまり、際限のない機会に恵まれ、富を築きあげることができた時代はもう終わってしまった、という不吉な前兆である。

 楽観が過去のものなら、礼節もまたしかり。あるエージェントが私にこう言った。「この業界は昔はクラブ的なノリだったが、今となっては大企業だ。私はまだ40代だというのに、すでに昔が懐かしい」。

 ハリウッドの “新ルール”は仕事の振り分けを見れば分かる、と某ネットワークの社長が話してくれた。「もちろん、まずは最高の企画と最高の俳優を手に入れる。そして次は、以前であれば知り合いに話を持っていった。例えばCAAにいる友人や、3年前にヒットを出したが最近はパッとしない人とか、自分の前任者とか」。

 今日では、内輪で話を進める余地などはない、と、その社長は残念そうに語る。企業のルールブックには、そんなマニュアルはないのである。

 契約の過程についてタレント・エージェントと話をすれば、闘いの話を嫌というほど聞かされることになる。映画とテレビのビジネスに詳しい人々は、 “不屈”という言葉をキーワードに揚げる。「スタジオ側が、ストライキを行った脚本家たちに処罰を与えたいと考えている空気をいまだに感じる」と、あるトップ・エージェントが私に言った。

 だが、スタジオの責任者はこれを否定する。「誰かを罰するというような問題ではない。ただ、結んだ契約がばかげたものだったから、今後そういうことをやるつもりはない、ということだ」。

 本当のところ、もし誰かが罰せられるとすれば、それはエージェントだ。ハリウッドの企業経営者たちと話していると、誰も口にしない、ある感覚が蔓延していると感じる。それは、彼らの基準では、ハリウッドのエージェントたちが行使しようとしているビジネスモデルは時代遅れだということだ。エージェントたちの要求は多き過ぎ、彼らの “取り分”も大き過ぎる。

 見様によっては、CAAがセンチュリー・シティに新設した煌びやかなオフィスはエージェント業の記念碑的な象徴でもある。つまり、実権を主張しているのだ。CAAにとって、この大建造物は、これまでになく確立されてきたコンテンツ界において、才能ある人材がより重要になってきている、という事実を反映するものだろう。しかし、企業側の人間にとっては、 “才能”への正当な支払いではなく、むしろ “搾取”されている、というのである。

 一方で、現在の市場が困難であるということについては、疑いの余地がない。ストの間に中止されてしまった大きな執筆依頼契約は、スト後も戻ってくることはない。テレビのパイロット版の製作本数は例年に比べて減っている。大作映画の製作企画は次々と壊れている。スタジオが、俳優組合のストを恐れて、製作開始を渋っているからだ。

 それで結論は、というと、近所の親切な薬局の常連になる、ということ。昔は良かったなあ、などと振り返る人々も増えてくるのだ。

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