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『ピーター・バート、かく語りき』
“ハリウッド”という別世界からご挨拶

 
2008/04/10

ピーター・バート
米バラエティ誌 編集長。ウォール・ストリート・ジャーナル紙とニューヨーク・タイムス紙のレポーターを経て、1967年にパラマウント・ピクチャーズへ。『ゴッドファーザー』『ペーパー・ムーン』『ローズマリーの赤ちゃん』など数々の名作のプロデュースに関わり、77年、独自の製作会社を設立。そこで『郵便配達は二度ベルを鳴らす』などの作品をプロデュースする。MGM/UAの上席副社長を経て、89年よりバラエティ誌の編集長兼副社長を務める。

「セレブとの会話症候群」をどのように乗り切るか

 先日、ミック・ジャガーと一緒になる機会があった(解説すると、私が出席したパーティーに彼も来ていた、ということなのだが)。ともかく私は、突然、「セレブとの会話」といったものに直面し、印象的でもあり、落ち着かない思いをすることになった。ジャガーが私の方を振り返り、手を前に差し出し、ごつごつした顔にニヤっと笑みを浮かべながら近寄ってきたのだ。その時、私の後ろにいたある女性が、ハッとして、私の耳元でこう囁いた。「ミック・ジャガーとの会話なんて、何から話したらいいの?」

 私自身も彼女のパニックに共感した。職業上、有名人や俳優志望によく会うどころか、伝説とも言えるスターに会うことも珍しくないが、その分、「セレブとの会話症候群」にもよく出くわす。信者に囲まれてシャボン玉の中に住んでいる人と会話をするには、まずどんなことから会話の口火を切ったらいいのだろうか。彼らはきっと、今誰の家にいるのか、いや、どこの街にいるのかさえ分かっていないのだろうから。

 長年、私はエージェントやプロデューサーといった類の人々がどのように会話を始めるのか聞き耳を立て、彼らのアプローチを分析してきた。それは以下のように分類される。

●超イケてるアプローチ:若いエージェントがスターに近寄る時に多いのがこれ。「君、最近どう?」と、いかにも “仲間”という態度で話しかけるのだが、大体の場合、セレブたちからは冷たく退散を喰らう。

●感傷的アプローチ:善意の人々は「ずっとあなたのファンでした」とか、「この間の映画、とてもよかったです」といったことをつい口走る。しかし、こういった言葉は、通常、会話の開始には向いていない。なぜなら、スターたちはどれが最近の映画だったかも覚えていないし、どのみちいつもそういうことを言われている。これも、部屋の温度を少し下げてしまう台詞である。

●大げさな「前にお会いしましたね」アプローチ:わずかながらの共通点でも手繰り寄せるという様に、あるプロデューサーがこう言ったのを聞いたことがある。「さっきヒースロー(空港)で、すれ違いましたね」。これもまた、会話を始める言葉としては、滅多に成功を見ない。なぜなら、もしほんとにそのスターがヒースローにいたとしても、そんなことは忘れたいはずだし、思い出させられると不快になるだろうから。

パーティでの記念撮影風景
パーティでの記念撮影風景
 では、あなたがセレブだとしたら、どんな会話のきっかけが適当だと思うだろうか? 正解は、それはスターによる、ということ。中には、一切会話をしない方が安全なスターもいるし、相手のムードによって、陽気さのレベルを調節するよう気を使った方がいい場合もある。正直言って、スターと会話するというのは危険な行動なのだ。

 一つの大雑把な目安としては、こうだ。もし、悪役や殺人犯役で有名なスターがいたら、この俳優は愛想がよく、暖かい場合が多い。つまり逆に言うと、ヒーローを演じている俳優は、実際に会うと気難しいという傾向があるし、同様に、コメディ俳優は生来、非友好的だったりする。

 先週亡くなったリチャード・ウィドマークは『死の接吻』の “冷たく笑う殺し屋”として永遠に記憶に留められるだろうが、彼自身は本当に親切で優しい男だった。石のような顔をしたチャールズ・ブロンソンもそうだ。

 反対に、ヘンリー・フォンダの様な、「良い人」として人気があった俳優たちは、近づこうものなら頭を食いちぎられてしまう、というほどだった。知性的な政治家といったイメージを持っていたジョージ・C・スコットは、話しかけても、ただ背中を向けてしまうことだろう。ギャリー・シャンドリングのようなコメディアンに話しかけてみれば、なぜ皆がペリカーノに金を払って泥を洗い出してもらおうとするのかがわかるはずだ。

 言っておくが、すべてのことには例外がある。コメディアンの中でもビル・マーは陽気で、デイヴィッド・レターマンは怒りっぽいことで有名。スーパースターの中では、ジョージ・クルーニーは自分の映画や業界のために大使役を買って出て、よく働くし、撮影現場でもとても気さくだが、マーロン・ブランドは無愛想だった。、トム・クルーズも決まっていつも社交的だが、トミー・リー・ジョーンズは人見知りである。

 要するに、もしスーパースターと会話をしたいなら、褒められるか叱られるかどちらかを覚悟した方がいい。もちろん試す価値はある。結局のところ、子どもたちに「ミック・ジャガーと楽しく話をしたよ」と自慢出来るし。

 それで、私がどうやってこのロック界の大御所と会話をしたと思う? 私はとても当惑したので、こう言ってみた。「ミック、私たちには一つ共通点があるようだね。僕も君と同じくロンドン・スクール・オブ・エコノミクスに通っていたんだよ」。

 突然、彼も面食らった様子で、そして笑ってこう答えた。「少なくとも僕はあそこで何も学んでないですよ。いずれにせよ、皆、僕がそういうふうに言うことを望んでるみたいです。あんな最悪の学校に行ったミュージシャンのステージを、金を払って観に行こうなんて人間はいないですから」。

 彼がそう答えたので、私はようやく息をすることができた。後ろの女性も同じく息を吸い込み、そしてこう叫んだ。「2人共、そんな学校行ってないはずよ! 私をからかってるでしょ!」

 信じるかどうかは、彼女次第ということだ。

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