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『ピーター・バート、かく語りき』
ポルノ業界弱体化の経済 “硬化”

 
2008/04/25

ピーター・バート
米バラエティ誌 編集長。ウォール・ストリート・ジャーナル紙とニューヨーク・タイムス紙のレポーターを経て、1967年にパラマウント・ピクチャーズへ。『ゴッドファーザー』『ペーパー・ムーン』『ローズマリーの赤ちゃん』など数々の名作のプロデュースに関わり、77年、独自の製作会社を設立。そこで『郵便配達は二度ベルを鳴らす』などの作品をプロデュースする。MGM/UAの上席副社長を経て、89年よりバラエティ誌の編集長兼副社長を務める。

下半身で笑いをとるアパトウとシーゲル

 経済学者たちが景気後退の不吉な前兆を示唆している今日この頃、彼らは言及していないが、私なりに特に気がかりなことがある。ポルノ業界が突然、弱体化したことだ。

 ポルノのレンタルとセルの落ち込みは、いくつかの現象の中でも心配の種である。これまでは、ポルノ業界といえば不景気知らずだった。さらに、国内のムードがすでに意気消沈している状況で、ポルノ業界が弱っているという事実は、消費者信頼感が真に落ち込んでいるということを示しているのではないか、と考えられる。

 業界のどこまでを調査対象とするかにもよるが、ポルノDVDのビジネスは10%から30%落ち込んでいる。制作会社ウィックト・ピクチャーズの重役で業界アナリストでもあるジョイ・キングによると、最も落ち込みが少ないのは、 “カップルで見られるポルノ”だという。つまり、なんらかの物語性のある作品ということだ。このジャンルの対象はほぼ半数が女性で、下着屋やおもちゃ屋(むろん子どものおもちゃではない)で購入される。

 反対に、 “ゴンゾ(過激)”と呼ばれるジャンルは、財政を立て直すためのバイアグラをすぐにでも投与しなければならない状態だ。 “ゴンゾ”を好む男性たちの想いは報われない。中西部のムービー・ギャラリー社を始めとする多くの大型DVD販売店を閉店から救えるのは彼らかもしれないのに。

 こういったトレンドで恩恵を受けているのは、オンラインのポルノサイトだ。ただし、この手のビジネスは、トラフィックこそ、そびえ起ってるが、歳入面は萎んでいる。セールスは下降の一途だが、大会社の社員たちが、コンピューターの画面で3分間のポルノ映像を観る時間が増えているということだろう。ポルノ通の人たちのために、これらの映像の中にはハードコアを超えているものもあるという。つまり、 “メガ・ゴンゾ”の域だ。

 ポルノビデオの制作者たちは、建て直しのために必死である。ウィックト・ピクチャーズは “Space Nuts”や “Manhunters”、 “Flashpoints”といった過去のヒット作をDVDのBoxセットにして発売し直すなど工夫している。

 同時に、他のプロデューサーたちは制作や特撮にかかる費用を削減している。もともとこういった作品の制作費は5万ドルから7万5000ドルと少ないので、フィルムメーカーたちにとってはうれしい話ではない。もっとも俳優たちにとっては、1シーンに3回も4回もテイクを撮るよりは、1テイクで終わった方がいい、というものだろう。

 ポルノ作品売買のベテランたちは、この不況に不安を抱いている。かつて、政府による “Deep Throat”の上映禁止措置を発端として、多くのポルノ映画館が閉鎖に追い込まれ、突如、深刻な景気後退が起こったことを、このベテランたちは思い起こす。今日の不況は、エネルギー価格の上下落の影響と経済学者たちは分析するが、ポルノ業界のアナリストたちは、もっと何か別の変動が消費者信頼感に影響しているのだと主張する。

“一見”さんお断り?

“Forgetting Sarah Marshall”
“Forgetting Sarah Marshall”
 ポルノ業界の縮小のさなか、ジャド・アパトウ(注:若者を対象にした低俗コメディ映画を次々とヒットさせているプロデューサー/監督)はレーティングに抵抗する者たちの救世主として登場した。この事実には、明らかに暗い皮肉が潜んでいる。彼は、自分の映画の主演男優たちにことごとく男根を披露させているのだ。続々と製造されるアパトウ・コメディの最新作 “Forgetting Sarah Marshall”(米ユニバーサル作品)では、下ネタがたっぷり盛り込まれるだけでなく、下の映像もたっぷり見せる。

 つい最近までは、米映画協会(MPAA)がレーティングを決める際には、男性器が映っていたら自動的にNC-17 (注:17歳以下鑑賞不可)というのが暗黙の了解であった。しかしアパトウは、 “Knocked Up”(米ユニバーサル作品、日本劇場未公開)や “Walk Hard”(米ソニー作品、日本劇場未公開)、 そして『タラデガ・ナイト オーバルの狼』(米ソニー作品、日本劇場未公開)、『スーパーバッド 童貞ウォーズ』(米ソニー作品、日本劇場未公開)などを大ヒットさせ、次第に下ネタに頼るようになってきた。“Forgetting Sarah Marshall”は主演のジェイソン・シーゲルの股間のアップで始まり、そのジョークを引っ張るかのように、さらにまた同様のアップで終わる。シーゲルは脚本と主演を兼ねているくらいだから、まったく躊躇していないようだ(シーゲルはテレビシリーズ「フリークス学園」の卒業生で、それ以来すっかりアパトウのユーモアにハマってしまった)。

 アパトウは単に卑猥な映画を作りたいだけなのか? 彼のように若くて洞察力のある脚本家兼監督が、デートに出かける若者たち(そう、男女両方なのだ)を、あのような卑猥な悪ふざけ映画に惹き付けることに成功しているという事実は、確固たる裏づけがある。それに、若い女性は情けないペニスを見ると笑い飛ばすものなのだ、ということも実験済みだ。

 こういうニュースはポルノ業界の人間をさらなるパニックに陥れる。“ゴンゾ”が消え去る今、“リンプ(軟弱)”が天下を取る。この国の状況をどう捉えたらいいのかすっかりわからなくなった。

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