
ピーター・バート
米バラエティ誌 編集長。ウォール・ストリート・ジャーナル紙とニューヨーク・タイムス紙のレポーターを経て、1967年にパラマウント・ピクチャーズへ。『ゴッドファーザー』『ペーパー・ムーン』『ローズマリーの赤ちゃん』など数々の名作のプロデュースに関わり、77年、独自の製作会社を設立。そこで『郵便配達は二度ベルを鳴らす』などの作品をプロデュースする。MGM/UAの上席副社長を経て、89年よりバラエティ誌の編集長兼副社長を務める。
米バラエティ誌 編集長。ウォール・ストリート・ジャーナル紙とニューヨーク・タイムス紙のレポーターを経て、1967年にパラマウント・ピクチャーズへ。『ゴッドファーザー』『ペーパー・ムーン』『ローズマリーの赤ちゃん』など数々の名作のプロデュースに関わり、77年、独自の製作会社を設立。そこで『郵便配達は二度ベルを鳴らす』などの作品をプロデュースする。MGM/UAの上席副社長を経て、89年よりバラエティ誌の編集長兼副社長を務める。
賃下げをクライアントに伝えるエージェントたち
「クライアントが僕の電話を恐れるようになった」
あるタレント・エージェントが浮かない顔をしてこう私に言った。ハリウッドではエージェントとクライアントとの会話は、安定した景気を示す命の綱である。だが今となっては、誰も認めたくないだろうが、こういう状態だ。「向上のはずの会話が苦渋の会話になった」のだ。
「これまでは、クライアントのために新しい契約を結ぶ際、『こんどはどれ位の昇給があるの?』と聞かれるのが普通だった」と、別のエージェントは言う。「数字はかならず上向きになるもの。それが自然の法則なんだ」。
エージェントたちと話しているうちに、その法則が変化していることに気がつく。今や数字は下降している。前回の脚本執筆料が50万ドルだった脚本家は、次の仕事を30万ドルで依頼されている。映画の総収入の10%を受け取っていたスターは、今なら2%で契約する。
もしこれが新しい現実なら、誰もよしとしていない。「私の精神科医が言うには、これほど多くの患者が精神安定剤を必要としていたことはこれまでないそうだ」と、あるエージェンシーのトップが言った。もちろん精神科医たちは悪いニュースを伝える必要はない。彼らは話を聞いて金を貰っているのだ。 “ペテン王”であるエージェントたちこそが、クライアントに対し、来年は(そして再来年も)収入が下がるぞと伝えなくてはならない立場にあることを不快に思っている張本人たちだ。
どうやってクライアントにそれを伝えるのかを、ベテラン・エージェントたちに聞いてみた。期待値を下げる必要がある、ということをどうやって告げるのだろうか?
あるベテランがこう言った。「それには3つの方法がある。ひとつは嘘をつくこと。もうひとつはごまかすこと。そして、驚かすことだ」。
歯に衣着せずに伝える方法を選ぶエージェントは、クライアントを失うリスクを背負うことになる。その証拠に、この1カ月というもの、人々は記録的なペースでエージェントを取り替えている。その理由は、エージェントがクライアントに率直にこう伝えるからだ。「超人気のタレントだけが昇給できる。君は超人気とは言えないんだよ」と。
ごまかしの道は、くねくねと曲がっている。エージェントはクライアントにこう説明する。同じ企画に関わっている人たちは皆、減給されている。財布の紐が引き締まっているのは一時的なことだし、君が才能溢れる人材だということは皆が認めている、と。
大嘘は、つくのは簡単だ。しかし、命取りになる場合が多い。「もうすぐ、もっといい契約が決まりそうなんだ。本当だよ」とエージェントは言う。「心配はご無用さ」。
あるタレント・エージェントが浮かない顔をしてこう私に言った。ハリウッドではエージェントとクライアントとの会話は、安定した景気を示す命の綱である。だが今となっては、誰も認めたくないだろうが、こういう状態だ。「向上のはずの会話が苦渋の会話になった」のだ。
「これまでは、クライアントのために新しい契約を結ぶ際、『こんどはどれ位の昇給があるの?』と聞かれるのが普通だった」と、別のエージェントは言う。「数字はかならず上向きになるもの。それが自然の法則なんだ」。
エージェントたちと話しているうちに、その法則が変化していることに気がつく。今や数字は下降している。前回の脚本執筆料が50万ドルだった脚本家は、次の仕事を30万ドルで依頼されている。映画の総収入の10%を受け取っていたスターは、今なら2%で契約する。
もしこれが新しい現実なら、誰もよしとしていない。「私の精神科医が言うには、これほど多くの患者が精神安定剤を必要としていたことはこれまでないそうだ」と、あるエージェンシーのトップが言った。もちろん精神科医たちは悪いニュースを伝える必要はない。彼らは話を聞いて金を貰っているのだ。 “ペテン王”であるエージェントたちこそが、クライアントに対し、来年は(そして再来年も)収入が下がるぞと伝えなくてはならない立場にあることを不快に思っている張本人たちだ。
どうやってクライアントにそれを伝えるのかを、ベテラン・エージェントたちに聞いてみた。期待値を下げる必要がある、ということをどうやって告げるのだろうか?
あるベテランがこう言った。「それには3つの方法がある。ひとつは嘘をつくこと。もうひとつはごまかすこと。そして、驚かすことだ」。
歯に衣着せずに伝える方法を選ぶエージェントは、クライアントを失うリスクを背負うことになる。その証拠に、この1カ月というもの、人々は記録的なペースでエージェントを取り替えている。その理由は、エージェントがクライアントに率直にこう伝えるからだ。「超人気のタレントだけが昇給できる。君は超人気とは言えないんだよ」と。
ごまかしの道は、くねくねと曲がっている。エージェントはクライアントにこう説明する。同じ企画に関わっている人たちは皆、減給されている。財布の紐が引き締まっているのは一時的なことだし、君が才能溢れる人材だということは皆が認めている、と。
大嘘は、つくのは簡単だ。しかし、命取りになる場合が多い。「もうすぐ、もっといい契約が決まりそうなんだ。本当だよ」とエージェントは言う。「心配はご無用さ」。
ではクライアントたちは、このような一斉射撃にどう反応するのだろうか? エージェントによると、ある者は諦めたように黙って聞き、ある者は泣き出し、ある者は直ちに精神科医に予約を入れるそうだ。「最近は落ち込んで帰宅することが多い」と、タフで知られる女性エージェントが告白した。
だが、こう考えれば耐え忍ぶことが出来る。クライアントの中には、業界の状況を良く把握していて、悪いニュースへの覚悟が出来ている者もいる。脚本家組合の苦悩のおかげで、俳優も脚本家もフィルムメーカーたちも以前より業界紙やインターネットから、業界の最新情報を入手している。財布の紐がきつくなったという情報も、そういうところにちゃんと書いてあるのだ。
だからといって、状況を簡単に鵜呑みに出来るというものではない。ある映画監督が、どこかの会社経営者が減給になったと文句を言っている記事を読んだところで、同じ会社の収益が上がっているという記事だって目にしているかもしれない。だから例えばエージェントが、ピーター・チャーニン(20世紀フォックスの最高執行責任者)は帳簿を合わせないといけないと言ったとしても、クライアントである映画監督は「チャーニンは年3000万ドルも稼いでいるのに、なぜ俺が300万ドルぽっちのギャラを下げられる羽目になるんだ?」と叫ぶかもしれない。
この辛い会話はどこへ向かうのだろう? 精神科医はますます繁盛し、精神安定剤の売り上げはうなぎ上り、より多くのエージェントたちがクビを切られる。無限の希望で成り立っていたこの街で、新しい現実が受け入れられないのは、当然のことだろう。
だが、こう考えれば耐え忍ぶことが出来る。クライアントの中には、業界の状況を良く把握していて、悪いニュースへの覚悟が出来ている者もいる。脚本家組合の苦悩のおかげで、俳優も脚本家もフィルムメーカーたちも以前より業界紙やインターネットから、業界の最新情報を入手している。財布の紐がきつくなったという情報も、そういうところにちゃんと書いてあるのだ。
だからといって、状況を簡単に鵜呑みに出来るというものではない。ある映画監督が、どこかの会社経営者が減給になったと文句を言っている記事を読んだところで、同じ会社の収益が上がっているという記事だって目にしているかもしれない。だから例えばエージェントが、ピーター・チャーニン(20世紀フォックスの最高執行責任者)は帳簿を合わせないといけないと言ったとしても、クライアントである映画監督は「チャーニンは年3000万ドルも稼いでいるのに、なぜ俺が300万ドルぽっちのギャラを下げられる羽目になるんだ?」と叫ぶかもしれない。
この辛い会話はどこへ向かうのだろう? 精神科医はますます繁盛し、精神安定剤の売り上げはうなぎ上り、より多くのエージェントたちがクビを切られる。無限の希望で成り立っていたこの街で、新しい現実が受け入れられないのは、当然のことだろう。






















