
ピーター・バート
米バラエティ誌 編集長。ウォール・ストリート・ジャーナル紙とニューヨーク・タイムス紙のレポーターを経て、1967年にパラマウント・ピクチャーズへ。『ゴッドファーザー』『ペーパー・ムーン』『ローズマリーの赤ちゃん』など数々の名作のプロデュースに関わり、77年、独自の製作会社を設立。そこで『郵便配達は二度ベルを鳴らす』などの作品をプロデュースする。MGM/UAの上席副社長を経て、89年よりバラエティ誌の編集長兼副社長を務める。
米バラエティ誌 編集長。ウォール・ストリート・ジャーナル紙とニューヨーク・タイムス紙のレポーターを経て、1967年にパラマウント・ピクチャーズへ。『ゴッドファーザー』『ペーパー・ムーン』『ローズマリーの赤ちゃん』など数々の名作のプロデュースに関わり、77年、独自の製作会社を設立。そこで『郵便配達は二度ベルを鳴らす』などの作品をプロデュースする。MGM/UAの上席副社長を経て、89年よりバラエティ誌の編集長兼副社長を務める。
セックスと暴力とレーティング委員会の秘密主義

“Hancock”
ウィル・スミスの世界的人気を考えると、独立記念日(7月4日)の週に全米公開になる彼の新しい大作 『ハンコック』が、それなりにいい興行成績を残すことは疑う余地もない。と同時に、この作品は、スーパーヒーローものというジャンルの限界について、マーケティング担当者たちに疑問を投げかけている。
クリストファー・リーヴの時代から、すでにこのジャンルも長い時間を経てきた。
初期の『バットマン』は興味深いほどに中性的で、あえて言えば少々倒錯したところすらあった。『スパイダーマン』は、自分に自信のないスーパーヒーローのはしり。そして、セス・ローゲンのような変わったキャラクターの人間が “Green Hornet”をやろうなどと誰が予想できただろうか?(注:2010年公開予定のコロンビア映画 “The Green Hornet”のこと)
ロバート・ダウニーJr.が演じた『アイアンマン』は、恐らくスーパーヒーローとしては初めて、ユーモアがあって皮肉屋だ。アクションものの登場人物としてはリスクの高いキャラクター設定だ。
そしてここに登場する 『ハンコック』。スーパーヒーローとしては珍しくマナーが悪く、悪臭を放ち、アル中だ。さらに、彼は黒人で、過去に白人女性と結婚していたことがある。一昔前のセンサーシップの時代なら、関係者をパニックに陥れていたかもしれない様なストーリーである。
ところが、『ハンコック』がもっと深刻な問題を抱えていることは誰しもが同意するであろう。この映画はある意味、スーパーヒーロー映画のパロディ的意味も持つ。ウィル・スミスが演じるキャラクターは英雄的な行動をすることに献身しているわけではない。たまたまそういう立場に追いやられ、人を助けるのだが、不器用で無秩序でさえある。
前回コロンビア・ピクチャーズがスーパーヒーローのパロディ作品 『ラスト・アクション・ヒーロー』を作った時には、スタジオはそのことには触れたくなかった。アーノルド・シュワルツェネッガーは彼のキャリアの全盛期にあったが、この映画の大失敗が彼を政治に走らせるきっかけともなった。
たとえ11才の少年でさえ、この映画を観てあくびをしていただろう。ジャック・スレイターというスーパーヒーローの世界に入る “魔法のチケット”を手に入れたのに、ヒーローが敵と対決する時にはかならずその少年は「ああ、それはダメだ」とつぶやくのだ。
言うまでもなく、「ダメ」だったのはこの映画そのものだったのだが。
『ハンコック』は間違いなく『ラスト・アクション・ヒーロー』よりは成功するだろう。『ラスト・アクション・ヒーロー』の国内での興行成績は5000万ドルに終わった。スミスの人気は全盛期のシュワルツェネッガーよりも大きいし、『ハンコック』自体、『ラスト・アクション・ヒーロー』よりはいい映画だ。
それにしても、内部関係者はスーパーヒーロー映画が危険な企画だと指摘する。物語は、時に暴力的で、面白いユーモアも盛り込みながら、ティーンやトウィーン(ローティーン)向けの感性に合わせなければならない。
「スーパーヒーロー映画を見れば、我々のニーズについて分かる」と、このジャンルの父スタン・リーは言う。
加えて言うと、スタジオのニーズについてもよくわかる。
クリストファー・リーヴの時代から、すでにこのジャンルも長い時間を経てきた。
初期の『バットマン』は興味深いほどに中性的で、あえて言えば少々倒錯したところすらあった。『スパイダーマン』は、自分に自信のないスーパーヒーローのはしり。そして、セス・ローゲンのような変わったキャラクターの人間が “Green Hornet”をやろうなどと誰が予想できただろうか?(注:2010年公開予定のコロンビア映画 “The Green Hornet”のこと)
ロバート・ダウニーJr.が演じた『アイアンマン』は、恐らくスーパーヒーローとしては初めて、ユーモアがあって皮肉屋だ。アクションものの登場人物としてはリスクの高いキャラクター設定だ。
そしてここに登場する 『ハンコック』。スーパーヒーローとしては珍しくマナーが悪く、悪臭を放ち、アル中だ。さらに、彼は黒人で、過去に白人女性と結婚していたことがある。一昔前のセンサーシップの時代なら、関係者をパニックに陥れていたかもしれない様なストーリーである。
ところが、『ハンコック』がもっと深刻な問題を抱えていることは誰しもが同意するであろう。この映画はある意味、スーパーヒーロー映画のパロディ的意味も持つ。ウィル・スミスが演じるキャラクターは英雄的な行動をすることに献身しているわけではない。たまたまそういう立場に追いやられ、人を助けるのだが、不器用で無秩序でさえある。
前回コロンビア・ピクチャーズがスーパーヒーローのパロディ作品 『ラスト・アクション・ヒーロー』を作った時には、スタジオはそのことには触れたくなかった。アーノルド・シュワルツェネッガーは彼のキャリアの全盛期にあったが、この映画の大失敗が彼を政治に走らせるきっかけともなった。
たとえ11才の少年でさえ、この映画を観てあくびをしていただろう。ジャック・スレイターというスーパーヒーローの世界に入る “魔法のチケット”を手に入れたのに、ヒーローが敵と対決する時にはかならずその少年は「ああ、それはダメだ」とつぶやくのだ。
言うまでもなく、「ダメ」だったのはこの映画そのものだったのだが。
『ハンコック』は間違いなく『ラスト・アクション・ヒーロー』よりは成功するだろう。『ラスト・アクション・ヒーロー』の国内での興行成績は5000万ドルに終わった。スミスの人気は全盛期のシュワルツェネッガーよりも大きいし、『ハンコック』自体、『ラスト・アクション・ヒーロー』よりはいい映画だ。
それにしても、内部関係者はスーパーヒーロー映画が危険な企画だと指摘する。物語は、時に暴力的で、面白いユーモアも盛り込みながら、ティーンやトウィーン(ローティーン)向けの感性に合わせなければならない。
「スーパーヒーロー映画を見れば、我々のニーズについて分かる」と、このジャンルの父スタン・リーは言う。
加えて言うと、スタジオのニーズについてもよくわかる。
レーティングのジェットコースター

『セックス・アンド・ザ・シティ』
映画のレーティングの結果を予想することは、ハリウッド業界では一種の楽しみにもなっている。とりわけ今年の夏の作品群は興味深い。
強烈なセックス風刺と強引な男根ユーモアを押し通す『ラブ・グル』と “You Don’t Mess With the Zohan”は、R指定(レーティング)には至らなかった(注:両作品ともPG-13)。にも関わらず、インディ作品の “The Wackness”は、前出の2作品に比べれば穏やかだというのに、MPAAからR指定をくらっている(米での配給はソニー・ピクチャーズ・クラシックス)。
ここ数年、レーティング委員会のメンバーたち(匿名になっている)は、暴力描写よりもセックス描写に厳しいと批判されている。『アイアンマン』のオープニング・シーンはかなり暴力的だが、それでもPG-13だ。ウィル・スミスの 『ハンコック』もかなり暴力的でうるさい映画だが、やはりPG-13。レーティング担当者たちは、囚人の頭が別の囚人のお尻にめり込むという “心温まる”シーンすら見逃したようだ。 “いいシーンだ”と彼らは言ったとか言わないとか。
議論の余地は無限である。『セックス・アンド・ザ・シティ』の中でのコミカルなセックス・シーンが、 “Zohan”でアダム・サンドラーが見せるおばあちゃんたちとの絡みのシーンより激しかったということか?(『セックス~』の中の男性陣は誰も股間を膨らませてはいないのだが)。ついでに言うと、“The Wackness”のティーンエイジャーのひどく不器用な描写が、本当に『ラブ・グル』の陰嚢ジョークよりも過激だというのか?(“The Wackness”がR指定になったことで、インディ作品はスタジオ作品より厳しいレートを与えられるという一般的結論が再び蘇った)。
レーティング委員会のメンバーが誰かわからないというのは、かえって好都合かもしれない。彼らの基準の曖昧さを考えると、メンバーは皆、元国税局の会計士だったかもしれないと思われるのだから。
強烈なセックス風刺と強引な男根ユーモアを押し通す『ラブ・グル』と “You Don’t Mess With the Zohan”は、R指定(レーティング)には至らなかった(注:両作品ともPG-13)。にも関わらず、インディ作品の “The Wackness”は、前出の2作品に比べれば穏やかだというのに、MPAAからR指定をくらっている(米での配給はソニー・ピクチャーズ・クラシックス)。
ここ数年、レーティング委員会のメンバーたち(匿名になっている)は、暴力描写よりもセックス描写に厳しいと批判されている。『アイアンマン』のオープニング・シーンはかなり暴力的だが、それでもPG-13だ。ウィル・スミスの 『ハンコック』もかなり暴力的でうるさい映画だが、やはりPG-13。レーティング担当者たちは、囚人の頭が別の囚人のお尻にめり込むという “心温まる”シーンすら見逃したようだ。 “いいシーンだ”と彼らは言ったとか言わないとか。
議論の余地は無限である。『セックス・アンド・ザ・シティ』の中でのコミカルなセックス・シーンが、 “Zohan”でアダム・サンドラーが見せるおばあちゃんたちとの絡みのシーンより激しかったということか?(『セックス~』の中の男性陣は誰も股間を膨らませてはいないのだが)。ついでに言うと、“The Wackness”のティーンエイジャーのひどく不器用な描写が、本当に『ラブ・グル』の陰嚢ジョークよりも過激だというのか?(“The Wackness”がR指定になったことで、インディ作品はスタジオ作品より厳しいレートを与えられるという一般的結論が再び蘇った)。
レーティング委員会のメンバーが誰かわからないというのは、かえって好都合かもしれない。彼らの基準の曖昧さを考えると、メンバーは皆、元国税局の会計士だったかもしれないと思われるのだから。






















