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『ピーター・バート、かく語りき』
ブロガーたちをやっつけろ
ニュースの配信は居眠りが命取り

 
2008/09/03

ピーター・バート
米バラエティ誌 編集長。ウォール・ストリート・ジャーナル紙とニューヨーク・タイムス紙のレポーターを経て、1967年にパラマウント・ピクチャーズへ。『ゴッドファーザー』『ペーパー・ムーン』『ローズマリーの赤ちゃん』など数々の名作のプロデュースに関わり、77年、独自の製作会社を設立。そこで『郵便配達は二度ベルを鳴らす』などの作品をプロデュースする。MGM/UAの上席副社長を経て、89年よりバラエティ誌の編集長兼副社長を務める。

ブラッド・ピット
ブラッド・ピット
 ハリウッドの権力者たちは、自分たちがネタ元のニュースを、自分たちの希望通りの形で出すことがもはや出来ない、ということにようやく気がついたようだ。そしてその事実がこの支配魔たちをいらだたせている。

 「10時15分に誰かをクビにしようとしているのに、10時14分にはもうインターネットにそのことが書かれているというのはどういうことだ?」と、先週、あるスタジオの重役が私に言った。

 答えはもちろん、この携帯電話のショートメールとブログの時代において、プレス発表というような代物は哀れな過去の遺物になってしまっている、ということだ。とはいえ、映画スタジオやテレビ局はこの現実への順応が驚くほど遅い。

 そういうわけで、パラマウント・ヴァンテージが数週間前に人員削減を行った時も、解雇される社員たちは上司から聞く前にそのことを知った。同様に、ブラッド・ピットは自分がクエンティン・タランティーノの新作 “Inglorious Bastards”に出演が決まったことを、契約書や同意書を見る前に知ったのだ。

 これはどういうことかというと、企業の契約過程が這う様にのろくなったちょうどその頃、ニュース・ビジネスのペースは、異常なほど加速したということだ。弁護士や企業の官僚主義的な人々が、いかなる契約をも重箱の隅をつつくようにと主張している間に、インターネットは誰も待っていてくれない、ということに全く気がつかないままになってしまった。

 ニュース・ビジネスが徹底して順番を守っていたのはそれほど遠い昔のことではない。やりすぎというほどに、正式記者会見やプレス発表が配布されるのを待っていた。

 今日、情報のやりとりを見てみると、ほとんどの組織がクリスマスツリーの様に明々と光っている。ライバル会社やタレント・エージェンシーやブロガーたちの間をショートメールがピカピカと流れるのだ。どんな企業秘密命令も守られることはない。

ポーラ・ワグナー
ポーラ・ワグナー
 ジャーナリズムの世界では、こういったことすべてが喜ばしいことでもあり、同時に腹立たしいことでもある。ほとんどのネタが正式に公表されるのではなく、漏れてしまう、ということだ。これはメディアのエゴを満たすことだと思われがちだ。だが、誰がそのネタをとってきたのか、というスッパ抜き争いが常に起こるということでもある。

 こういう争いは新しいサイトが差し迫って開始されることで、より激化している。たとえばティナ・ブラウン、ボニー・フューラー、シャロン・ワックスマンといった著名なジャーナリストたちや、一旦は閉鎖されたInside.comですらエンタテインメントの領域を侵略する計画だ。

 このウェブというエーテルにおいては、最も重要な記事であればなおさら、「ニュース」はすぐに出てしまう。ウェブサイトの担当者たちは半狂乱になってコメントや裏取りのための電話をかける。記事をウェブサイトに載せる前に90秒でもおしっこに行ったりコーヒーをすすっていようものなら、たちまちライバルに先をこされ、「スッパ抜き」を宣言されてしまうのだ。

 だから、CAAのRick Nicitaのようなエージェントが事務所を辞めることを決心して、同僚やクライアントにそのことを伝え始めたら、本人がメッセージをおくる前に、そのネタはすでに世界中を駆け回っている(そして、そのショートメールは陰険な意味合いを含んでいたりする)。先週は、逆の意味で同じことが起こった。彼の妻、ポーラ・ワグナーがUAを辞めたときだ。

 秘密がまかり通らない社会では、物事の決定権を持つ人々はビジネスの進め方を再考しなければならない。もし自分がネタを「所有」し、いつどこに流れるかをコントロールしたければ、即時の発表が唯一現実的なやり方だ。もしその記事を自分が発表したのでなければ、混乱を解きほぐすのに膨大な時間がかかるだろう。

 もはや精神錯乱したり、あいまいなことを言っている余裕はない。ジョン・エドワーズ(注:米の政治家)も先日そう言っていた。彼がほんとうにニュースをコントロール出来ると信じるものがいたら、その人は別の時代に生きているに違いない。

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