
ピーター・バート
米バラエティ誌 編集長。ウォール・ストリート・ジャーナル紙とニューヨーク・タイムス紙のレポーターを経て、1967年にパラマウント・ピクチャーズへ。『ゴッドファーザー』『ペーパー・ムーン』『ローズマリーの赤ちゃん』など数々の名作のプロデュースに関わり、77年、独自の製作会社を設立。そこで『郵便配達は二度ベルを鳴らす』などの作品をプロデュースする。MGM/UAの上席副社長を経て、89年よりバラエティ誌の編集長兼副社長を務める。
米バラエティ誌 編集長。ウォール・ストリート・ジャーナル紙とニューヨーク・タイムス紙のレポーターを経て、1967年にパラマウント・ピクチャーズへ。『ゴッドファーザー』『ペーパー・ムーン』『ローズマリーの赤ちゃん』など数々の名作のプロデュースに関わり、77年、独自の製作会社を設立。そこで『郵便配達は二度ベルを鳴らす』などの作品をプロデュースする。MGM/UAの上席副社長を経て、89年よりバラエティ誌の編集長兼副社長を務める。

“Run, Fat Boy, Run”ニューヨーク・プレミアでのオリヴァー・パーカーとサンディ・ニュートン
毎年この時期になると、私はスタジオの戦略家たちに同情する。彼らは秋の新作をいつどのように公開するかを決定する責任を持っている。
夏ならば、公開日の決定は科学的だ。メジャースタジオはすでに2008年と09年の夏の鍵となる公開日に策を練っている。例えばジェームス・キャメロンの “Avatar”やドリームワークスの “Monsters vs. Aliens”などだ。しかし、この秋の新作である“Run, Fat Boy, Run”や “Before the Devil Knows You’re Dead?”などの作品にとって、理想の公開日とは何だろうか?
マーケティングと配給の第一人者たちは、2つのことをよく理解している——もし映画が失敗したら、間違った劇場に間違った公開日を設定してしまった彼らの責任。もし成功したら、誰も彼らのおかげとは思わない。
今年の秋はいくつかの理由から、こういった類の決断がより難しい。スタジオは巧みに続編を動かし、この夏は明らかに大作が成功。アート系作品を上映する劇場は少ない。と同時に、注目を集めているアート系作品がしのぎをけずり、その数が飛躍的に増加している。毎週末のように、5作品から7作品(そのほとんどが有名監督の作品)が新しく公開される。(ゴールデン・)グローブやオスカーがすでに彼らの目前にちらついていることだろう。
これらすべてを複雑にしているのは、新作のいくつかが似通った主題--テロリズムやイラク戦争——を扱っているせいである。業界人たちはイラク関連の映画が2つ同じ週末にぶつかるのを避けたい。同様に、ボブ・ディランの映画( “I’m Not There”)とジュリー・テイモアのビートルズ映画(“Across the Universe”)もぶつかって欲しくない。アート系も大作も、たった一週、弱さを見せるだけで、災難となる。
基本的に賞シーズンには2つの対抗する哲学がある。あるグループの人々は、オスカー候補(として押せる)作品は9月後半に公開するべきだという。映画祭での上映により、認知度が上がるからだ。別のグループの人々は、オスカー投票者の心に新鮮に映るよう、年末に向けて公開するほうが賢い、と考える。
しかし、ことはそんなに簡単ではない。劇場公開の専門家たちはこんな闘いを打ち明けてくれることもある。スターの中には奇妙な迷信を信じている人もいて、過去の経験から、成功する(あるいは失敗する)公開日などを気にしていたり、また、ライバルに脅えてなるべく競争を避けたいという人もいるという。
このような摩擦があるとすると、多くの上映時期決定について後から批判されることもあり得る。6月1日に公開された “Knocked Up”の戦略は——この日は『パイレーツ・オブ・カリビアン/ワールド・エンド』の公開2週目にあたる——大胆だったが、利口でもあった。この映画は世界で1億8620万ドルの興行をあげており、対抗番組としては稀な勝利を収めたと言える。
一方で二コール・キッドマンとダニエル・クレイグ主演の “The Invasion”を8月17日に公開するという決断は、失敗とみなされる。実際、26作品が8月後半の2週に公開され、成功したという話はほとんどない。
しかし、公開日の決定には複雑な考慮がなされる。マーティン・スコセッシがローリング・ストーンズを撮った高額のドキュメンタリー作品 “Shine a Light”を例にとってみる。9月に公開の予定であったのが、4月に延期になった。理由は何だ? キャンペーンが間に合わなかったのか? ストーンズがプロモーションに参加できなかったのか? ミック・ジャガーが編集に参加したがったのか?
直前に公開時期が延期される映画は多い。妥当な理由がある場合もある。有名な例で言えば、『ゴッドファーザー』はクリスマス時期の公開から1972年の3月に延期になった。20分を追加するという貴重な編集がなされたためだが、その遅れのせいで、この作品はひどいという噂が立った。ひどくなかったのに!
今現在、多くのオスカー候補の可能性を持つ作品がトロント映画祭で上映されている間に、公開時期に関するぎりぎりの決断がなされている。評判が良かった2作品の公開時期が遅らされ、その他は早められた。いくつかの作品はてこ入れや新しい宣伝キャンペーンのために、秋の公開ラインナップから消えるに違いない。
その間ずっと、最終決断に身を任せなければならないマーケティングと配給の担当者たちは、慎重にチェスのコマを動かす。彼らはオスカーの時期になれば、役立たずとされるかヒーロー扱いされるかどちらかだとわかっている。もしくはどちらもあり得る、ということも。
夏ならば、公開日の決定は科学的だ。メジャースタジオはすでに2008年と09年の夏の鍵となる公開日に策を練っている。例えばジェームス・キャメロンの “Avatar”やドリームワークスの “Monsters vs. Aliens”などだ。しかし、この秋の新作である“Run, Fat Boy, Run”や “Before the Devil Knows You’re Dead?”などの作品にとって、理想の公開日とは何だろうか?
マーケティングと配給の第一人者たちは、2つのことをよく理解している——もし映画が失敗したら、間違った劇場に間違った公開日を設定してしまった彼らの責任。もし成功したら、誰も彼らのおかげとは思わない。
今年の秋はいくつかの理由から、こういった類の決断がより難しい。スタジオは巧みに続編を動かし、この夏は明らかに大作が成功。アート系作品を上映する劇場は少ない。と同時に、注目を集めているアート系作品がしのぎをけずり、その数が飛躍的に増加している。毎週末のように、5作品から7作品(そのほとんどが有名監督の作品)が新しく公開される。(ゴールデン・)グローブやオスカーがすでに彼らの目前にちらついていることだろう。
これらすべてを複雑にしているのは、新作のいくつかが似通った主題--テロリズムやイラク戦争——を扱っているせいである。業界人たちはイラク関連の映画が2つ同じ週末にぶつかるのを避けたい。同様に、ボブ・ディランの映画( “I’m Not There”)とジュリー・テイモアのビートルズ映画(“Across the Universe”)もぶつかって欲しくない。アート系も大作も、たった一週、弱さを見せるだけで、災難となる。
基本的に賞シーズンには2つの対抗する哲学がある。あるグループの人々は、オスカー候補(として押せる)作品は9月後半に公開するべきだという。映画祭での上映により、認知度が上がるからだ。別のグループの人々は、オスカー投票者の心に新鮮に映るよう、年末に向けて公開するほうが賢い、と考える。
しかし、ことはそんなに簡単ではない。劇場公開の専門家たちはこんな闘いを打ち明けてくれることもある。スターの中には奇妙な迷信を信じている人もいて、過去の経験から、成功する(あるいは失敗する)公開日などを気にしていたり、また、ライバルに脅えてなるべく競争を避けたいという人もいるという。
このような摩擦があるとすると、多くの上映時期決定について後から批判されることもあり得る。6月1日に公開された “Knocked Up”の戦略は——この日は『パイレーツ・オブ・カリビアン/ワールド・エンド』の公開2週目にあたる——大胆だったが、利口でもあった。この映画は世界で1億8620万ドルの興行をあげており、対抗番組としては稀な勝利を収めたと言える。
一方で二コール・キッドマンとダニエル・クレイグ主演の “The Invasion”を8月17日に公開するという決断は、失敗とみなされる。実際、26作品が8月後半の2週に公開され、成功したという話はほとんどない。
しかし、公開日の決定には複雑な考慮がなされる。マーティン・スコセッシがローリング・ストーンズを撮った高額のドキュメンタリー作品 “Shine a Light”を例にとってみる。9月に公開の予定であったのが、4月に延期になった。理由は何だ? キャンペーンが間に合わなかったのか? ストーンズがプロモーションに参加できなかったのか? ミック・ジャガーが編集に参加したがったのか?
直前に公開時期が延期される映画は多い。妥当な理由がある場合もある。有名な例で言えば、『ゴッドファーザー』はクリスマス時期の公開から1972年の3月に延期になった。20分を追加するという貴重な編集がなされたためだが、その遅れのせいで、この作品はひどいという噂が立った。ひどくなかったのに!
今現在、多くのオスカー候補の可能性を持つ作品がトロント映画祭で上映されている間に、公開時期に関するぎりぎりの決断がなされている。評判が良かった2作品の公開時期が遅らされ、その他は早められた。いくつかの作品はてこ入れや新しい宣伝キャンペーンのために、秋の公開ラインナップから消えるに違いない。
その間ずっと、最終決断に身を任せなければならないマーケティングと配給の担当者たちは、慎重にチェスのコマを動かす。彼らはオスカーの時期になれば、役立たずとされるかヒーロー扱いされるかどちらかだとわかっている。もしくはどちらもあり得る、ということも。






















