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『ピーター・バート、かく語りき』
スター・パワーは興行に反映されるか?

 
2007/10/22

ピーター・バート
米バラエティ誌 編集長。ウォール・ストリート・ジャーナル紙とニューヨーク・タイムス紙のレポーターを経て、1967年にパラマウント・ピクチャーズへ。『ゴッドファーザー』『ペーパー・ムーン』『ローズマリーの赤ちゃん』など数々の名作のプロデュースに関わり、77年、独自の製作会社を設立。そこで『郵便配達は二度ベルを鳴らす』などの作品をプロデュースする。MGM/UAの上席副社長を経て、89年よりバラエティ誌の編集長兼副社長を務める。

 興行成績を予測するための新しい基準がある。
 もしスターが主演していたら、見込みを下げよう。

 道理に反していると思うかも知れない。じゃあ、次に挙げる名前について考えてみるといい。ベン・スティラー、ジョディ・フォスター、ジェイク・ギレンホール、リース・ウィザースプーン、ハル・ベリー、ブラッド・ピット、マーク・ウォールバーグ、ホアキン・フェニックス、ジュード・ロウ、ジェイミー・フォックス。

 この俳優たちが主演した最近の作品は、期待はずれに終わったか、撃沈したかのいずれかである。この現象には、配給会社や契約担当者たちも必ず気がついているだろう。

 かつて、トップスターのエージェントはこの街で一番格好いい仕事だった。とにかく出演依頼には、ひたすら「ノー」と言い続ければいいだけで、「ぴったりの」プロジェクトが巡ってきたら出演料を引き上げればいいのだ。(20に対して20で受けてただって? それはあまりに2005年的だ!)

 ところが、このゲームは突然ひどく複雑になった。スタジオは利益分配に激しく抵抗するようになったし、ストライキが起こるという恐怖心から、契約をとっとと結ばなければならないというプレッシャーがかかる。また、新しい投資家が持ち出してきた難解な形式が、スターたちを新しい機会へ誘惑する(と同時に罠にもかける)と思えば、メディアの熱心さが、キャリアを守れるかどうか不安を抱くスターたちを、より妄想に陥れる。

 デイヴィッド・デンビー(映画評論家)は、10月22日発行のニューヨーカー誌で、クラーク・ゲイブルは酒癖が悪く、いつも売春婦たちと遊んでいて、おまけに入れ歯で、時には車で木に突っ込んだりしていた、と回想していた。それでも社会全般にとっては、彼はまぎれもなく高貴なスーパースターだった。

 今日のスターはそんなに幸運ではない。「ぴったりの」プロジェクトを見つけるのが難しくなっているんだからね——少なくとも結果を見る限り。

 実のところ、私はジョージ・クルーニーやブラッド・ピットといった俳優たちを尊重する。 『マイケル・クレイトン』や『ジェシー・ジェームズの暗殺』(仮)のような作品に挑戦しているのだから。ジョディ・フォスターだって、 『ブレイブ ワン』に出演するのは勇気が必要だっただろう。ベン・スティラーも “The Heartbreak Kid”に出るからには平凡なリメイクではなく、ちょっと鋭いものにしたかったのだろう(もしくは、ごますり調というか)。

 ところが結果を見ると、今日の映画スターは話題性は作れるが、ヒットはまったく保証出来ないということがわかる。ある配給担当者が否応なしに聞いた。「映画スターという基本的な概念自体、過去の遺物になってしまったのでしょうか?」

 はっきり言って、私は俳優たちに同情する。スタジオのシステムが全盛期だった頃、スターたちは莫大なパブリシティとマーケティングのサポートに頼ることが出来た。俳優たちはただ単に個人契約者であり、巨大な夢工場の中の歯車の一つだった。

 今日では、そんなサポートシステムはない。実際、自分のプロジェクトでさえサポートしないくらい分離していることもある—— 『インベージョン』の時のニコール・キッドマンとダニエル・クレイグがいい例だ。

 「若い俳優たちは、役柄のイメージが固定されるのを嫌がる」とデンビーは言う。「しかし、型にはまるというのはもっと奥深いものだ。とりわけ、それは観客にとって、簡単にスターとの無意識の交流を可能にする。間違いなく読み取れるアイデンティティなど、どんな俳優もがすぐに身に付けられるものではない。」

 結果として、ある俳優がキャリアを積んでいくうちに、他の者たちは消えていく。ベン・アフレックは『チェイシング・エイミー』で新人として現れ、『パール・ハーバー』でスターになり、『ジーリ』で落ち目になったが、まだ、たった35歳だ。ハンフリー・ボガートはその頃まだ無名だったが、一旦スターにのしあがったら、ずっとそこに留まった。

 エンタテインメント・ウィークリー誌によると、アフレックのスターとしての魅力は、雑誌の表紙としての魅力と逆行していたという——『ジーリ』が公開された年には、彼は17回雑誌の表紙を飾っているが、ヒット作があった年には約半分だったそうだ。「我々は敵意に満ちた世界に住んでいる。誰にだって悪いことが起こる」と、アフレックは語っていた。

 ここ数年のヒット映画を挙げてみると、スターが出ている映画が少ないことがわかる。大作『トランスフォーマー』や、ドラマの『パッション』、コメディの『リトル・ミス・サンシャイン』。もちろん、『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズはジョニー・デップの派手な演技なしにはヒットしなかっただろうが、かといって、いくらデップが出ていても “Sweeney Todd”が大ヒットになるとは誰も考えないだろう。

 スターはいまだにヒットに貢献するかって? もちろん、するよ。彼らがスターになった理由は、特殊な錬金術を持っているからだ——ある部分は才能で、ある部分はカリスマ性。彼らが映画に出ると、普通は質を上げる。だが、それが興行の成功につながらないという事実は、年々増加傾向にある。

 「もちろん映画スターは今でも存在する。だが、以前よりは減っているし、落ちぶれてきている。出演料は増えているが、価値は下がっている」と、デイヴィッド・デンビーが言っている。

 私は最近、交渉しなくていい立場にいることがうれしい。結局のところ、エージェントたちはいい金をもらっている。きっと彼らはそれを稼ぎ出しているのだろう、と私も考えるようになってきた。

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