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『ピーター・バート、かく語りき』
「深刻」な映画は沈没?

 
2007/12/18

ピーター・バート
米バラエティ誌 編集長。ウォール・ストリート・ジャーナル紙とニューヨーク・タイムス紙のレポーターを経て、1967年にパラマウント・ピクチャーズへ。『ゴッドファーザー』『ペーパー・ムーン』『ローズマリーの赤ちゃん』など数々の名作のプロデュースに関わり、77年、独自の製作会社を設立。そこで『郵便配達は二度ベルを鳴らす』などの作品をプロデュースする。MGM/UAの上席副社長を経て、89年よりバラエティ誌の編集長兼副社長を務める。

スタジオはアート系部門の映画の扱いに迷っている

 最近の映画人たちの間で、「深刻」な映画が「深刻」なビジネスにつながらなくなっている、という言う人たちが増えている。彼らが言うには、映画の任務とは人々を楽しませ啓発するものだ、とか。だから今年、メッセージ性の強い映画はこんなにも興行で苦戦しているのだ。そういうことなので、今日まで評判になっている作品の間でも、成功したものよりむしろ損害を出したものが多い。

 それでは、「深刻」な映画は危険なものになってしまったのだろうか?

 答えは、全くもって「いいえ」だ。しかし、確かに、深刻な映画が製作され、マーケティングされる過程で、重要なミスが犯されている。

 そこから学べることを以下のようにまとめてみた。

●スタジオの、スター主体の映画製作という考え方は、この特別な分野の映画には適用されない。トム・クルーズやブラッド・ピットといったスターたちは、イラクやジェシー・ジェームスについての映画に観客を掴めなかった。これは、深刻な映画は製作陣のビジョンを反映するのであって、スターやスタジオの重役たちのビジョンとは違う、ということを改めて思い知らせてくれる。

●深刻な映画は、投資を回収するために、厳しい予算管理を余儀なくさせる。特殊な映画に3000万ドルも出資しながら、限られた回収額に嘆く団体を気の毒に思うことはできない。

●大作と同じく、深刻な映画も諸外国の観客に訴求するものでなければならない。いくつか失敗したものもあるにせよ、ジェームス・シャムス率いるフォーカス・フィルムズは 『ラスト,コーション』、“Eastern Promises”、『つぐない』などでは、諸外国の興行で目覚しい総収入を上げ、賭けに勝っている。

●社会的、もしくは政治的観点で描かれた映画は、わかりやすい語り口で描かれるようにし、鋭いメッセージ性は避けなければならない。イラクについての映画を作るのは勇敢なことだが、これらの映画の類似点は、感受性に関してもキャスティングをとっても、うんざりする、ということだ。アート系部門の映画の中で最も期待できるのは、 “Juno”と『つぐない』だろう。この向こう見ずなコメディと歴史もののロマンス映画は、どちらも政治とは全く関係がない。

 この秋、最も罪深かったのは、深刻な映画がたくさんあり過ぎたということであり、映画の内容やマーケティングの戦略のせいではない、という者もいるだろう。こういった意見の問題点は、統計的に間違っているということだ。ヘッジファンドの金が、取るに足らない映画の製作に拍車をかけてしまった。スタジオのアート系映画部門はこの秋と冬にかけて非常に積極的だったが、生産量全体は特に多いということでもない。

 このように、将来的な削減や崩壊についての話を聞くのは残念なことだ。どちらかと言えば、今期の災難は、現実を過剰に期待し過ぎた、というケースだ。特にスタジオ傘下のアート系部門にとっては。

 私が若くしてパラマウントの重役職についていた頃は、スタジオがコマーシャル映画と共にアート系映画を公開するのは通例だった。1970年に公開された作品には、『ある愛の詩』や “The Conformist”などがあり、全ての人々(深刻な映画人たちも含めて)が結果にとても満足していた。アート系作品の製作用とマーケティング用の予算はもっと限られていたが、あの時代、この手の映画の観客層は急増していた。それは字幕付きの外国映画も同じことだ。

 悲しいことに、字幕付き映画は事実上消えてしまい、英語のアート系映画にばかり需要が偏っている。もっと賢い戦略は——そして、もっと知的な期待値は——市場がそっちの方向へ進み続けるということなのだろう。

 「深刻」な映画はクルーズやピットのマーケティング・モデルにはそぐわないかも知れないが、だからと言ってビジネスモデル全体が破壊してしまったというわけではない。

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