
ピーター・バート
米バラエティ誌 編集長。ウォール・ストリート・ジャーナル紙とニューヨーク・タイムス紙のレポーターを経て、1967年にパラマウント・ピクチャーズへ。『ゴッドファーザー』『ペーパー・ムーン』『ローズマリーの赤ちゃん』など数々の名作のプロデュースに関わり、77年、独自の製作会社を設立。そこで『郵便配達は二度ベルを鳴らす』などの作品をプロデュースする。MGM/UAの上席副社長を経て、89年よりバラエティ誌の編集長兼副社長を務める。
米バラエティ誌 編集長。ウォール・ストリート・ジャーナル紙とニューヨーク・タイムス紙のレポーターを経て、1967年にパラマウント・ピクチャーズへ。『ゴッドファーザー』『ペーパー・ムーン』『ローズマリーの赤ちゃん』など数々の名作のプロデュースに関わり、77年、独自の製作会社を設立。そこで『郵便配達は二度ベルを鳴らす』などの作品をプロデュースする。MGM/UAの上席副社長を経て、89年よりバラエティ誌の編集長兼副社長を務める。
ディズニーの急進的な改革へ一石を投じる
ある日、ふと映画興行成績表を見ていたら、こんな疑問が浮かんだ。ミッキー・マウスの砦は一体全体いつの間に “ハンナ・モンタナ”や “ハイスクール・ミュージカル”の本拠地に成り変ったのだろう。
そもそも私は企業改革の効果を信じていない。しかし、ディズニー帝国の急進的改革は、多くのビジネス・スクールにとって刺激となり、ケース・スタディとして取り上げられることになるだろう。ディズニーが退屈なブランドになってしまっていたのは、たった数年前のこと。核となるアニメーション・ビジネスでさえ、故ウォルトのおもちゃでしかなかったかのように、凡庸とした作品しか作れないという窮地に陥ってしまっていた。
ロバート・アイガーが新しく最高経営責任者に着任したのが2年前。それほど大きな変化になるとは、ほとんど誰も想像しなかった。アイガーは企業人だと聞いていた。だから、大改造を進めるようなタイプではないと思っていたのだ。マイケル・アイズナーの動乱の時代を経て、アイガーは “ようやく訪れた平穏”を貪ると思われたのだ。
この分析は正解でもあり、不正解でもあった。正解というのは、アイガーは実際、常に冷静な戦略家であったということだ。 “企業人”として、面倒くさい対立を避け、決してメディアの前に姿を現さない。一方、不正解の部分は、アイガーは明らかに大胆な事業変革を計画しており、それを実行するという確固たる決意を持っていたということである。
アイガーは、前任者の様に、声を荒げて非難するようなことはない。しかし、毎日彼と仕事をしている人によると、このネズミ王国の王には、ネズミのようにシャイなところはない、という。
アイガー王朝は始まった当初、論議を醸していた。この新経営者が、ピクサー買収に高い金を払いすぎたという非難だった。しかし、それもやはり、彼が正しかったということだ。
そもそも私は企業改革の効果を信じていない。しかし、ディズニー帝国の急進的改革は、多くのビジネス・スクールにとって刺激となり、ケース・スタディとして取り上げられることになるだろう。ディズニーが退屈なブランドになってしまっていたのは、たった数年前のこと。核となるアニメーション・ビジネスでさえ、故ウォルトのおもちゃでしかなかったかのように、凡庸とした作品しか作れないという窮地に陥ってしまっていた。
ロバート・アイガーが新しく最高経営責任者に着任したのが2年前。それほど大きな変化になるとは、ほとんど誰も想像しなかった。アイガーは企業人だと聞いていた。だから、大改造を進めるようなタイプではないと思っていたのだ。マイケル・アイズナーの動乱の時代を経て、アイガーは “ようやく訪れた平穏”を貪ると思われたのだ。
この分析は正解でもあり、不正解でもあった。正解というのは、アイガーは実際、常に冷静な戦略家であったということだ。 “企業人”として、面倒くさい対立を避け、決してメディアの前に姿を現さない。一方、不正解の部分は、アイガーは明らかに大胆な事業変革を計画しており、それを実行するという確固たる決意を持っていたということである。
アイガーは、前任者の様に、声を荒げて非難するようなことはない。しかし、毎日彼と仕事をしている人によると、このネズミ王国の王には、ネズミのようにシャイなところはない、という。
アイガー王朝は始まった当初、論議を醸していた。この新経営者が、ピクサー買収に高い金を払いすぎたという非難だった。しかし、それもやはり、彼が正しかったということだ。

マイリー・サイラス扮するハンナ・モンタナとミッキー・マウス
この買収から2年。ピクサーはディズニーの航海に追い風を吹かせた。ピクサーの創造性への情熱がアニメーションにもたらした影響だけでなく、テーマパークやビデオゲーム、そしてその他の土俵においても、貢献したものは大きい。それは、11億ドルもの費用をかけて、 “トイ・ストーリー・マニア”を中心にお色直しされた、ディズニーのカリフォルニア・アドベンチャー(注:ディズニーランドに併設されているテーマパークの一部)にも顕著に現れている。
不況への懸念にも関わらず、ディズニーはクルーズ船や消費者向け商品など、映画やテレビに直結しない分野に数十億ドルも投資している。テーマパークで言うと、ディズニーは、若年層のデジタル世代の間で、不動の人気を誇っている。これはiTunesで同社が先導していることにも共通する。文化的にも、『くまのプーさん』から、『カーズ』や『パイレーツ・オブ・カリビアン』まで、大変な飛躍をしたものだ。
映画製作の面でも、アイガーはブランド中心主義と日和見主義の両方に献身している。製作本数は少ないものの、市場では、ディズニー色がタイミングよく強調されて見られる。例えば『レミーのおいしいレストラン』といった洗練された作品から、10代の若者を熱狂させる “Hannah Montana and Miley Cyrus”の3-D映画まで。キーワードは差し詰め、「過ぎたるは及ばざるがごとし」といったところか。
ディズニーはこのように変革の時期を経たが、企業宣告は未だに行われていない。実際、これまで“黒幕”的スタイルを通していたアイガーは、つい先日、脚本家組合のストライキを終結させるに至った切迫した交渉の際に、ようやく表面に出た。ハリウッドのスタジオ経営者のほとんどが姿を隠そうとしていた中、交渉の個人的管理責任を、Foxのピーター・チャーニン(最高執行責任者)と共に買って出た。こう着状態が長引くと見られていたあの時期にさえ、だ。
「ボブ・アイガーは、ハリウッドの何千人もの職人たちが、数カ月間も職にあぶれる状態に、個人的にショックを受けていた」と、あるライバル会社のトップは言う。「彼には、業界が焦点を見失っているのがわかったので、あの混乱を解決するために、誰よりも時間とエネルギーを割いた。」
こういうことを全体的に見た上で、先日、私は、アイガー本人にこう尋ねてみた。ハリウッドが直面している問題やディズニーの変化の継続について、哲学的に思索してみたいと思わないか、と。答えはいかにも彼らしい—— 嫌だ、そうだ。
不況への懸念にも関わらず、ディズニーはクルーズ船や消費者向け商品など、映画やテレビに直結しない分野に数十億ドルも投資している。テーマパークで言うと、ディズニーは、若年層のデジタル世代の間で、不動の人気を誇っている。これはiTunesで同社が先導していることにも共通する。文化的にも、『くまのプーさん』から、『カーズ』や『パイレーツ・オブ・カリビアン』まで、大変な飛躍をしたものだ。
映画製作の面でも、アイガーはブランド中心主義と日和見主義の両方に献身している。製作本数は少ないものの、市場では、ディズニー色がタイミングよく強調されて見られる。例えば『レミーのおいしいレストラン』といった洗練された作品から、10代の若者を熱狂させる “Hannah Montana and Miley Cyrus”の3-D映画まで。キーワードは差し詰め、「過ぎたるは及ばざるがごとし」といったところか。
ディズニーはこのように変革の時期を経たが、企業宣告は未だに行われていない。実際、これまで“黒幕”的スタイルを通していたアイガーは、つい先日、脚本家組合のストライキを終結させるに至った切迫した交渉の際に、ようやく表面に出た。ハリウッドのスタジオ経営者のほとんどが姿を隠そうとしていた中、交渉の個人的管理責任を、Foxのピーター・チャーニン(最高執行責任者)と共に買って出た。こう着状態が長引くと見られていたあの時期にさえ、だ。
「ボブ・アイガーは、ハリウッドの何千人もの職人たちが、数カ月間も職にあぶれる状態に、個人的にショックを受けていた」と、あるライバル会社のトップは言う。「彼には、業界が焦点を見失っているのがわかったので、あの混乱を解決するために、誰よりも時間とエネルギーを割いた。」
こういうことを全体的に見た上で、先日、私は、アイガー本人にこう尋ねてみた。ハリウッドが直面している問題やディズニーの変化の継続について、哲学的に思索してみたいと思わないか、と。答えはいかにも彼らしい—— 嫌だ、そうだ。






















