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『ニュートンは林檎から エンタテインメント・コンテンツ業界への投資アプローチ』
第6回 今なぜエンタテインメント・コンテンツ業界か(その1)
産業再編の中で求められるもの

 
2008/08/06

白井久也
1996年東京大学経済学部経営学科卒業後、数々の証券会社を経て、2005年5月にモルガン・スタンレー証券㈱に入社。コーポレート・クレジット部にてプリンシパル投資業務に従事。特に、メディア・エンタテインメント・コンテンツ業界とのネットワークを生かし、当該業種への幅広い投融資を検討・実行。今般、メディア・エンタテインメント・コンテンツ業界の分野に特化したブティック型の投資および金融サービスを提供するホワイト・ノーツ( http://www.whitenotes.jp)を設立。

 「放送と通信の融合」やら、「ネット広告の台頭」など、いろいろと話題性がある昨今のメディア・エンタテインメント・コンテンツ業界。実際のところ、ビジネスモデルがどのように変わっていくのかは、まだはっきりとしない。確かに技術の進歩が早く、法整備もなされつつあるが、今までのビジネス環境が急激に変わっていくという可能性は低いように思われる。ただし、この業界に対するファイナンスの考え方は徐々にではあるが変わってきている。

サンダンス映画祭で行われたドキュメンタリー映画ファンドのミーティング
サンダンス映画祭で行われたドキュメンタリー映画ファンドのミーティング
 例えば、コンテンツ・ファイナンスと呼ばれる手法で、会社のリスクと切り離した資金調達方法が台頭し始め、さらに、ファンド方式により投資家の資金でコンテンツを製作する方法も増えている。こうした様々な金融技術が導入されている背景には、今までのビジネスモデルでは対応できなくなっていることが背景に潜んでいるのではないか。つまり、今までの資金提供者が消極的になっていると同時に、製作資金が高騰しているという事情があると思われる。本来ならば、そういった不足分の資金を製作会社が補うのであろうが、会社単位での調達能力が限定的という事実もある。「会社の信用力<コンテンツ製作資金」という構図であり、このギャップを埋めるのが「コンテンツ・ファイナンス」や「ファンド方式」と呼ばれる新しいファイナンス手法であろう。

 ここで、少し疑問が生じる。コンテンツ・ファイナンスやファンド方式という形で本当に健全な資金調達ができているのだろうか。弊社自体の経験値不足からくるものかも知れないが、新しい手法による資金調達を検討する際に、運営する会社の取り扱った作品の実績、同様の作品の実績の比較はもちろんのこと、運営会社自体の財務状況や管理能力を客観的に説明できるか、ということが問題になる。つまり、結局、どんな会社がコンテンツを管理・運用するのか、という会社の信用力の議論になるということとも言える。

 コンテンツ自体の流通市場(万一のときには、第三者が仕掛中のコンテンツなどを時価で引き取るような取引)が存在しなかったり、アメリカに比べて市場規模が小さいことで完成保証がビジネスとして浸透しにくい環境であったりという特殊な事情もあるが、結局のところ、会社の信用力という議論に戻ってきてしまうのであれば、まずは、客観的な説明ができる状況を作り出すことが先決ではないかと思われる。

 こうした議論を上場会社に限定して考察してみる。弊社の調べでは、メディア・エンタテインメント・コンテンツ業界に分類される上場企業の数はおよそ350社強。これらの企業を時価総額が100億円という水準で分類してみると、明らかに二極化の構造が見て取れる。

 流動性が低いなどの要因もあるが、基本的にはビジネスが分かりにくい、という理由で機関投資家が敬遠している可能性もある。こうした機関投資家から見て、分かりやすい事業計画(あるいは、分かりやすい説明)、分かりやすい組織体で会社の運営を行っていくことが、まず信用力を高めるために必要とされるポイントではないだろうか。コンテンツ・ファイナンスやファンド方式を検討することも重要であるが、自社の信用力をテコにした資金調達方法によってコンテンツ製作に立ち返ることも重要ではないか。時価総額が100億円を下回る会社の総数は216/351社。時価総額の合計は7,471億円/45兆円。例えば、216社の会社の時価総額に対する有利子負債の比率は0%(中央値)。この部分を、もっと伸ばすことによって資金調達額を増やすことに繋がる可能性がある。その結果、企業価値の増加に繋がっていく可能性もある。もっとも、この議論は資金を必要としている会社にとっての場合であり、資金調達の必要がないのに、積極的に有利子負債の活用を推奨している訳ではない。また、あくまで可能性の問題であるが、機関投資家の資金を導入することで、時価総額(7,471億円)が10%上がれば、747億円の企業価値向上に繋がる。この747億円をテコにしたコーポレート・ファイナンスの可能性を模索することも、コンテンツ製作資金調達方法の一案と思われる。

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