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『ニュートンは林檎から エンタテインメント・コンテンツ業界への投資アプローチ』
第2回 ファンドってなんだ?  ファンドにもいろいろ

 
2008/02/12

白井久也
1996年東京大学経済学部経営学科卒業後、数々の証券会社を経て、2005年5月にモルガン・スタンレー証券㈱に入社。コーポレート・クレジット部にてプリンシパル投資業務に従事。特に、メディア・エンタテインメント・コンテンツ業界とのネットワークを生かし、当該業種への幅広い投融資を検討・実行。今般、メディア・エンタテインメント・コンテンツ業界の分野に特化したブティック型の投資および金融サービスを提供するホワイト・ノーツ( http://www.whitenotes.jp)を設立。

投資と融資、またはその組み合わせ
——最良の方法を提案するのが金融のクリエイティビティであり、腕の見せどころだ

 ある映画案件に投資しませんか? という問合せを受けた。200百万円の投資総額に対して、全額を投資して欲しいという内容だったのだが、結局、断念せざるを得なかった。理由はいくつかあるのだが、一番大きかったのは投資総額に対して、求められている金額の割合と目標利回りの低さだった。
 
 最近、コンテンツ・ファンドの事例をよく目にする。その多くは、「ある特定のコンテンツを制作したい」という動機から生まれたファンドである。ただし、資金提供をする人の視点に立つと、必ずしも「ものを創りたい!」という強い意志は必要とされない。金融投資家であれば、基本はあくまで投資採算が最優先。ここでは、資金提供者がどういった動機からコンテンツ・ファンドに出資するのかを検証してみたい。
 
 資金提供者といっても、千差万別。最近よく耳にするメディア・エンタテインメント・コンテンツ系の「ファンド」にも、幾つかの異なる種類のファンドが存在する。これらの区別は、「どんな先に」、「どういう戦略で」、「どういう形の」資金提供するかによって分けられる。言い方を換えると、「投資する先は会社なのか、コンテンツなのか」、「所有権の取得を前提とした投資か、所有権は主張しない形の投資なのか」、「何か特殊な事情があったときに緊急資金を提供する類の投資か」など。さらに、「投資か融資か」によっても、その意味合いは大きく異なる。融資のようなデット性の資金(分かりやすく言うと、「借金」)提供であれば、借りた側はある期間終了後に必ず返済する義務がある。銀行の借入と同じ。その場合は「必ず返す」という事が前提になっているので、このコンテンツは、資金回収がどれだけ安全に行われるか、という安全性を検証する。仮に安全度が不十分の場合は、担保を求める。返済が滞らない限り、資金提供者は文句を言わない。逆に、投資のようなエクイティ性の資金提供であれば、ご承知の通り、返済義務はない。その代わり、資金を受け入れた時点で、その金額相当(割合)は投資家の所有物になる。
 
 メディア・エンタテインメント・コンテンツ業界について言えば、投資と融資では、どちらがいいのか。あるいは、これらを組み合わせたものがよいのだろうか。また、資金を受ける側の希望としても、コンテンツに対する資金提供がいいのか、コンテンツを製作している会社に対する資金提供が望ましいのか。これらの問いに対しては、明確な回答がないのが現状と思う。つまり、すべてはコンテンツの収益性とそれを保有する企業の財務体質によって異なってくる。また、業界を取り巻く環境や定性的な要因にも左右されるのも現実かも知れない。
 
 個人的には、メディア・エンタテインメント・コンテンツ業界は一般的に、デット性の資金、つまり、安全性の分析がメインとなってくるような業種ではないように思われる。やはりエクイティ性の資金の方がシックリくる。ただし一方で、クリエイティビティが高いコンテンツのような資産、あるいは会社(プロダクション)に対して、その所有権を主張するようなエクイティについて、どこまで理解してもらえるか、という点については疑問が残る。その折衷案がどうしても必要なのが、この業界かも知れない。
 
 多くのやり方が考えられる中で、最良の方法を提案するのが金融のクリエイティビティであり、金融の腕の見せどころだと思う。

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