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中条省平 
マンガの芸術性を高めた作品

2007/12/30

オールタイム・マンガベスト5

 私のオールタイム・マンガベスト5というと、楳図かずお「わたしは真悟」(小学館文庫、全7巻)、業田良家「自虐の詩」(竹書房文庫、全2巻)、宮崎駿「風の谷のナウシカ」(徳間書店、全7巻)、大島弓子「バナナブレッドのプディング」(白泉社文庫)、しりあがり寿「弥次喜多 in DEEP」(エンターブレイン、廉価版全4巻)といったところになるのですが、これらについてはすでに「小説家になる!」(ちくま文庫)や「名刀中条スパパパパン!!!」(春風社)などで語ったことがあるので、それらと同じくらい重要なマンガを挙げました。もちろん、全部大好きなマンガですが、単に好きなだけでなく、マンガという芸術として「重要な」作品であることが選択の基準です。
 ただただ虚心に読んでいただきたいので、題材や物語の解説は省きます。

別バージョン・ベスト5

 (1)は、日本マンガの叙事詩的傑作として。日本のマンガに「劇画」という新たな領域を開拓した歴史的大作ですが、それ以上に、初めて読んだときの、文字どおり血沸き肉躍る興奮は、「イリアス」とか「モンテ・クリスト伯」の印象と等しいものでした。
 (2)は、日本マンガ初の「アート」として。筆者のつげさんは、そんなもの、ラーメン屋の2階(屋根の上だったかな)で昼寝しているときに見た夢にすぎない、とおっしゃるでしょうが、そのようにあっさりと、マンガ表現の未知の可能性が告げられたのです。あのときの驚きは言葉に尽くせません。
 (3)は、山岸凉子のマンガなら何でもいいので。「日出処の天子」(白泉社文庫、全7巻)から「舞姫 テレプシコーラ」(メディアファクトリー、第1部全10巻)まで、長ければ長いほど読者としてはうれしいのですが、山岸先生はまた短篇の途方もない名手なのですよね。その1例として。
 (4)は、ここ2~3年の日本マンガの最高傑作として。ほんとに驚きました。これほど、深く、大きく、美しく、恐ろしいマンガがまだまだ可能だったなんて! 花の24年組恐るべし。
 (5)は、花輪和一の現時点での頂点として。中世の地獄めぐりのお話が現代の地獄に直結する経緯が描きだされます。花輪さんは自分のパーソナルな偏執だけをバネにマンガを描き、この芸術表現としての普遍性に到達したのです。感動を禁じえません。

  • (1)忍者武芸帳
    白土三平
    小学館文庫/全8巻
  • (2)ねじ式
    つげ義春
    小学館文庫
  • (3)天人唐草
    山岸凉子
    文春文庫
  • (4)バルバラ異界
    萩尾望都
    小学館/全4巻
  • (5)天水
    花輪和一
    講談社/全2巻

文:中条省平

学習院大学フランス語圏文化学科教授。神奈川県生まれ。フランス文学が専門だが、日本の小説や漫画、映画評論、ジャズ評論などその活躍は幅広い。著書に「小説家になる!」(ちくま文庫)「反=近代文学史」(中公文庫)などがある。

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