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前田哲 
僕がぜひ映画化したい漫画

2007/12/30

少女期の揺らぐ感性が素晴らしい

 8年程前、『sWinG maN スイングマン』を撮っていたころに「BABYいびつ」を読んだんですが、これはすごいと思って、書き手の山口(綾子)さんに試写状を出したら観に来てくれたんです。女の子の独特の感性が、構図と共に素晴らしい。こんな漫画、見たことないという感じでしたね。もちろん女性の思春期の感性は僕に無いものですが、その突き抜けた感じに心打たれました。
 「はれた日は学校をやすんで」は、西原(理恵子)さんがまだ、知る人ぞ知るという存在の時だと思います。小学校6年から中学生になる女の子の話で、みんな一緒になるから制服は着たくないとか、髪を切りたくないのに母親に切られて、やっとそのことを言えてスッとしたとか、今も西原さんはいいけれど、この作品がまず、西原さんとの出会いですね。やはり女の子は面白い。男の子ってこの時期バカですから(笑)。

いずれ、女性の一生ものをやりたいと思う

 今すぐにでも映画化したいのが「王様とボク」です。主人公の少年と、ずっと病気で入院している仲のいい少年がいて、彼は意識不明というか、そのまま大人になれないで取り残されているわけです。大人になるということは何かを捨てていかなくてはならないじゃないですか。あきらめるとか、自分に折り合いをつけて行かなくてはならない。僕の永遠のテーマでもありますね。
 「アベックパンチ」は最近読んで、二人の不良男子の話かと思ったら、喧嘩に強い主人公が、偶然、街で出会ったカップルにやられる。それはアベックパンチというK1みたいな競技であって、二人が手を繋いで相手と戦う。で、手が離れると負けなんですが、その設定に僕はやられました。
 手塚治虫の「人間昆虫記」は、溝口健二監督の『西鶴一代女』が好きで、女性の生涯ものがやりたくて、自分でもオリジナルのシナリオ書いたんです。この漫画は女の一生の話ですから、宮崎あおいでやりたいなあと。もし「BABYいびつ」を映画化すると、実験映画になるかなというところもありますが、女の子の独特の感じというのは「人間昆虫記」にも繋がるんです。結局、僕がやりたいのは、女性の性(さが)と、大人に成りきれない少年ですね。

  • BABYいびつ
    山口綾子
    河出書房新社
  • はれた日は
    学校をやすんで

    西原理恵子
    双葉社
  • 王様とボク
    やまだないと
    イースト・プレス
  • アベックパンチ
    タイム涼介
    エンターブレイン
    (1巻~)
  • 人間昆虫記
    手塚治虫
    秋田書店

前田哲

映画監督。大阪府出身。フリーの助監督として伊丹十三、阪本順治、松岡錠司などにつく。98年に相米慎二監督が総監督したオムニバス映画『ポッキー坂恋物語・かわいいひとエピソードIII』(98)で劇場デビューする。

text by Sachiko Koide
photographs by Teshima Hiroshi

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