
作家の着想が漫画にうまく表れるということ
「ジョジョの奇妙な冒険」は、登場するヒーローたちが自分の力だけで戦うのではなく、スタンドという背後霊のような存在がいて、彼らが戦うんです。作家の荒木さんは、超能力合戦を描きたかったということですが、何もない空間でコップが割れたり、物が飛んだりするのでは変であると。超能力を見えるものにするため、スタンドを発明したのだそうです。これは素晴らしいアイディアで、肉弾戦に知的ゲームを絡められるし、強さばかりではないスタンドの特殊性を活かすことで戦闘が複雑になる。
スタンドの能力は、空間を削り取る能力とか、時間を止める能力などがあって、“ドン”とか“バン”とかの擬音の文字を相手の身体に投げつけると、まるで“ドン”と殴られたように体がへこむとか、とんでもない着想を全部きっちり可視化してくれる快感があります。卓越した画力のたまものですね。もうひとつ特徴的なのは、絵柄がクールな割にセリフが熱い。荒木さんは梶原一騎の影響を受けていることを認めていますが、名セリフが生まれる作品というのは、「北斗の拳」もそうですが、熱い情念を秘めたものが多いですね。
スタンドの能力は、空間を削り取る能力とか、時間を止める能力などがあって、“ドン”とか“バン”とかの擬音の文字を相手の身体に投げつけると、まるで“ドン”と殴られたように体がへこむとか、とんでもない着想を全部きっちり可視化してくれる快感があります。卓越した画力のたまものですね。もうひとつ特徴的なのは、絵柄がクールな割にセリフが熱い。荒木さんは梶原一騎の影響を受けていることを認めていますが、名セリフが生まれる作品というのは、「北斗の拳」もそうですが、熱い情念を秘めたものが多いですね。
ギャグ漫画の継承と新しい形の古典
最近の漫画は絵が緻密になってバストショットばかりです。昔の漫画は、ひとコマの中に全身を描くようにしていた。ギャグ漫画は本来、ポージングの面白さと表情の面白さを同時にひとコマで描く表現です。そういったギャグ漫画の伝統を、「ムーたち」の榎本さんは継承しようとしているのではないか。
「よつばと!」は、僕が選んだ中で一般性が高い作品ですね。この作者は「あずまんが大王」という萌え4コマ漫画の傑作でブレイクして、満を持してこの作品が登場したわけです。「よつばと!」の世界では、よつば以外は全員キャラクターで、よつばという女の子だけが、記号的な存在つまり、キャラなんです。顔の書き方も彼女だけ省略化されています。アニメ的なカルチャーから生まれた新しい形の古典になる作品ではないでしょうか。
「長い道」のこうのさんは禁欲的な人ですね。あえてこの幅で自分は描くんだと、振幅を設定しているところがいい。この漫画は夫婦の話で、妙ないきがかりで結婚されられた二人の日常を丁寧に描くことでだんだん絆が深まっていくところが泣かせます。
「よつばと!」は、僕が選んだ中で一般性が高い作品ですね。この作者は「あずまんが大王」という萌え4コマ漫画の傑作でブレイクして、満を持してこの作品が登場したわけです。「よつばと!」の世界では、よつば以外は全員キャラクターで、よつばという女の子だけが、記号的な存在つまり、キャラなんです。顔の書き方も彼女だけ省略化されています。アニメ的なカルチャーから生まれた新しい形の古典になる作品ではないでしょうか。
「長い道」のこうのさんは禁欲的な人ですね。あえてこの幅で自分は描くんだと、振幅を設定しているところがいい。この漫画は夫婦の話で、妙ないきがかりで結婚されられた二人の日常を丁寧に描くことでだんだん絆が深まっていくところが泣かせます。
フェミニズムへの理解と確信性
「大奥」は、男だけの大奥の話で、男女が逆転したバージョンです。やおい出身の中でも、この人は突出していますね。今これだけ堂々とフェミニズムやっている人は他にいないのではないか。やおいとフェミニズムは関係があるけれど、やおいを論じるときに、イコールフェミニズムではないということが、よしながさんには分かっている。
僕が目から鱗だったのは、男性はみんな抑圧ポイントが一緒であるけれど、女性というのは抑圧ポイントがそれぞれにバラバラである。だから女性というのは本質的にマイノリティに留まらざるを得ないという指摘です。この話をすると多くの女性が共感してくれますね。80年代と違って、今フェミニズムは、男女のどうしようもないジェンダーの格差みたいなところを前提としてやっていかないと、説得性は持てない。彼女はそれを分かった上で、言葉は悪いけど確信犯的にやっている印象があります。
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ジョジョの奇妙な冒険
(集英社/全63巻)
ほか、荒木飛呂彦全作品 -
ムーたち
(講談社/~2巻)
ほか、榎本俊二全作品 -
よつばと!
(角川書店/~7巻)
ほか、あずまきよひこ
全作品 -
長い道
(双葉社)
ほか、こうの史代全作品 -
大奥
(白泉社/~3巻)
ほか、よしながふみ全作品
斎藤環
医学博士。岩手県生まれ。専門は思春期・青年期の精神病理学、病跡学、ラカンの精神分析、ひきこもり問題の治療および啓蒙活動。著書に「文脈病 ラカン/ベイトソン/マトゥラーナ」(青土社)、「戦闘美少女の精神分析」(太田出版)、「ひきこもり文化論」(紀伊國屋書店)などがある。
text by Sachiko Koide
photographs by Teshima Hiroshi
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