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「日本のマンガ・アニメがハリウッドを制覇する日!?」特別寄稿
『スピード・レーサー』にみるハリウッドとアニメの関係

2008/07/07
七丈直弘

日本のアニメ作品の「映画化選択権」

(C)2008 Warner Bros.Ent. All Rights Reserved
(C)2008 Warner Bros.Ent. All Rights Reserved
 『スピード・レーサー』はご存じタツノコプロ制作の「マッハGoGoGo」の実写版映画化作品である。だが、これ以外にも、アニメの映画化権をハリウッド企業が買ったという話を最近よく聞くようになった。
 
 直近では、攻殻機動隊の実写化が報じられた(士郎正宗作のマンガを原作とするが、同作品は押井監督によるアニメ化によって、米国での知名度を獲得した)。これ以外にも、「ガッチャマン」のようなタツノコ作品、「ドラゴンボール」、「AKIRA」などといったヒットアニメの映画化の話は多い。原作を基に映画を制作する権利を「映画化選択権」などというが、権利を買ったからといって、かならずしも映画化するわけではないのが通常だ。実際に、これまでも多くの日本のアニメ作品の映画化選択権が海外企業によって買われてきたわけだが、実際にその権利が行使された事例は極めて少ない。それが、ここに来て事例が急増してきた。その一部をリストアップしてみよう。

●BLOOD: LAST VAMPIRE (2008年公開予定)
●ASTRO BOY(「鉄腕アトム」、2009年公開予定)
●DRAGONBALL(「ドラゴンボールZ」、2009年公開予定)

 これ以外にも、次の作品群が今後映画化されていく見込みがある。

●VOLTRON: DEFENDER OF THE UNIVERSE (In development)
●ROBOTECH(In development)
●AKIRA(In development)
●GHOST IN THE SHELL(In development)

 『スピード・レーサー』が口火を切った、「日本アニメのハリウッド映画化」は来年、その翌年と当面続いていきそうである。この現象は、玩具とアニメの成功によってアメリカでヒットした「トランスフォーマー」の実写映画化の成功が影響している点は多いにあるだろう。しかし、日本発の原作の映画化ラッシュの背景には、ハリウッドにおいて一時的に良質な企画が枯渇していることと関係があるのではないか。

年々高騰する製作費とリスク回避

 映画ビジネスにおいて、製作費は秘中の秘とされ、その公式な統計情報は存在しないのだが、観客を惹く高度な映像表現を実現するために、年々高騰しているといわれる。また、これと軌を一にするごとく、投資資金の運用先としての需要も高まってきている。たとえば、『スピード・レーサー』では、ドイツのファンド(FilmförderungsanstaltとDeutscher Filmfoerderfonds)がファイナンスをしている。他にも、オイルマネー、国富ファンドなどから製作資金が流入している例もあるだろう。このような資金需要によって支えられた多数の作品製作は、映画マーケットに対して、これまでない苛烈な競争環境をもたらした。より多くの収益を確保するために、プロデューサーたちは腐心する。その結果、リスク回避行動をとり、オリジナル企画ではなく「すでに何らかの形で成功した作品」の「再生産」に向かわせることとなる。

日本のプロデューサーにとってはチャンス

『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊2.0』(C)1995・2008士郎正宗/講談社・バンダイビジュアル・MANGA ENTERTAINMNET
『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊2.0』(C)1995・2008士郎正宗/講談社・バンダイビジュアル・MANGA ENTERTAINMNET
 だが「成功作品」の数は、限定されているわけだし、早晩ネタが尽きてしまうのではないだろうか?そもそも、良質な作品が産まれてくる土壌には、多様性が不可欠だし、成功の再生産に焦点が移った映画業界は、長期的には低迷してしまうのではないだろうか。もちろんハリウッドには、常時大量の人材が流入してくるわけだし、そのような危惧は杞憂に過ぎないだろう。だが、一時的にしろ、日本アニメへの間口が開かれた現在は、日本のプロデューサーにとってチャンスではないだろうか。

 日本のアニメの価値がより高く認識されることにより、単に映画化権を提供するだけでなく、より製作の深い部分に関与できる可能性がある。たとえば、プロダクションI.Gが『攻殻機動隊』の製作者に名を連ねているのは、その一つの事例として、画期的ではないだろうか?

日本のアニメの可能性、アニメ産業の競争力向上

 日本には、まだまだ世界レベルでヒットが可能な作品が数多く眠っている。今後は、単にライツの売り切りではなく、積極的に製作に関与し、リスクをとり、世界規模でエンタテインメント・ビジネスを行うことができるような人材が求められている。この作品を見て、日本のアニメの可能性を知ってもらいたい。そして、日本のアニメ産業の競争力向上に結びつくような新しい人材がうまれてくることを期待したい。

七丈直弘 Naohiro Shichijo  東京大学大学院情報学環准教授
1970年静岡生まれ。1994年東京大学理学部数学科卒業。博士(工学)。東京大学人工物工学研究センター研究員、東京大学大学院情報学環助手、同特任助教授を経て、2006年同助教授に就任。数理的手法を用いて組織における知識生産のミクロ分析を行う。また、コンテンツを知識産業として捉え、能力形成のモデル化・企業の戦略分析を行っている。


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