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アメリカでの日本のマンガとアニメの歩み

2008/07/08
 7月5日に日本公開された『スピード・レーサー』。ご存知の通り、本作は吉田竜夫のマンガ「マッハGoGoGo」のハリウッド実写版だが、日本のマンガやアニメがハリウッドで市民権を獲得するまでには、実に長い道のりがあった。そこで、その道のりを振り返るためにも、アメリカでのアニメとマンガの重要な出来事を年表にまとめてみた。

「鉄腕アトム」「ガッチャマン」「マッハGoGoGo」

 まず注目していただきたいのは、アメリカでも、すでに60年代初期から日本のアニメが放送されていたという事実だ。つまり60年代や70年代のアメリカ人は日本人と同じように、「アトム」“Astro Boy”、「ガッチャマン」“Gatchaman”、「マッハGoGoGo」“Speed Racer”などを見ていたことになる。「マッハGoGoGo」にいたっては、60年代から90年代までアメリカのテレビで放映されていた。つまり、3世代にわたるアメリカ人がこの日本のテレビアニメを見て育ったことになる。

 しかも中にはこれを日本のアニメと知らずに、アメリカのアニメだと思って見ていた人もいるほど、アメリカ人の生活に浸透していた。

 現在ハリウッドで映画化されている日本のアニメやマンガのほとんどが、こういった形でアメリカの一般家庭で視聴されていた。つまり、ハリウッドの監督たちは、「日本のマンガ」を映画化するというより、自分たちが育った身近なアニメを映画化しているという感覚が強い。

 80年代になると、アメリカでは、「トランスフォーマー」などのメカロボット・アニメがはやった。現在のハリウッドのクリエイターたちは、トランスフォーマーなどの玩具で遊んだ世代も多い。そんな世代がいるなか、スティーヴン・スピルバーグマイケル・ベイ監督が真っ先に「トランスフォーマー」に興味を持ったのもうなずける。
「科学忍者隊ガッチャマン」 (c)タツノコプロ
「科学忍者隊ガッチャマン」 (c)タツノコプロ

「攻殻機動隊」「AKIRA」から宮崎駿

 80年代後半から90年代に入ると、青年向けの日本のアニメがビデオで販売されるようになり、日本のアニメのイメージが、それまでの「フレンドリーで子どもたちのもの」から、「マイナーでアートっぽくてクール!」というイメージに変化する。「攻殻機動隊」や「AKIRA」がハリウッドのクリエイターたちに与えた影響は大きい。また、そのころから英語でも「オタク」Otakuという言葉が使われるようになる。

 決定的な瞬間は、2003年、宮崎駿が『千と千尋の神隠し』でアカデミー賞を受賞。このあたりから日本のアニメがハリウッドで市民権を獲得していった感がある。『千と千尋の神隠し』は「AKIRA」などが好きなアート系のアメリカ人をうならせる芸術性を持つと同時に、ディズニーが米国内の配給を行った、いわゆるお墨付きのファミリー映画でもある。しかも、今までテレビで放映されていたような日本の子ども向けアニメとは一線を画す。

 宮崎駿は、アメリカのクリエイターたちの間で、かつての黒澤明監督のようにリスペクトの対象となっている。
『Ghost in the Shell/攻殻機動隊』
販売元:バンダイビジュアル
『Ghost in the Shell/攻殻機動隊』
販売元:バンダイビジュアル

急速なマンガの広がり

 さて、アニメが60年代からアメリカ人の生活の一部になっていたのに対して、日本のマンガがアメリカで広く読まれるようになったのは、もっと後になってからだ。90年代にはマンガがMangaとして、アメリカの青年たちの間でサブカルチャー的な人気を得はじめたがまだメジャーなものではなかった。90年代後半になるまで、マンガは一般の書店では扱われておらず、数少ないコミック専門店でしか置かれていなかったため、まだまだ一部のコミック愛好家の間でしか読まれていなかった。

 それを大きく変えたのは、“Pokémon(ポケモン)”の出現だろう。1998年に、ポケモンのマンガが一般書店やおもちゃ屋のチェーン店で売られるようになった。ポケモンの人気のおかげで、マンガが一般人の目に触れるようになる。

 2002年ごろから一般の書店にもマンガ・コーナーが出現する。そのころからマンガの認知度が急速に上がり、過去6年間で、アメリカの子どもやティーンエイジャーの間で一般化する。アニメやマンガクラブがある学校も今では多い。

 しかし、ここで注目したいのは、アメリカで「マンガ」という言葉の意味を知っていたり、実際に読んだことのある世代は10代、20代だということだ。30代後半以上のアメリカ人の多くは「マンガ」といわれてもわからない。「マンガはアメリカのコミックのようなものだけど、アメコミのように薄くはない。また、アメコミはカラーだけど、マンガは白黒で印刷されており、ヒーローものだけでなく、恋愛ものや、大人向けの作品も多数ある」と、説明する必要がある。

 むしろ50代ぐらいの方が「うちの娘/息子がはまっているので知っている」と答える人がいる。

 現在ハリウッドで進行中のプロジェクトの多くは、テレビで放映されたアニメが多い。しかし最近は、マンガのほうから人気が出てテレビアニメの放映を始めるケースも出てきた。また、アニメの放映はないが、マンガから直接映画化の話が出るケースも出始めた。
米の大手書店ボーダーズの新作マンガのコーナー
米の大手書店ボーダーズの新作マンガのコーナー

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