辻一弘は、2年連続のアカデミー賞メイクアップ賞ノミネートを果たした。言うまでもなく、これは驚くべき快挙だ。だが、辻自身にとって今回のノミネートは、それ以上に大きな意味を持つ。
それは今回が、恩師であるリック・ベイカーと連名のノミネートだからである。
それは今回が、恩師であるリック・ベイカーと連名のノミネートだからである。
これまで何度もあったチャンス
「やっとこの時が来たんだ」
辻とベイカーのふたりは、仕事場であるベイカーの工房、シノベーション・スタジオ(通称リック・ベイカー・スタジオ)でバラエティ・ジャパンの独占インタビューに応えてくれた。
ベイカー 「ふたり一緒にノミネートされたことが本当にうれしいんだ」
リック・ベイカーは過去、アカデミー賞メイクアップ賞に9回ノミネートされ、実に6回受賞という輝かしい記録を誇る(視覚効果賞でも1回ノミネートされている)、ハリウッドで知らない者はいない特殊メイクアーティストの大御所である。そのリック曰く、辻とふたり揃っての今回のノミネートは、遅すぎるくらいだったという。
ベイカー 「カズとはもう12年以上も一緒にやっていて、いつも僕の作品の重要な部分を担ってきてくれた。これまで何度も一緒にノミネートされてもおかしくなかったけど、うまくいかなかった。やっとこの時がきたんだ」
ベイカー 「ふたり一緒にノミネートされたことが本当にうれしいんだ」
リック・ベイカーは過去、アカデミー賞メイクアップ賞に9回ノミネートされ、実に6回受賞という輝かしい記録を誇る(視覚効果賞でも1回ノミネートされている)、ハリウッドで知らない者はいない特殊メイクアーティストの大御所である。そのリック曰く、辻とふたり揃っての今回のノミネートは、遅すぎるくらいだったという。
ベイカー 「カズとはもう12年以上も一緒にやっていて、いつも僕の作品の重要な部分を担ってきてくれた。これまで何度も一緒にノミネートされてもおかしくなかったけど、うまくいかなかった。やっとこの時がきたんだ」
未来の特殊メイク界につながる
強い師弟関係の絆
辻は1996年に単身渡米し、シノベーション・スタジオに所属。『メン・イン・ブラック』『PLANET OF THE APES/猿の惑星』など多くの作品に携わり、00年には『グリンチ』で、ベイカーらと共に英国アカデミー賞メイクアップ&ヘアー賞を受賞している。
辻 「もともと僕にとって、リックと働けることは夢以上のことでした。不可能だと思ってました。もし叶うなら奇跡だと。でもこの仕事をするなら絶対リックに師事したかった。日本にいた頃から何度もアプローチしたんですが、当初はいろんな事情でうまくいかず、やっと実現したんです」
ベイカー 「カズは謙虚で、第一印象ではここまでやると思わなかった。でもカズは単なる仕事としてではなく、情熱を持っていて、特殊メイクを愛している。誰より優れた技術も持っている。私はたくさんの人間と仕事をするし、私のようになりたがる人は多いが、私と同じようにこの仕事を愛し、職人として技術を継承してこの世界の未来を背負っていける人と出会うのはとても難しいんだ。カズと巡り合ったことは素晴らしいことです」
特殊メイク界のトップランナー同士の長年にわたる信頼関係は国籍を超越し、より強固な絆で結ばれているようだ。
辻 「もともと僕にとって、リックと働けることは夢以上のことでした。不可能だと思ってました。もし叶うなら奇跡だと。でもこの仕事をするなら絶対リックに師事したかった。日本にいた頃から何度もアプローチしたんですが、当初はいろんな事情でうまくいかず、やっと実現したんです」
ベイカー 「カズは謙虚で、第一印象ではここまでやると思わなかった。でもカズは単なる仕事としてではなく、情熱を持っていて、特殊メイクを愛している。誰より優れた技術も持っている。私はたくさんの人間と仕事をするし、私のようになりたがる人は多いが、私と同じようにこの仕事を愛し、職人として技術を継承してこの世界の未来を背負っていける人と出会うのはとても難しいんだ。カズと巡り合ったことは素晴らしいことです」
特殊メイク界のトップランナー同士の長年にわたる信頼関係は国籍を超越し、より強固な絆で結ばれているようだ。
エディー・マーフィーがアジア人に
毎回3時間15分の大変身
今回ノミネートの対象となったのはエディ・マーフィー主演の『マッド・ファット・ワイフ』。エディ・マーフィーお得意の7変化ものだが、これまでの太ったメイクや女性になりきったメイクに加え、本作で特筆すべきはミスター・ウォンという中国人キャラへの変身技術だ。
辻 「黒人のエディ・マーフィーをアジア人にするというのはとても難しい。まずプロポーションが違うんです。メイクのデザインは何百通りもある中からひとつを選ぶような作業です。顔を変えることは難しくない。厚く盛ればいいですから。でもその役者の表情が外に伝わるリアルなメイクが必要なんです」
辻は展示用のミスター・ウォンの人形で説明してくれた。アプライアンスと呼ばれる、精巧につくられた中国人の鼻、唇、耳、頬などのパーツを11ピースもエディ・マーフィーにかぶせてミスター・ウォンが完成する。その工程は毎回3時間15分かかったという。
辻 「ピースを全部かぶせてから最後に色を全体に調整して出来上がりです」
頬のピースは本当の皮膚のよう伸び、皺もよる。まさに芸術品だ。
辻 「でもこれは一度はがすとエッジがなくなってしまうのですべて使い捨てです」
なんとももったいない話である。
はじめにエディ・マーフィーの顔型をとって、こういったアプライアンスをすべて完成させるのに1カ月半ほど要する。だが、本当の苦労はそれからだと辻は語る。
辻 「いちばん大変なのは、長丁場の撮影でそのメイクをどれだけ変わらず維持できるか。俳優は休憩でご飯も食べれば昼寝もします。そういう後でも、変わらない状態を保つためのメンテナンスがかなり大変ですね」
辻 「黒人のエディ・マーフィーをアジア人にするというのはとても難しい。まずプロポーションが違うんです。メイクのデザインは何百通りもある中からひとつを選ぶような作業です。顔を変えることは難しくない。厚く盛ればいいですから。でもその役者の表情が外に伝わるリアルなメイクが必要なんです」
辻は展示用のミスター・ウォンの人形で説明してくれた。アプライアンスと呼ばれる、精巧につくられた中国人の鼻、唇、耳、頬などのパーツを11ピースもエディ・マーフィーにかぶせてミスター・ウォンが完成する。その工程は毎回3時間15分かかったという。
辻 「ピースを全部かぶせてから最後に色を全体に調整して出来上がりです」
頬のピースは本当の皮膚のよう伸び、皺もよる。まさに芸術品だ。
辻 「でもこれは一度はがすとエッジがなくなってしまうのですべて使い捨てです」
なんとももったいない話である。
はじめにエディ・マーフィーの顔型をとって、こういったアプライアンスをすべて完成させるのに1カ月半ほど要する。だが、本当の苦労はそれからだと辻は語る。
辻 「いちばん大変なのは、長丁場の撮影でそのメイクをどれだけ変わらず維持できるか。俳優は休憩でご飯も食べれば昼寝もします。そういう後でも、変わらない状態を保つためのメンテナンスがかなり大変ですね」
オスカーを受賞した際は…… 同じ志をもつ者へのアドバイス
リック・ベイカーに師事して12年。かつてのベイカーの年齢に近づいていく辻は、技術を継承していく立場として、これからどうありたいと考えているのだろうか。
辻 「リックと仕事をして得るものはもちろん大きい。リックのようになりたいとも思うけど、アーティストとして、“自分らしく”成長しなければいけないと思います。受け継いだものはうまく生かしてね」
辻は2度目のチャレンジにして、初のオスカー受賞にも意欲を見せる。
辻 「ノミネートと受賞はやっぱりね、大きく違いますよね。見られ方というのがね」
最後に、オスカーを多数受賞しているベイカーが辻にアドバイスをおくった。
ベイカー 「もし僕らがオスカーをとったらカズにスピーチをやってもらう。あの怖さを知らなきゃいけない(笑)。私は何度も経験しているからね。こわいよー、あれは(笑)。あらかじめ言いたいことを整理し、30秒ぐらいにまとめる練習をして、運良く受賞したら自動的にすらすら出てこないといけない。でもステージから降りた後はなにを喋ったか覚えていない。怖いぞー。あれをカズに味わわせたいんだ(笑)」
辻 「リックと仕事をして得るものはもちろん大きい。リックのようになりたいとも思うけど、アーティストとして、“自分らしく”成長しなければいけないと思います。受け継いだものはうまく生かしてね」
辻は2度目のチャレンジにして、初のオスカー受賞にも意欲を見せる。
辻 「ノミネートと受賞はやっぱりね、大きく違いますよね。見られ方というのがね」
最後に、オスカーを多数受賞しているベイカーが辻にアドバイスをおくった。
ベイカー 「もし僕らがオスカーをとったらカズにスピーチをやってもらう。あの怖さを知らなきゃいけない(笑)。私は何度も経験しているからね。こわいよー、あれは(笑)。あらかじめ言いたいことを整理し、30秒ぐらいにまとめる練習をして、運良く受賞したら自動的にすらすら出てこないといけない。でもステージから降りた後はなにを喋ったか覚えていない。怖いぞー。あれをカズに味わわせたいんだ(笑)」




























