どの国の人が撮るかではなく、なにを描こうとしているか
伊原剛志。
『硫黄島からの手紙』で颯爽と馬をあやつるバロン西こと西竹一を演じた彼は、身体能力と体格に恵まれ、アクションを得意とする俳優のなかでも別格の存在である。しかもそれだけにとどまらない。伊原剛志は志の俳優だ。
現在公開中の映画『ヒートアイランド』もまた志の映画だ。舞台シブヤを、ストリートギャングやヤクザが、パワーと頭脳を全開にして疾走していくアクション・ムービーではあるが、主人公たちには〈自分の力でなにかを変えてやる〉という意志がある。何の疑問もなく誰かが作ったシステムに乗り、そこから弾かれた途端に文句をいう負け犬にはなりたくない、という。そこには、いまの日本が抱える負の空気を打破しようという気概がある。
伊原が『硫黄島からの手紙』の次に選んだのは、こういう映画だ。
photographs by
Kazuhiro Koide
アクションを感じさせる演技をこころがけて
「もちろん、これはアクション映画なんですけど、僕にはアクション・シーンがほとんどないんです」。伊原が演じるのは、政治家やヤクザの裏金ばかりを狙う強盗団のボス・柿沢。熱とともに疾走するストリートギャング、ギルティのメンバーに相対し、柿沢はクールにものごとを判断していく。
「でもこの映画に参加している限り、アクションの空気を壊したくない。跳躍しなくてもアクションを感じさせるような演技をしようと心がけました。たとえば、銃を構える一瞬のシーンや歩くシーンを見た観客ですら、アクション映画を見た、という満足感が得られるように」
もともと、恵まれた身体性を持つ伊原の存在感はすごい。でも、「アクション映画などではそれを活かせるようにと思っていますが、意識して出さないようにすることもあります」と、それを抑える演技を心掛け、成功させてきた。そこが伊原の持ち味だ。
原作となった垣根涼介の「ヒートアイランド」シリーズには、女性がほとんど登場しない。だが映画には北川景子演じるダサいことが嫌いなモデルのナオを登場させ、柔らかみを出している。「そこも成功していると思います。原作をよりパーフェクトな形にした脚本も面白かったし、監督も〈カット割りができる〉ではなく、〈役者を的確に導ける〉人だったし」と、「嘘が言えない」という朴訥とした話し方で自作を俯瞰した。
「でもこの映画に参加している限り、アクションの空気を壊したくない。跳躍しなくてもアクションを感じさせるような演技をしようと心がけました。たとえば、銃を構える一瞬のシーンや歩くシーンを見た観客ですら、アクション映画を見た、という満足感が得られるように」
もともと、恵まれた身体性を持つ伊原の存在感はすごい。でも、「アクション映画などではそれを活かせるようにと思っていますが、意識して出さないようにすることもあります」と、それを抑える演技を心掛け、成功させてきた。そこが伊原の持ち味だ。
原作となった垣根涼介の「ヒートアイランド」シリーズには、女性がほとんど登場しない。だが映画には北川景子演じるダサいことが嫌いなモデルのナオを登場させ、柔らかみを出している。「そこも成功していると思います。原作をよりパーフェクトな形にした脚本も面白かったし、監督も〈カット割りができる〉ではなく、〈役者を的確に導ける〉人だったし」と、「嘘が言えない」という朴訥とした話し方で自作を俯瞰した。
『硫黄島からの手紙』は、日本では撮れない
本作の撮影には『硫黄島~』の直後に入った。硫黄島から渋谷へ、世界と日本を往復する。
「イーストウッドの演出世界に自分が関われたのは嬉しかったですね。クリントの演出は、演出されているのに、それを感じさせない自由さがある。でも、リハーサルもないので、本番にはものすごい緊張感がありました」
日本でも、世界でも、いい仕事をしていきたい。その志はあるものの、「どこで撮る映画だとしても、日本人だし、日本人の役しかできないわけです」と現実を見すえる。 「だからこそ、柿沢なら柿沢、またバロン西ならバロン西という役を信じて演じるしかないんです。よく伊原さんはどんな人なんですか、と聞かれるんですが、自分でもよくわからない。だから役者をやっていけるのかなとも思います。わからない自分を楽しんでる。でも全く自分のなかにない役は演じられない。置き換えたり、見つけだしたりしながら演じるわけです。終わった時に、この役はぴったりでしたね、と言われるのがなにより嬉しいんですよ」
『硫黄島からの手紙』や数々のホラー映画など、日本や日本のコンテンツをベースにした映画が増えている。
「『硫黄島~』みたいな映画が、なぜ日本では撮れないのかという話をよく聞きますが、僕は撮れないと思います。アメリカ人が撮ったからあの距離感が保てたと思うし、お金のかけ方も違う。クリントは、日本語は喋れないけど、日本人というか、人間の本質をきちんと描こうとしていた。黒澤映画もまさしくそうだったと思いますが、どの国の人が撮るかではなく、なにを描こうとしているかが重要なんだと思います」
「イーストウッドの演出世界に自分が関われたのは嬉しかったですね。クリントの演出は、演出されているのに、それを感じさせない自由さがある。でも、リハーサルもないので、本番にはものすごい緊張感がありました」
日本でも、世界でも、いい仕事をしていきたい。その志はあるものの、「どこで撮る映画だとしても、日本人だし、日本人の役しかできないわけです」と現実を見すえる。 「だからこそ、柿沢なら柿沢、またバロン西ならバロン西という役を信じて演じるしかないんです。よく伊原さんはどんな人なんですか、と聞かれるんですが、自分でもよくわからない。だから役者をやっていけるのかなとも思います。わからない自分を楽しんでる。でも全く自分のなかにない役は演じられない。置き換えたり、見つけだしたりしながら演じるわけです。終わった時に、この役はぴったりでしたね、と言われるのがなにより嬉しいんですよ」
『硫黄島からの手紙』や数々のホラー映画など、日本や日本のコンテンツをベースにした映画が増えている。
「『硫黄島~』みたいな映画が、なぜ日本では撮れないのかという話をよく聞きますが、僕は撮れないと思います。アメリカ人が撮ったからあの距離感が保てたと思うし、お金のかけ方も違う。クリントは、日本語は喋れないけど、日本人というか、人間の本質をきちんと描こうとしていた。黒澤映画もまさしくそうだったと思いますが、どの国の人が撮るかではなく、なにを描こうとしているかが重要なんだと思います」
Tsuyoshi Ihara 1963年、福岡県小倉市生まれ、大阪育ち。大阪府立今宮高校卒業後、俳優を志し単身上京。JAC(ジャパンアクションクラブ)へ。83年、青井陽治演出のパルコ劇場「真夜中のパーティ」で初舞台。翌84年「コータロー・まかりとおる!」で映画デビュー。以後、映画、テレビドラマ、CMと幅広く活躍。94年、坂東玉三郎演出「海神別荘」での演技が高く評価された。04年、フジテレビ「ラストクリスマス」、NHK大河ドラマ「新選組!」に出演。05年『ヒナゴン』に主演。06年には、クリント・イーストウッド監督 『硫黄島からの手紙』に出演し、評価を得ている。著書に『志して候う(こころざしてそうろう)』(アメーバブックス)がある。08年には『築地魚三代目』も公開待機中。
『ヒートアイランド』
●監督:片山修 原作:垣根涼介 脚本:サタケミキオ 撮影:斉藤幸一 音楽プロデューサー:志田博英
●出演:城田優、木村了、北川景子、パパイヤ鈴木、豊原功補、近藤芳正、松尾スズキ、伊原剛志
●2007年/日本/カラー/ビスタサイズ/ドルビーSR/106分/2007年10月20日よりシネセゾン渋谷ほかにて日本公開
●配給:ザナドゥー
●監督:片山修 原作:垣根涼介 脚本:サタケミキオ 撮影:斉藤幸一 音楽プロデューサー:志田博英
●出演:城田優、木村了、北川景子、パパイヤ鈴木、豊原功補、近藤芳正、松尾スズキ、伊原剛志
●2007年/日本/カラー/ビスタサイズ/ドルビーSR/106分/2007年10月20日よりシネセゾン渋谷ほかにて日本公開
●配給:ザナドゥー



























