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種田陽平

2007/11/12

日本の技を、世界に

 
 10月に三谷幸喜監督との2本目のコンビ作品『ザ・マジックアワー』がクランク・アップするやいなや異国へと飛んだ美術監督・種田陽平。
 次なる仕事は日本ではないらしい。
 97年の『香港大夜総会』、98年の『不夜城』と、当時活気のあった香港の映画人との仕事を経験、2000年にはオランダでEXHIBITIONを行った種田は、群れず、恐れず、場所を選ばず、未知なるクリエイティブを切り開いていく稀有なる人物。
 02年の『KILL BILL vol.1』ではアメリカの美術監督協会最優秀美術賞にノミネートされ、クエンティン・タランティーノ監督のみならず、アメリカの同業者からも信頼と評価を得た。



ビジネスもいいけれど、
日本映画の技も育てなければ

 「僕が映画界に入った頃→1980年頃は、映画はビジネスではありませんでした。スタッフは全員フリーランスの時代。当たる映画がなかったからかもしれませんが。ここにきて「映画はビジネスだ」という人が増えてきた。それで日本映画界は息を吹き返し、製作本数も格段に増えたけど、映画の技術者の数は増えておらず、育てよう、増やそうという空気もない。本当に素晴らしい映画を作りたいのなら、生産する人——例えばデザイナーだけでなく、腕のいい職人を育てることも必要です。パソコンを操り、かっこいいデザインをあげるデザイナーは掃いて捨てるほどいるけれど、それを実際につくり上げる現場の技術者、職人が不足している。

 三谷幸喜監督と仕事してよかったと思うのは、「職人さんは素晴らしい」と普段から考えている監督だから。職人をちゃんと視野に入れている。三谷さんはもともと異業種の人だけど、そういうところは昔の巨匠に近いんじゃないかと思います。映画の職人を名指しで呼んで動かすことのできる映画監督は今なかなかいませんから。監督に力を認めてもらえた職人は監督のためにもっと力を発揮しようと頑張る。美術監督にほめられるのでは意味が違うんです(笑)」

 という種田のスタンスは、美術デザイナーではなく、あくまで美術監督。オーガナイズし、作品の世界観を成立させる方向に全てを導く役目を負おうとしている。故・相米(慎二)監督に「監督って言葉がついたら、何もやらなくていいんだぞと言われたから」とうそぶきながら。職人だけでなく、監督やプロデューサー、撮影監督と共に戦い映画の世界観を結実させる美術監督もまた足りないのだ。

刺激になったのは、中田秀夫監督がハリウッドで
たった一人で『ザ・リング2』を撮ったこと

 「近年、『ロスト・イン・トランスレーション』『バベル』『ワイルドスピード3』、世界の映画が日本に撮影に来ています。その時、外国の美術監督や監督、スタッフが驚くのは、なんて日本はコンビニエントなんだ、ということ。オーダーすれば何でもパッと出てくる。中国でもヨーロッパでも、言ってからしばらく、ああだこうだしないと出て来ない。そこが日本人の優れている点。ハリウッドでも、日本は便利でクオリティが高いという認識。その代わり、皆、口を揃えて言うのは、「高い」。確かに値段は高いです。物価が高いのですからしかたないのですが、セット建てようと思ったら、上海の5倍はかかりますからね」

 『KILL BILL vol.1』の後、種田はタランティーノにプライベートな設計まで頼まれるほどの信頼と友情を勝ち得た。

 「先日、久々にタランティーノに会って話をした時に、今度、種田は、一人で他の国の現場にポーンって入ってやったら面白いんじゃないかと言われました。一人でやるのはやぶさかではないんですが、一人で勝負できるポジションと、そうでないポジションがある。美術は少々難しいかもしれません。

 それでも刺激になったのは、中田秀夫監督が『ザ・リング2』をハリウッドで一人で撮ったこと。当初、中田さんは、ハリウッドのデザイナーたちと日本の種田が候補に上がっていると製作側から告げられたそうなんです。しかし、アメリカのシチュエーションで『ザ・リング2』を撮るなら、日本人の種田さんにやってもらうのは不自然じゃないか、と中田さんはアメリカ人デザイナーを選んだそうなんです。普通だったら日本人のヘルプというか心のより所が欲しくなるでしょう。ところが一人、ハリウッドで闘った。大したものだと思いました。スタジオの中では日本語を禁止にしていたらしいですしね。勇気をもらいました。もちろんワダエミさんからもいつも刺激を受けています。日本人で海外で仕事をするスタッフはまだまだ少ないと思います。

 いつか一緒に仕事したいと思っているのは、アン・リー監督。アジア人として彼のようにグローバルな評価を得られる作品をつくり続けられたらと、思います。台湾に戻って撮り、(香港や)上海でも撮り、またハリウッドでも撮る。新作の『ラスト、コーション 色・戒』は、賞を取るほどクオリティが高く、大ヒットもしている、というのがすばらしいですよね」

(C) 2008 フジテレビ 東宝
(C) 2008 フジテレビ 東宝
『ザ・マジックアワー』
●脚本と監督:三谷幸喜 製作:亀山千広、島谷能成 撮影:山本英夫 美術:種田陽平 VFXプロデューサー:大屋哲男
●出演:佐藤浩市、妻夫木聡、深津絵里、西田敏行ほか
●配給:東宝 http://magic-hour.jp
●2008年全国東宝系にて日本公開



Yohei Taneda 武蔵野美術大学油絵科卒業。在学中より絵画助手として寺山修司監督作品『上海異人娼館』などに参加。榎戸耕史監督『ふ・た・り・ぼ・っ・ち』はじめ数々の映画の美術監督を務めるほか、テレビドラマ、CM、舞台の美術や映画美術展、アートブック、店舗デザインなど国内外の幅広い分野でデザイン・ワークを展開。『スワロウテイル』で第20回で日本アカデミー賞優秀美術賞を、『不夜城』で第22回日本アカデミー賞優秀美術賞、第18回香港電影金像賞最優秀美術監督賞を受賞した。『KILL BILL vol.1』で米国美術監督協会の最優秀美術賞にノミネートされ、07年『THE 有頂天ホテル』『フラガール』で第30回日本アカデミー賞の最優秀美術賞にノミネートされる。また、同2作品により第61回毎日映画コンクールの美術賞を受賞した。近作に中田秀夫監督と組んだ『怪談』。三谷幸喜監督の『ザ・マジックアワー』は来年公開される。

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