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原田眞人

2007/12/21

東洋VSハリウッド、刺激し合いながら交流を

 監督、そして俳優として日本だけでなく世界で活躍する原田眞人。間もなく公開される監督作品『魍魎の匣』(12月22日公開)は、自らの発案で中国・上海での撮影を敢行した。それまでにも世界を見てきている彼が、今回の撮影を通して感じる、今のハリウッド、中国、そして日本の映画界とは。


多国籍な“ニューアジアンシネマ”を

 まるでステップを踏むような、リズミカルな映像さばき。原田眞人監督の新作『魍魎の匣』は、「京極夏彦のミステリー小説を豪華キャストで映画化」といった凡庸な先入観をひょいと覆す、伸びやかな映画活力にあふれている。

「昭和27年日本の“元気”というのかな。(主人公が)和服でも、テンポ良くいきたかった。それが粋になってるといいんだけど」

 常に複合的であり、構造的であり、多角的に“観られる”ことを自覚している、ワールドワイドな原田作品。とりわけ今回は上海撮影所での大がかりなシューティングが、ジャンル性や国籍を乗り超えたところでの映画作りの概念を際立たせる。 

「もともと無国籍というより、多国籍ではありたいと思ってるよね。“スーパーナショナル”、つまり様々な国籍の人間が入ってきて、一緒になって仕事をすること。『魍魎の匣』の場合で言えば、“ニューアジアンシネマ”。“ちょっと試しに、昭和の東京を上海で撮ってみない?”と打診したら、(製作サイドが)乗ってきてくれた」

アメリカだけでなくアジアを見て作りたい

 俳優として参加した『SPRIT』で、上海撮影所のレベルの高さを体験していたからこそのアイデア。 

「ここから発展させていきたいという思いはある。アメリカだけじゃなく、アジアのほうを見て映画を作っていきたい。東洋のハリウッドVS本家ハリウッド。ふたつの文化圏で、お互いがお互いを刺激し合いながら、人材交流していければいいよね」

 原田監督は元来、アメリカ映画にこだわりを見せてきた超一流の書き手でもある。現在の状況をどう見ているのか。 

「最近のハリウッド映画は魅力がなくなってきているけど……。ただ、アメリカのいちばんいいところはたえず振り子があっちいったり、こっちいったりしていること。いまは、大作主義に陥って下降線を辿り、後に作家主義のリスキーな企画が浮上してきた1960年代にちょっと似てるかな。アメリカ映画史の中では、70年代前半、“アメリカンニューシネマ”も含むあの活動がいちばん輝いていた時期だと考えている。あの頃、本当に優れた映画作家が出てきた。バックアップするスタジオ側も、クリエイティブなマインドを持っていたよね。いまは弁護士や会計士が仕切る“数字主義”で、映画会社の重役たちから愛は感じられないけど、アジアからの人材に刺激を受けることで、作家主体の映画作りがもう一度復興しそうな気がしている」

日本は力のあるヤツが出てきにくい

 活況が伝えられる日本映画には、さらにシビアな批評を加える。 
「映像トレーニングができていない若手が多いよ。『プライドと偏見』のジョー・ライトとか、韓国のパク・チャヌクのような監督が出てこれない状況が日本にはあるんじゃないか。“(映像作りが)巧すぎる”というネガティブな表現があるでしょう? あれはおかしい。妙にアマチュアを持ち上げる土壌がある。一方で、単に出来の悪い映画を“作家の映画”として讃えちゃったり。本当に力のあるヤツが出てきにくい状況になっている。映像言語を評価する判断基準が狂いつつある……。このままだと、日本人が監督できない“ニューアジアンシネマ”が増えてくるかもしれない」

 そうした危機感もあり、原田監督は“開かれた”映像感覚を持つ新人を起用する試みを今後も探りたいと語る。一方で、“ニューアジアンシネマ”への展望に目を輝かせる。 

「『魍魎の匣』でわかったことは、助監督のように動き回るフットワークの軽い優秀な通訳がいてくれれば、中国でも映画は撮れるということ。中国語映画を撮っても楽しいだろうな」

text by Toji Aida
photographs by Munetaka Harada

Masato Harada 1979年『さらば映画の友よ』で監督デビュー。『栄光と狂気』などの国際合作を手がけ、エドワード・ズウィック監督の『ラスト サムライ』、ビル・コン製作の『SPRIT』には俳優として出演するなど広く国際的に活躍する。監督としての代表作は『金融腐蝕列島・呪縛』『狗神 INUGAMI』『突入せよ!あさま山荘事件』など。ブルーリボン賞、日本アカデミー賞など数々の賞を受賞している。

『魍魎の匣(もうりょうのはこ)」
■出演:堤真一 阿部寛 椎名桔平 宮迫博之 田中麗奈 /黒木瞳
マギー 堀部圭亮 荒川良々 笹野高史 大森博史 大沢樹生 右近健一
寺島咲 谷村美月 清水美砂 篠原涼子 ・ 宮藤官九郎 / 柄本明
■監督・脚本:原田眞人『金融腐蝕列島 呪縛』『突入せよ!「あさま山荘」事件』
■原作:京極夏彦(講談社刊『魍魎の匣』より)
■エンディングテーマ:「金魚の箱」東京事変(EMIミュージック・ジャパン)
■公式HP:http://mouryou.jp
■2007年/日本映画/ヴィスタ1:1.85/カラー/ドルビーデジタル/2時間13分
■製作:『魍魎の匣』製作委員会(エムシーエフ・プランニング2、ジェネオン・エンタテインメト、ショウゲート、朝日放送、バンダイネットワークス、小椋事務所)
■企画・製作プロダクション:フューチャー・プラネット、小椋事務所
■配給:ショウゲート
■12月22日(土)、渋谷東急他全国松竹・東急系にてロードショー
■(c)2007『魍魎の匣』製作委員会


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