
まさにスペシャル・ステージである。カンヌ映画祭側がポン・ジュノ、ミシェル・ゴンドリー、レオス・カラックスの3監督に敬意を表して、コンペティション部門か招待部門にしか許されないレッド・カーペットへの登壇を認めた。そんな名誉ある作品『TOKYO!』に、日本人俳優代表として参加した、 香川照之と藤谷文子。まずは、カンヌの印象から語っていただこう。
藤谷文子(以下藤谷) レッド・カーペットに、足を一歩踏み入れた瞬間、ワ〜ッという感じが全身に襲ってきて。なぜかって、撮影でずっと一緒だったミシェルが私の右にいるのは当たり前なんですけど、左にレオス・カラックスがいて。すごく不思議な感じがしたのと同時に、この企画に参加できた幸せを実感できました。
香川照之(以下香川) 僕は、2年前に『ゆれる』が監督週間に出品された時には、どうしても仕事で来られなかったんです。でも『ゆれる』をポン・ジュノ監督が観て、今回のキャスティングが決まって……。西川美和監督が繋いでくれた縁をしみじみと実感しています。2本分の喜びを感じています。
香川照之(以下香川) 僕は、2年前に『ゆれる』が監督週間に出品された時には、どうしても仕事で来られなかったんです。でも『ゆれる』をポン・ジュノ監督が観て、今回のキャスティングが決まって……。西川美和監督が繋いでくれた縁をしみじみと実感しています。2本分の喜びを感じています。
鬼才が捉えた、日本的な感覚
地震と気持ちの「揺れ」、ふたつの意味が込められた、ジュノ監督の『シェイキング東京』で、香川は恋をして変化していく引きこもりの男を演じた。一方の藤谷は、ゴンドリー監督の『インテリア・デザイン』で、東京暮らしで孤独を抱える女性を演じている。
藤谷 原作はニューヨークが舞台だったのですが、今回の企画が動き始めた時、ミシェルが舞台を東京に置き換えたんです。結果、それがプラスに働いたような気がします。ニューヨークは自我がどんなに強くてもいい街ですが、東京は自我があれば孤立するし、なければ寂しくなってしまうし……。私が演じた女性は、恋人とともに上京したものの、自分自身の所在なさから、肋骨の一部が木になり、やがて椅子になるという体の異変が起こる役どころなんです。江戸川乱歩の「人間椅子」じゃないけれど、椅子になる感覚って非常に日本人的な感覚だと思います。
香川 僕ね、大森南朋が椅子を拭いているシーンが好きだった!
藤谷 ちょっとエロいんですよね。ミシェルがあのシーンを撮り終わったあと「すっごくエロく拭いてたよ!」って言いに来たとき、私、顔がぶわって赤くなっちゃって。ミシェルに面白がられてしまいました。
香川 フランス人にはない感覚だったんだよ、たぶん(笑)。『シェイキング東京』のスキンシップでの終わり方も、アジアという、非常に小さな空気から生まれた感覚がありますよね。人に触れるか触れないかの距離感って、常に頬と頬でキスをして挨拶をしている欧米人にはない感覚じゃないかって。
藤谷 原作はニューヨークが舞台だったのですが、今回の企画が動き始めた時、ミシェルが舞台を東京に置き換えたんです。結果、それがプラスに働いたような気がします。ニューヨークは自我がどんなに強くてもいい街ですが、東京は自我があれば孤立するし、なければ寂しくなってしまうし……。私が演じた女性は、恋人とともに上京したものの、自分自身の所在なさから、肋骨の一部が木になり、やがて椅子になるという体の異変が起こる役どころなんです。江戸川乱歩の「人間椅子」じゃないけれど、椅子になる感覚って非常に日本人的な感覚だと思います。
香川 僕ね、大森南朋が椅子を拭いているシーンが好きだった!
藤谷 ちょっとエロいんですよね。ミシェルがあのシーンを撮り終わったあと「すっごくエロく拭いてたよ!」って言いに来たとき、私、顔がぶわって赤くなっちゃって。ミシェルに面白がられてしまいました。
香川 フランス人にはない感覚だったんだよ、たぶん(笑)。『シェイキング東京』のスキンシップでの終わり方も、アジアという、非常に小さな空気から生まれた感覚がありますよね。人に触れるか触れないかの距離感って、常に頬と頬でキスをして挨拶をしている欧米人にはない感覚じゃないかって。
人生への愛情という共通項
なるほど“鬼才”と言われる監督たちは、言葉も文化も違えど、それぞれが日本独自の感覚を的確に捉えている。もうひとつの共通点は、“今”という時代性だ。
香川 その共通性って、映画というものがなぜこの世にあるか、という答えのような気がします。正直、3人があまりに鬼才過ぎて、3本があらぬ方向へ飛び散ってしまっているのではないかという不安を感じながら、完成作を観たのですが、観終わった後、3本とも全然違うテーマなのに、同じメッセージを持ち、どこかで繋がっている。1本の映画を観終わったような幸福感をさすがだなぁと思いました。映画ってやっぱり、観てくださった人に「明日から生きていこう!」って思わせるものでなければいけないと思うんですね。3人の監督は、いい方向に自分の人生を持っていきたいという意識が根底にあって、そういう思いがひとつの映画として集結している。人生への愛情のようなものが、センスよく伝わってきました。そこも含めて、映画人として尊敬できるというのか。
藤谷 すごく嬉しかったのは、ミシェルが本気で「今まで自分がやってきた仕事のなかで、いちばん好きな作品ができた」と言ってくれたことです。日本が大好きになって、幸せになって帰ってくれたと思うんですが、どうですか? 香川さん(笑)。
香川 うん、僕もポン・ジュノとはやっと恋人に出会えたような感覚で、お互いに相思相愛の状態で撮影ができたと思います。時々ソン・ガンホを交えて、三角関係になったりもしましたけど(笑)。最高の三角関係ですよ。そしてまた今回のカンヌに、図らずも3人がいるということにも、ものすごい運命を感じますね。
香川 その共通性って、映画というものがなぜこの世にあるか、という答えのような気がします。正直、3人があまりに鬼才過ぎて、3本があらぬ方向へ飛び散ってしまっているのではないかという不安を感じながら、完成作を観たのですが、観終わった後、3本とも全然違うテーマなのに、同じメッセージを持ち、どこかで繋がっている。1本の映画を観終わったような幸福感をさすがだなぁと思いました。映画ってやっぱり、観てくださった人に「明日から生きていこう!」って思わせるものでなければいけないと思うんですね。3人の監督は、いい方向に自分の人生を持っていきたいという意識が根底にあって、そういう思いがひとつの映画として集結している。人生への愛情のようなものが、センスよく伝わってきました。そこも含めて、映画人として尊敬できるというのか。
藤谷 すごく嬉しかったのは、ミシェルが本気で「今まで自分がやってきた仕事のなかで、いちばん好きな作品ができた」と言ってくれたことです。日本が大好きになって、幸せになって帰ってくれたと思うんですが、どうですか? 香川さん(笑)。
香川 うん、僕もポン・ジュノとはやっと恋人に出会えたような感覚で、お互いに相思相愛の状態で撮影ができたと思います。時々ソン・ガンホを交えて、三角関係になったりもしましたけど(笑)。最高の三角関係ですよ。そしてまた今回のカンヌに、図らずも3人がいるということにも、ものすごい運命を感じますね。
オムニバス映画の在り方を変える
この運命的な映画との出会いに、幸せを堪能しているふたり。何だか映画っていいなぁと思えてくる。
香川 打ち合わせもせずに、奇跡的に1本の長編のように繋がって見えた嬉しさったら! この映画がオムニバス映画の在り方を変えるかも知れない。
藤谷 海外に出ることを目的にするのは違うと思いますが、世界が広がるって絶対にいいことですから! 日本でしか映画が撮れないなんて寂しい話ですし、今回、香川さんみたいにフランス語を勉強したいなと強く思いましたし。新しい作品に出会えるという意味では、どんどん広がっていきたいなと思います。
香川 同感! でもいいものは、ひとつなんですね。本当にそれは確認できました。言葉は違っても、OKはOKなんです。本質は同じ。そんなことを日本にいるときよりも感じられるなんて、嬉しいですよね。あったかくなります。
香川 打ち合わせもせずに、奇跡的に1本の長編のように繋がって見えた嬉しさったら! この映画がオムニバス映画の在り方を変えるかも知れない。
藤谷 海外に出ることを目的にするのは違うと思いますが、世界が広がるって絶対にいいことですから! 日本でしか映画が撮れないなんて寂しい話ですし、今回、香川さんみたいにフランス語を勉強したいなと強く思いましたし。新しい作品に出会えるという意味では、どんどん広がっていきたいなと思います。
香川 同感! でもいいものは、ひとつなんですね。本当にそれは確認できました。言葉は違っても、OKはOKなんです。本質は同じ。そんなことを日本にいるときよりも感じられるなんて、嬉しいですよね。あったかくなります。

藤谷文子と香川照之
(c)Kazuko Wakayama
(c)Kazuko Wakayama
香川照之 TERUYUKI KAGAWA 1965年12月7日生まれ、東京都出身。89年にNHK大河ドラマ「春日局」でデビュー以降、映画、テレビ、舞台など数多くの作品に出演する。主な出演作に、『刑務所の中』、『鬼が来た!』、『美しい夏キリシマ』、『北の零年』、『キサラギ』、『スキヤキ・ウェスタン ジャンゴ』、『14歳』など。 『20世紀少年』、『ヤーチャイカ』、『劔岳 点の記』など話題作の公開が控える。
藤谷文子 AYAKO FUJITANI 1979年12月7日生まれ、大阪府出身。13歳で『ガメラ・大怪獣空中決戦』のヒロイン役でデビュー。ロサンゼルス留学後、女優業を再開。アメリカ滞在中に執筆した小説「逃避夢」が『式日』として映画化され、主演を務める。その後もフランス映画『サンサーラ』などに出演するなど、国際的に活躍する。 現在『ドモ又の死』が公開待機中。
『TOKYO!』
●晩夏、日本公開開始 ●配給:ビターズ・エンド
http://www.tokyo-movie.jp/
藤谷文子 AYAKO FUJITANI 1979年12月7日生まれ、大阪府出身。13歳で『ガメラ・大怪獣空中決戦』のヒロイン役でデビュー。ロサンゼルス留学後、女優業を再開。アメリカ滞在中に執筆した小説「逃避夢」が『式日』として映画化され、主演を務める。その後もフランス映画『サンサーラ』などに出演するなど、国際的に活躍する。 現在『ドモ又の死』が公開待機中。
『TOKYO!』
●晩夏、日本公開開始 ●配給:ビターズ・エンド
http://www.tokyo-movie.jp/





































