
撮影後、1年ぶりの再会
橋口亮輔 監督が6年ぶりに発表した映画『 ぐるりのこと。』で、主人公の一組の夫婦を演じた、木村多江& リリー・フランキー 。映画の撮影後、実に1年ぶりの再会となった本対談! 取材中、リリーが映画のポスターを見て「オレ、このシーンの撮影の時、ちょっと涙が出たんですよね……」と呟けば、「ね、ちょっと泣いてましたよね」と木村の微笑み返し。まるで長年連れ添ったおしどり夫婦のよう!!
リリー・フランキー(以下リリー) 僕らは結婚式を挙げてない夫婦で、この(撮影の)時は、翔子(木村の役名)がぼんやり他人の結婚式を見ていて。じゃあ金屏風の前で写真だけ撮ってもらおうって。映画の中にそのやり取りはないんだけど、なんかすごく不憫な思いをさせてきたんだなぁって、ホントすまなかったという気分になったんですよ、オレ。そして木村さんのあの手の形とか、完全に撮られ慣れてない感じだし(笑)。
リリー・フランキー(以下リリー) 僕らは結婚式を挙げてない夫婦で、この(撮影の)時は、翔子(木村の役名)がぼんやり他人の結婚式を見ていて。じゃあ金屏風の前で写真だけ撮ってもらおうって。映画の中にそのやり取りはないんだけど、なんかすごく不憫な思いをさせてきたんだなぁって、ホントすまなかったという気分になったんですよ、オレ。そして木村さんのあの手の形とか、完全に撮られ慣れてない感じだし(笑)。
絶対に別れない夫婦、それぞれの魅力
映画は、1993年冬から約10年間の翔子とカナオの夫婦の姿を見守る。橋口監督の「人はどうすれば希望を持てるのか?」という想いから生まれた、絶対に別れない=ずっとつながっている夫婦、を演じたお2人。
リリー 翔子は几帳面過ぎて不器用で、脆い人だけど、ことカナオのことに関しては、周りの人の言うことなんて意に介していない。『あんなのやめなよ』とか、いろんな噂や抑圧に負けてないところがすごく強いと思う。そういう女の人として信用できるところを持っているから、カナオも幸せなんですよね。
木村多江(以下木村) そうですね。カナオも揺るがないというのか、ふらふら外に行ってしまうけど、絶対ここに戻ってくる。何も言わなくても、つながっていることを感じさせてくれる人です。どんなことがあっても受け止めて、手を離さないでいてくれると感じさせてくれる人だから、翔子も自分をさらけ出すことができたのだろうし。カナオの強さなんでしょうね。一見、飄々として頼りないところもあるんだけど、実は強い男の人なんだなって私は思っていました。たぶんそこは、リリーさんご本人と重なる部分かも知れません。
リリー いやいや、カナオよりも僕は女々しいと思いますよ(笑)。
リリー 翔子は几帳面過ぎて不器用で、脆い人だけど、ことカナオのことに関しては、周りの人の言うことなんて意に介していない。『あんなのやめなよ』とか、いろんな噂や抑圧に負けてないところがすごく強いと思う。そういう女の人として信用できるところを持っているから、カナオも幸せなんですよね。
木村多江(以下木村) そうですね。カナオも揺るがないというのか、ふらふら外に行ってしまうけど、絶対ここに戻ってくる。何も言わなくても、つながっていることを感じさせてくれる人です。どんなことがあっても受け止めて、手を離さないでいてくれると感じさせてくれる人だから、翔子も自分をさらけ出すことができたのだろうし。カナオの強さなんでしょうね。一見、飄々として頼りないところもあるんだけど、実は強い男の人なんだなって私は思っていました。たぶんそこは、リリーさんご本人と重なる部分かも知れません。
リリー いやいや、カナオよりも僕は女々しいと思いますよ(笑)。
橋口監督の清潔さと美しさ

(c)2008「ぐるりのこと。」プロデューサーズ
子どもを身籠った幸せ、突然2人を襲う悲劇。大きな哀しみから、次第に精神の均衡を崩し、心を病んでいく翔子。そんな翔子のそばにずっといるカナオ。2人の迷走と模索の日々、そして再生のドラマが描かれていく。
リリー もっとぼんやりした監督なら、翔子が他の男の人に頼るシーンとかを一枚くらい挿みそうなものですが、橋口監督はそういうのは一切見せないんですよね。カナオは靴の修理工から法廷画家に転職しますけど、翔子には一度も裁判の話をしなかったし。通俗的な監督なら、おかしくなった翔子が犯罪を犯して、カナオが法廷に立つ翔子の姿を描くみたいな最悪のパターンだってあり得るわけですから(笑)。でも全然なかった。
だから本当にいろいろある夫婦なんだけど、すごく清潔な感じがする。どんな人の中にいても、全然まみれてない美しさがあって。2人で立ち食い蕎麦とか食ってるシーンとか、まさに理想の夫婦ですよね。こんなカップルになりたいと思いました。
木村 日常の、なんでもないワンシーンを、とても幸せに思えるってすごいことですよね。翔子が絵を描いていて、カナオが洗濯物を干しているシーンや、ベランダで2人でトマトを食べているシーンも、なんかいいなぁって(笑)。それはたぶん、2人がつながっているからだと思います。ちゃんと2人の世界があることが、どこにいてもはっきり(映画に)写っているからなんだろうなって。
実は、幸せってたくさん転がっているはずなのに、自分の中で幸せのハードルを高く上げ過ぎてしまって、そういうことに気づけなくなっているのかもと、この作品を経て思うようになりました。この映画を観て下さった方が、そういう幸せを日常の中で見つけて下さって、明日ももうちょっと頑張ろうかなって思って下さったらいいなってすごく思います。
リリー 好きな人と一緒にいて、嬉しさと幸せが一緒になってうわ~っとなる感じって、最近はなかなかないんですけど、中華食って、一緒に帰るだけのシーンの撮影の時にはありましたからね。あ〜幸せだって(笑)。やっぱり社会が歪んでも、恋愛観が変わっても、人間が幸せになるって、こういうことでしかないんだなってすごく感じました。
リリー もっとぼんやりした監督なら、翔子が他の男の人に頼るシーンとかを一枚くらい挿みそうなものですが、橋口監督はそういうのは一切見せないんですよね。カナオは靴の修理工から法廷画家に転職しますけど、翔子には一度も裁判の話をしなかったし。通俗的な監督なら、おかしくなった翔子が犯罪を犯して、カナオが法廷に立つ翔子の姿を描くみたいな最悪のパターンだってあり得るわけですから(笑)。でも全然なかった。
だから本当にいろいろある夫婦なんだけど、すごく清潔な感じがする。どんな人の中にいても、全然まみれてない美しさがあって。2人で立ち食い蕎麦とか食ってるシーンとか、まさに理想の夫婦ですよね。こんなカップルになりたいと思いました。
木村 日常の、なんでもないワンシーンを、とても幸せに思えるってすごいことですよね。翔子が絵を描いていて、カナオが洗濯物を干しているシーンや、ベランダで2人でトマトを食べているシーンも、なんかいいなぁって(笑)。それはたぶん、2人がつながっているからだと思います。ちゃんと2人の世界があることが、どこにいてもはっきり(映画に)写っているからなんだろうなって。
実は、幸せってたくさん転がっているはずなのに、自分の中で幸せのハードルを高く上げ過ぎてしまって、そういうことに気づけなくなっているのかもと、この作品を経て思うようになりました。この映画を観て下さった方が、そういう幸せを日常の中で見つけて下さって、明日ももうちょっと頑張ろうかなって思って下さったらいいなってすごく思います。
リリー 好きな人と一緒にいて、嬉しさと幸せが一緒になってうわ~っとなる感じって、最近はなかなかないんですけど、中華食って、一緒に帰るだけのシーンの撮影の時にはありましたからね。あ〜幸せだって(笑)。やっぱり社会が歪んでも、恋愛観が変わっても、人間が幸せになるって、こういうことでしかないんだなってすごく感じました。
ひとりでは味わえない、幸せ
人とつながることの幸せ。これはひとりでは味わえないものだ。
リリー やっぱり「面倒臭いことはもういいや、何でもひとりでできちゃうし」っていう人より、みっともなくても、幸せを目指してもがいている人の方が魅力的ですよ。ひとりで何でもできるっていうのは、生きることに対してできるってだけで。結局それだけに執着していると、恋愛をしても自分の許容範囲内の恋愛しかできなくなるから。それって生き方が上手というわけでも、幸せでも豊かでもない。女の人も大人になってくると、いろいろ詭弁を使うようになるけれど、ずっと女の子な気持ちは変わっちゃダメだし、愚直に生きて、じたばたしてる人の方がオレは好きですね。今日も久しぶりに木村さんに会って、ものすごくきれいじゃないですか(テレ笑い)。でも映画の中の翔子は涙でぐしょぐしょだったり、どんよりしていたり、ちっともかわいくない。でも一瞬、実に美しい顔をしている。その人間臭さが愛おしいんですよね。……この夫婦が特別に見えるって、皮肉なことだと思う。当たり前のことをしているだけの、ありきたりな夫婦ですから。
故・淀川長治先生が「映画をたくさん観なさい」っておっしゃってましたけど、それは1本の映画を繰り返し何度も観なさいということ。年代によって、どんどん映画の良さは変わっていくものだから。昔はあんまりわからなかったことが、年を重ねてわかることもある。そんな映画の見方をしなさいって。人も同じですよね。簡単に別れるんじゃなくて、延々同じ人と一緒にいる方がどれだけ豊かなことか。
自分の周りのこと、自分を取り巻くさまざまな環境のこと……自分の人生と重ね合わせてしまう映画『ぐるりのこと。』。観終わった後、映画は、あるいは本対談のお2人の言葉は、あなたの心の中で、ぐるぐると動き始めることだろう。
リリー やっぱり「面倒臭いことはもういいや、何でもひとりでできちゃうし」っていう人より、みっともなくても、幸せを目指してもがいている人の方が魅力的ですよ。ひとりで何でもできるっていうのは、生きることに対してできるってだけで。結局それだけに執着していると、恋愛をしても自分の許容範囲内の恋愛しかできなくなるから。それって生き方が上手というわけでも、幸せでも豊かでもない。女の人も大人になってくると、いろいろ詭弁を使うようになるけれど、ずっと女の子な気持ちは変わっちゃダメだし、愚直に生きて、じたばたしてる人の方がオレは好きですね。今日も久しぶりに木村さんに会って、ものすごくきれいじゃないですか(テレ笑い)。でも映画の中の翔子は涙でぐしょぐしょだったり、どんよりしていたり、ちっともかわいくない。でも一瞬、実に美しい顔をしている。その人間臭さが愛おしいんですよね。……この夫婦が特別に見えるって、皮肉なことだと思う。当たり前のことをしているだけの、ありきたりな夫婦ですから。
故・淀川長治先生が「映画をたくさん観なさい」っておっしゃってましたけど、それは1本の映画を繰り返し何度も観なさいということ。年代によって、どんどん映画の良さは変わっていくものだから。昔はあんまりわからなかったことが、年を重ねてわかることもある。そんな映画の見方をしなさいって。人も同じですよね。簡単に別れるんじゃなくて、延々同じ人と一緒にいる方がどれだけ豊かなことか。
自分の周りのこと、自分を取り巻くさまざまな環境のこと……自分の人生と重ね合わせてしまう映画『ぐるりのこと。』。観終わった後、映画は、あるいは本対談のお2人の言葉は、あなたの心の中で、ぐるぐると動き始めることだろう。
木村多江
1971年生まれ、東京都出身。舞台女優としてデビュー後、『MOROCCO』で映画デビュー。主な映画出演作に『花とアリス』『笑の大学』『スター・フィッシュ・ ホテル』『怪談』などがある。TVドラマでも「スーパー時代劇 大奥」(CX系)、「てるてるあした」(CX系)、「家族〜妻の不在・夫の存在」(EX系)など多数活躍している。
リリー・フランキー
1963年、福岡県生まれ。イラスト、文筆業、写真、デザイン、音楽活動、構成・演出など、多彩な活動を見せる。4月にはボーカル&ギターを務めるバンド、TOKYO MOOD PUNKSでシングル「ジェイミー」をリリースするなど多彩な顔を持つ。本作は、故・ 石井輝男 監督の『 盲獣VS一寸法師 』以来の主演映画となる。
『ぐるりのこと。』
● 2008年/カラー/ビスタ/ドルビーデジタル/2008年6月7日からシネマライズ、シネスイッチ銀座にて日本公開
● 配給:ビターズ・エンド
http://www.gururinokoto.jp/
1971年生まれ、東京都出身。舞台女優としてデビュー後、『MOROCCO』で映画デビュー。主な映画出演作に『花とアリス』『笑の大学』『スター・フィッシュ・ ホテル』『怪談』などがある。TVドラマでも「スーパー時代劇 大奥」(CX系)、「てるてるあした」(CX系)、「家族〜妻の不在・夫の存在」(EX系)など多数活躍している。
リリー・フランキー
1963年、福岡県生まれ。イラスト、文筆業、写真、デザイン、音楽活動、構成・演出など、多彩な活動を見せる。4月にはボーカル&ギターを務めるバンド、TOKYO MOOD PUNKSでシングル「ジェイミー」をリリースするなど多彩な顔を持つ。本作は、故・ 石井輝男 監督の『 盲獣VS一寸法師 』以来の主演映画となる。
『ぐるりのこと。』
● 2008年/カラー/ビスタ/ドルビーデジタル/2008年6月7日からシネマライズ、シネスイッチ銀座にて日本公開
● 配給:ビターズ・エンド
http://www.gururinokoto.jp/
photographs by Nobuyuki Kobayashi,text by Kana Ishimura(variety japan)
































