
エキゾチックな色気を放つ、タイの映画スター
物憂げな瞳が印象的な、黒髪なびかせ半裸で踊るひとりの男——。誰? この美形はいったい誰……!? タイ映画『ミー・マイセルフ 私の彼の秘密』の予告編。この数分間の映像だけで、彼が放つエキゾチックな色気のインパクトに完落ちした者も多かったと聞く。
アナンダ・エヴァリンハム、26歳。現在、タイで最も旬&セクシーとされる映画スターである。そればかりか、主演したタイ映画『心霊写真』のアジア的大ヒットをきっかけに、主に東南アジアを中心とした各国からも映画出演のオファーが絶えないという。 07年の釜山映画祭では、藤原竜也らと共に、アジア各国のスター俳優を全世界の映画関係者に紹介する「スター サミット アジア カーテンコール」に招待されてもいる。このようにアジア全土で注目される中、日本では『心霊写真』(日本公開は06年)ですでに着目していた目利きもいたとはいえ、本格的な紹介は遅れた格好となっていた。これほどのイケメンに今まで気づかなかったとは……。そんな申し訳ない気持ちを胸に来日中のアナンダの取材に赴くと、彼は思いもよらない“夢”を語ってくれたのだった。
「僕は演じることも映画も大好きですが、それによって有名になることに対して恐怖心のようなものがある。皆に僕とは知られずひっそりと演技をし続ける。これが僕の夢です」
即座に「そんな尋常ではないイケメンで、それは無理な相談ですね」と返してしまったものの、謙虚さを装ったわけでも受けを狙ったのでもなさそうな真摯な瞳に、またもや申し訳ない気持ちになる。
「タイでは人気が出ると海外進出する俳優も多いのですが、自分を海外市場に積極的にプロモートしようという気持ちは僕にはない。もちろん海外は意識していますが、それはあくまでもタイ映画自体を世界に広めたいという考えからです」
アナンダ・エヴァリンハム、26歳。現在、タイで最も旬&セクシーとされる映画スターである。そればかりか、主演したタイ映画『心霊写真』のアジア的大ヒットをきっかけに、主に東南アジアを中心とした各国からも映画出演のオファーが絶えないという。 07年の釜山映画祭では、藤原竜也らと共に、アジア各国のスター俳優を全世界の映画関係者に紹介する「スター サミット アジア カーテンコール」に招待されてもいる。このようにアジア全土で注目される中、日本では『心霊写真』(日本公開は06年)ですでに着目していた目利きもいたとはいえ、本格的な紹介は遅れた格好となっていた。これほどのイケメンに今まで気づかなかったとは……。そんな申し訳ない気持ちを胸に来日中のアナンダの取材に赴くと、彼は思いもよらない“夢”を語ってくれたのだった。
「僕は演じることも映画も大好きですが、それによって有名になることに対して恐怖心のようなものがある。皆に僕とは知られずひっそりと演技をし続ける。これが僕の夢です」
即座に「そんな尋常ではないイケメンで、それは無理な相談ですね」と返してしまったものの、謙虚さを装ったわけでも受けを狙ったのでもなさそうな真摯な瞳に、またもや申し訳ない気持ちになる。
「タイでは人気が出ると海外進出する俳優も多いのですが、自分を海外市場に積極的にプロモートしようという気持ちは僕にはない。もちろん海外は意識していますが、それはあくまでもタイ映画自体を世界に広めたいという考えからです」
タイ映画を世界に広めるために!
今回の来日も、その一貫。“次はタイ式だ!”との掛け声のもとに開催された「タイ式シネマ★パラダイス2008」。この“タイ映画祭”ともいえるイベントのゲストとして、現代タイ映画の魅力を伝えるために来日したのだとアナンダは言う。すでに開催中の本イベントでは、アナンダ主演作『ミー・マイセルフ』を含む近年の話題作8作に加え、世界的な注目を集める鬼才アピチャッポン・ウィーラセタクン監督5作など、バラエティに富んだタイ映画の上映が7月11日まで日替わりで続く。
「近年、タイ映画の質はどんどんあがり、海外でも注目してくださる国も増えたので、この勢いのまま日本、中国、韓国と、タイ映画の魅力をさらに広めていきたい。将来的には他国とのコラボレート映画なども増えていけば嬉しいです」
ただ、こうした動きは、00年代初頭、香港の映画監督ピーター・チャンが“汎アジア映画のための組織化”を目指して設立したプロダクションで、すでに試みられたことだった。例えば韓国・タイ・香港共同企画のオムニバス『THREE/臨死』、ノンスィー・ニミブット監督『ジャンダラ』、現在ハリウッドに渡ったオキサイド&ダニー・パン兄弟による『The Eyes』の製作などがあげられ、実際、これらによってタイ映画の知名度があがったことは確か。だが、アナンダの分析によれば——
「その当時、アジアのマーケットは今ほどダイナミックにクロスしてはいなかったですよね。確かにピーター・チャンの試みは重要で、タイ映画の質の向上にも繋がりましたが、それを今こそやるべきだと思うんです。また、当時ピーターがプロデュースした『ジャンダラ』などでは、タイならではの文化面を全面に押し出していましたが、今必要なのはユニバーサル・コンセプトに基づいたテーマ。今回の『ミー・マイセルフ~』でも、そのあたりのテーマ性についてはかなり監督とも話し合いましたね」
「近年、タイ映画の質はどんどんあがり、海外でも注目してくださる国も増えたので、この勢いのまま日本、中国、韓国と、タイ映画の魅力をさらに広めていきたい。将来的には他国とのコラボレート映画なども増えていけば嬉しいです」
ただ、こうした動きは、00年代初頭、香港の映画監督ピーター・チャンが“汎アジア映画のための組織化”を目指して設立したプロダクションで、すでに試みられたことだった。例えば韓国・タイ・香港共同企画のオムニバス『THREE/臨死』、ノンスィー・ニミブット監督『ジャンダラ』、現在ハリウッドに渡ったオキサイド&ダニー・パン兄弟による『The Eyes』の製作などがあげられ、実際、これらによってタイ映画の知名度があがったことは確か。だが、アナンダの分析によれば——
「その当時、アジアのマーケットは今ほどダイナミックにクロスしてはいなかったですよね。確かにピーター・チャンの試みは重要で、タイ映画の質の向上にも繋がりましたが、それを今こそやるべきだと思うんです。また、当時ピーターがプロデュースした『ジャンダラ』などでは、タイならではの文化面を全面に押し出していましたが、今必要なのはユニバーサル・コンセプトに基づいたテーマ。今回の『ミー・マイセルフ~』でも、そのあたりのテーマ性についてはかなり監督とも話し合いましたね」
ゲイの男性役で、愛の自由を説く
冒頭で触れた、『ミー・マイセルフ~』劇中でアナンダが艶めかしく踊る映像は、実はキャバレーでのゲイのステージを映した1シーン。つまりアナンダはゲイの男性を演じたのだが、そんな彼を愛してしまった女性との甘く切ないラブストーリーの中に潜む“ユニバーサル・コンセプト”をこそ、アナンダは重視したのだという。
「“愛はセクシャリティも含めた様々な問題を越えて自由であるべき”というテーマは、どんな国の人にも訴えかけられる普遍的なものですからね。ただ、従来のタイ映画の中でゲイやオカマは常にコメディ要員なので、ところどころで悲哀も漂うゲイを描いたこの作品に、タイでは『ゲイ映画なのに笑えない』という批判(!)もありました(笑)。タイは“ゲイ大国”と言われていますが、等身大のゲイを描いたものは、アピチャッポン監督のアートフィルム的なものはあっても、一般に広く公開されたものとしてはおそらくこれが初めてだと思いますから」
こうしたチャレンジングな企画の中で会得した、実際のゲイの方々直伝の“変身技術”についても、身振り手振りを交え、快活に、チャーミングに披露してくれたアナンダ。そんな様子からは年相応の青年の顔も垣間見え、そうだよね、タイ映画界全体の発展について真摯に考える彼も、まだまだ若いんだよねと思う。だからこそ、最後に聞いた「実はプロデューサーとしても、すでに1本撮ったんです(現在タイで公開中)」という話には、さすがに驚きを隠せなかった。
「自分が積極的に進めたいと思う企画では、今後もプロデューサーとして関わりたい。例えば日本とタイのコラボ企画は、やってみたいことのひとつですね。その際、監督は、是非とも黒澤明監督にお願いしたいところですが、それは叶わない夢なので、例えば『羅生門』の現代版リメイクなんかはどうでしょう? これもユニバーサルなコンセプトを持ついい作品になると思いますよ」
と、できれば有名になりたくないもののどうしたってスター・オーラが漂ってしまうそのイケメン顔に、さらにプロデューサーの顔までをも覗かせたアナンダであった。
「“愛はセクシャリティも含めた様々な問題を越えて自由であるべき”というテーマは、どんな国の人にも訴えかけられる普遍的なものですからね。ただ、従来のタイ映画の中でゲイやオカマは常にコメディ要員なので、ところどころで悲哀も漂うゲイを描いたこの作品に、タイでは『ゲイ映画なのに笑えない』という批判(!)もありました(笑)。タイは“ゲイ大国”と言われていますが、等身大のゲイを描いたものは、アピチャッポン監督のアートフィルム的なものはあっても、一般に広く公開されたものとしてはおそらくこれが初めてだと思いますから」
こうしたチャレンジングな企画の中で会得した、実際のゲイの方々直伝の“変身技術”についても、身振り手振りを交え、快活に、チャーミングに披露してくれたアナンダ。そんな様子からは年相応の青年の顔も垣間見え、そうだよね、タイ映画界全体の発展について真摯に考える彼も、まだまだ若いんだよねと思う。だからこそ、最後に聞いた「実はプロデューサーとしても、すでに1本撮ったんです(現在タイで公開中)」という話には、さすがに驚きを隠せなかった。
「自分が積極的に進めたいと思う企画では、今後もプロデューサーとして関わりたい。例えば日本とタイのコラボ企画は、やってみたいことのひとつですね。その際、監督は、是非とも黒澤明監督にお願いしたいところですが、それは叶わない夢なので、例えば『羅生門』の現代版リメイクなんかはどうでしょう? これもユニバーサルなコンセプトを持ついい作品になると思いますよ」
と、できれば有名になりたくないもののどうしたってスター・オーラが漂ってしまうそのイケメン顔に、さらにプロデューサーの顔までをも覗かせたアナンダであった。
アナンダ・エヴァリンハム
1982年生まれ。14歳で芸能界入りし、初主演映画では、『ミー・マイセルフ~私の彼の秘密~』のポンパット監督と父子役で共演した。以後、アジア中で大ヒットした『心霊写真』で大ブレイク。タイだけでなく、シンガポールも含めて20本近い映画に出演している。
『ミー・マイセルフ~私の彼の秘密~』
●英題:Me Myself/2007年/タイ/カラー/117分/6月25~27日、7月5、6、7日にシネマート六本木で上映予定
●配給:エスピーオー
公式HP→http://www.cinemart.co.jp/thaishiki/
1982年生まれ。14歳で芸能界入りし、初主演映画では、『ミー・マイセルフ~私の彼の秘密~』のポンパット監督と父子役で共演した。以後、アジア中で大ヒットした『心霊写真』で大ブレイク。タイだけでなく、シンガポールも含めて20本近い映画に出演している。
『ミー・マイセルフ~私の彼の秘密~』
●英題:Me Myself/2007年/タイ/カラー/117分/6月25~27日、7月5、6、7日にシネマート六本木で上映予定
●配給:エスピーオー
公式HP→http://www.cinemart.co.jp/thaishiki/
photographs by Tomoko Tominaga, text by Izumi Tsukada







































