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映画『人のセックスを笑うな』監督・井口奈己
恋する“人間”の愚かさにエール

2008/01/22
 性格は真逆。でも男の好みは同じな女の子たちが、ひょんなことから同居生活をおくる自主映画『犬猫』(01)で、PFFアワードを受賞。その後、それを商業映画『犬猫』(04)としてリメイクし、デビューを飾った井口奈己監督。リアルな女の子の息づかいを描かせたら、右に出るものはいない。井口監督の新作『人のセックスを笑うな』は、恋に舞い上がる大学生と、年上の女性の“恋”の刹那の物語。どんな週刊誌にも書かれていない、女性の“紛れもない”本音が散りばめられている。

いつも考えるのはどうしたら映画が面白くなるか

『人のセックスを笑うな』click1
『人のセックスを笑うな』click1
 原作は山崎ナオコーラ、共同脚本は本調有香。前作『犬猫』と違い、100パーセント、自分で作り上げた世界ではない。井口作品を支えてきたスタッフからは「これがデビュー作だから」と言われた。そんななかで、どのように違和感なく、思い描く世界を組み立てていったのか。

井口 自分で脚本を書いた『犬猫』の時も、特にこれを言いたいというのはなかったんですけど、面白くするにはどうしたらいいだろうとはいつも考えます。今回、脚本家に本調有香さんが入ってくれて、本調さんが考えてくれたストーリー・ラインに、エピソードを配置して、それをパズルみたいに組み立てて、誰かの気持ちを乗せていく。そんな感じで脚本を作りました。本調さんは、自分なら興味を持たないところを面白がってくれて、アイデアを出してくれるのがすごく面白かったです。たとえば、ユリ(永作博美)のキャラクター。行為だけ見たら女の敵になりかねないユリをチャーミングにする方法とか。本調さん自身、チャーミングな人なので、きっと大丈夫だと思ってたんですけどね。

 ユリに井口監督を重ねて観る方もいるのでは? と問うと、「えんちゃん(蒼井優)のほうが私っぽいって言われます。でもそんなことない」と井口監督。「あんなにかわいらしくないっていうか(笑)」と笑う姿はキュート。脚本作りは、プロットが最後までできたら、自分が共感できるポイントをどんどん入れていくのだそう。

排除したいマッチョなメッセージ

『人のセックスを笑うな』click2
『人のセックスを笑うな』click2
井口 初めは面白いかどうかで作っていきます。その時、絶対やりたくないのは、マッチョなメッセージ性を入れること。それを排除したい。

 マッチョなメッセージとは?

井口 最近、映画の中で下着姿の女性が素敵だと思うことがないんですよ。なんか、男性が観てちょうどいいものを着せられてるみたいな感じで。だから、ユリの衣装は、それとは違う、生活感はあるけどダサくない、ちょっとかわいくておしゃれな感じのものをスタッフに選んでもらいました。この映画を観てあんまり……って言う人は、きっとマッチョな人のような気がします(笑)。

 マッチョ識別リトマス試験紙。

男性より大変な人生を生きてる女性へ

『人のセックスを笑うな』click3
『人のセックスを笑うな』click3
井口 男性ですごくいいって言ってくれる人は、むしろ女性像としてリアルだと言ってくれるので、女はこうだと思ってる人にはダメなのかも。
 いま20代~30代の女性って、ものすごく大変な人生を生きているんじゃないかって思うんですよ。仕事もしなきゃいけないし、結婚もしなきゃいけない。しかもこぎれいじゃなきゃいけない。なんか制約も男性より多いような気がするので、もっとがんばりなさい、と言わない映画にしたいと思ったんです。

 そういう、女性へのエールがスクリーンのそこここから伝わってくる。男性目線の映画は山ほどあるけど、女性目線の映画はほとんどない。

井口 えんちゃんは、“常識”とか“普通”にとらわれた女の子——、まあ若いからなんですけど、その点ユリは、えんちゃんより20年くらい長く人生経験があるので、そういうこともわかりつつ好きに生きていかないとやりきれない、と思っている。肩の力を抜いて、って。>次のページに続く<

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