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『魔法にかけられて』作曲家 アラン・メンケン
「音楽は世界を変える」

2008/03/13

私はカメレオン

 魔法の王国アンダレーシアから現代のニューヨークに迷い込んだ主人公ジゼルが、現実主義者のロバートと出会うディズニーのファンタジー映画『魔法にかけられて』。アニメ、実写、ミュージカル、ロマンスが融合した本作で、音楽を担当したのは、『リトル・マーメイド』の「アンダー・ザ・シー」、『美女と野獣』の「美女と野獣」、『アラジン』の「ホール・ニュー・ワールド」、『ポカホンタス』の「カラー・オブ・ザ・ウィンド」といった数々の名曲を生み出し、8度のアカデミー賞に輝く巨匠アラン・メンケン。本作では、「真実の愛のキス(True Love’s Kiss)」、「歌ってお仕事(Happy Working Song)」、「想いを伝えて(That’s How You Know)」、「そばにいて(So Close)」、「エバー・エバー・アフター(Ever Ever After)」の5曲を手がけ、3曲がアカデミー賞歌曲賞にノミネートされた。音楽を心から愛する彼が、映画について語る。

subtitle & editing by Booster Project Inc.



Q. 『魔法にかけられて』は、ディズニーの古典作品へオマージュを捧げつつ、セルフ・パロディ的な要素もある作品ですが、音楽の面で気をつけたことは?

 まず、主人公ジゼルが暮らす魔法の王国アンダレーシアのための音楽的言語を創造したかった。『白雪姫』や『シンデレラ』などの世界の、単純で楽観的で夢が叶うといった初期のウォルト・ディズニー作品の感覚。ジゼルがわれわれの世界にやって来たとき、そうした特色は一変する。だから現実世界に残ったそうしたメルヘンチックな特徴は、浮いてしまう。それによって、とてもコミカルかつ感動的なものになっているんだ。

Q. ケヴィン・リマ監督との仕事はどうでしたか?

 ケヴィンは求めるものについてとてもはっきりしていた。彼とは、曲を書き始める前に、映画のすべてのシーンやあらゆる側面について話し合った。ときには、彼に曲を渡すと「ちょっと違う気がする。ここについて話そう」とか「ここを少し変えてくれないか」と言われたりした。彼は素晴らしい共同制作者だ。彼と一緒に仕事をして素晴らしいときを過ごした。彼と一緒に仕事をするのは楽ではなく、要求は厳しかったけど、おかげでいい仕事ができた。

Q. 監督の指示は詳細にわたっていたとのことですが、例えば、楽曲に使用する楽器についての指示などはありましたか?

 いや。それに関しては、自分の編曲家を信頼している。彼らは最高だからね。でも音楽のスタイル自体によって使用楽器はかなり決まると思う。それは人々が場面の歌や音楽を聞いて連想するものの一部だからね。バイオリンや木管楽器の音。耳から教え込まれて、状況について考えるんだ。

Q. 本作にはいろいろなタイプの歌が登場し、アニメではよりクラシックなスタイルで、実写ではもっと現代的ですが、どちらがより得意ですか?

 何でも得意だよ。私は自分がカメレオンのようなものだということに誇りを持っている。さまざまなスタイルに合わせるのが好きなんだ。もしヒップホップやラップの歌を書けといわれたら、やったことがないからうまくできるかどうかわからないけど、できるかもね。

Q. アラン・メンケンさんはニューヨーク出身ですが、ニューヨークが描かれているこの作品への特別な思い入れはありますか? ブロードウェイで新しいミュージカルを作っていたころのことは思い出しますか?

 いつも思い出すよ。ニューヨークで映画が撮影されて、ブロードウェイや劇場の看板が登場するのを見るのは好きだ。そこで見るブロードウェイは私が育ったブロードウェイとは違うからね。この作品で描かれているのは、現在のとてもモダンなブロードウェイだ。それから、セントラル・パークのシーンも大好きだ。セントラル・パークが背景として登場する古典的なロマンス映画に心が戻るような感覚。それはニューヨークにいて素晴らしいことだね。

Q. 本作で描かれている「言葉で伝えきれないことを歌で伝える」というおとぎの国のお約束について、どう思いますか?

 それこそミュージカルを歌い始める発想だね。登場人物たちがやって来るアンダレーシアがとても子供じみたロマンチックな世界だから、彼らが歌い出すのを受け入れられるんだ。われわれ両方ともそれを笑えるから。でもまた愛してもいる。それを笑っていいとわかっている限り、愛することができるんだ。もし人々が「あ、彼らはとてもシリアスにやっているから、これを笑っちゃいけない」と感じたら、それを愛することができなくなって、みんなとても居心地が悪くなる。だからロバートが「ああ、歌わないで。何てこった。頼むからやめて」と言うと、観客は自由になって楽しむことができるんだ。

Q. 作曲のインスピレーションはどのように得るのですか?

 いつひらめくかについては、もし一緒に仕事をしている仲間と木曜の朝10:30に会うと言ったら、インスピレーションは木曜の朝10:45に沸いてくるね。仲間と一緒に部屋で仕事をしたいから、合間には曲について考えたくないんだ。でもほとんどの場合、われわれは最初にとてもはっきりした課題を自分たちに与える。そして、音楽的言語は何か、登場人物は誰か、歌はどこから始まってどこで終わるのか、これは何を思い起こさせるかといった、ひとつの歌の中にあるいろいろな決まりがわかって初めて、私が曲を書き始める。でも、すでにとてもはっきりした型ができているんだ。

Q. 作曲はどのようにするのですか?

 だいたいピアノを弾いて作曲するね。でもまたそれは全部、とてもはっきりした一連の決まりの中でのことだ。こんな種類のコードで、こんな種類の感じを狙う。「ああ、この曲はこの歌を思い出させる。ちょっとこの歌を聴いてみよう」と言うことだってあるかもしれない。それが自分の曲でなくてもね。それから「オーケー。感覚をつかんだから、それっぽいものを書くよ」となる。それで人々にその感覚を思い起こさせ、観客によりはっきりと影響を及ぼすんだ。

Q. CGなど技術の発達により、映像は大きく変化していますが、長いキャリアの中で、映画音楽はどう変わったと感じていますか?

 変わったのは、本物のオーケストラに近い音が出せるシンセサイザーやアレンジのおかげで、今では監督が、楽譜がどんな感じになるかより進歩した状態で聞けるようになったことだ。監督たちは自分の望むようにできるかどうかわかるから、それによって、ときには私たちの仕事に2倍もの時間がかかることになる。でも、彼らは80人編成のオーケストラの前でコメントする機会を得るようになったみたいなものだから、当然お金は節約できるね。(私自身も)キーボードを使っていて、そのキーボードはコンピューターにつながっているんだ。

Q. トレンドや時代性を取り入れるために、何かしていることはありますか?

 感覚的にある時代に関連した音楽のスタイルを用いるようにしている。それを楽譜に盛り込み、われわれ製作者が望んでいるところへ観客の連想を引っ張っていく。それは音楽的にとてもはっきりしたつながりやとてもかすかなつながりがきっかけになるんだ。

Q. メンケンさんは、これまで4度アカデミー歌曲賞を獲得しており、今年も本作から3曲がノミネートされていました。結果的には『ONCE ダブリンの街角で』のグレン・ハンサードとマルケタ・イルグロヴァが歌曲賞を受賞しましたが、今年のアカデミー賞の感想は?

 彼らが受賞したことについては、『ONCE ダブリンの街角で』は好きだし、彼らの歌も好きだし、祝福するよ。一般的に「あれはこれよりいい歌だ」と言うようなことができるかどうかわからない。われわれがやることと彼らがやることは全然違うから、比較することすら難しい。でも、彼らは『ONCE ダブリンの街角で』の仕事で、りっぱな偉業を成し遂げたし、誇りに思うべきだと思うよ。

Q. メンケンさんは大ベテランで、彼らはとても若いですが、今年のオスカーでは多くのヨーロッパの俳優やスタッフが受賞を果たしました。何か新しい風のようなものを感じていますか?

 ああ。オスカーでの特にイギリスやヨーロッパの影響はとても強力だと思う。ときに、アカデミー会員たちはとても反米的だ。私もニューヨーク出身で、ロスではよそ者だった。だからオスカーはこれまでもずっととても包括的なイベントだったし、今はその傾向がより強くなっている。だから素晴らしいことだと思う。とても健全だし、今やとても国際的なイベントだ。

Q. 映画のテーマやメッセージを伝える上で、音楽の役割をどう考えていますか?

 ものすごくパワフルだ。音楽は映画やそれがどう感じられるかを完全に変えることができる。シリアスな映画を、ただ音楽を変えるだけでコメディにできるし、コメディを、ただ音楽を変えるだけでシリアスにできる。感動的とか恐ろしいといった人々の感じ方を、単に音楽を変えるだけで変えることができるんだ。音楽は極めて強力だよ。

Q. 今後の仕事は?

 仕事はいつも重なるんだ。今もここにいるけど、来週始まるロンドンの「天使にラブ・ソングを…」のワークショップの準備をしているんだ。その後すぐ、ニューヨークで4月に始まる別の新しいミュージカルのワークショップがある。だから、私はいつもたくさんのいろいろなことをジャグリングしているんだ。もしたくさんのいろいろなことをジャグリングしなかったら、退屈するだろうね。

(c) Disney Enterprises, Inc. All rights reserved.
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『魔法にかけられて』
●監督:ケヴィン・リマ 製作:バリー・ソネンフェルド、バリー・ジョセフソン 脚本:ビル・ケリー 撮影:ドン・バージェス 音楽:アラン・メンケン、スティーヴン・シュワルツ
●出演:エイミー・アダムスパトリック・デンプシースーザン・サランドン、ジェームズ・マースデン、レイチェル・コヴィー、ティモシー・スポール 声の出演:ケヴィン・リマ
●2007年/アメリカ/108分/ドルビーSRD、DTS/シネマスコープ/3月14日(金)より日劇3ほか全国にて日本公開/オフィシャルサイト:http://www.disney.co.jp/movies/mahokake/index.html
●配給:ウォルト ディズニー モーション ピクチャーズ ジャパン


アラン・メンケン
1949年7月22日生まれ、ニューヨーク出身。舞台音楽やディズニー映画の音楽で知られる作曲家。『リトル・マーメイド』(89年)、『美女と野獣』(91年)、『アラジン』(92年)、『ポカホンタス』(95年)でアカデミー賞音楽賞と歌曲賞を計8度受賞。『魔法にかけられて』でもアカデミー賞歌曲賞に3曲がノミネートされた。




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