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『ジャンパー』監督ダグ・リーマン
自主制作のスピリットで
超大作を撮る、と評される男

2008/03/10

ハリウッド超大作で次々興行成績を塗り替える
ヒットメーカーの素顔

 ダグ・リーマンが誰なのか、どんな映画を撮ってきた監督なのか、たぶん、映画を観る前には知らなくてもいい。だが、ひとたびタイトルロールが始まれば、音楽が鳴り始めれば、彼の“刻印”を感じる人も多いだろう。そして、その“ダグ・リーマン印”が、あっという間に観客をテンポのいいアクションの世界に引き込んでしまう。

 たかがアクション映画、されどアクション映画。マット・デイモンを一躍スターダムにのし上げ累積興行成績約124億円の『ボーン・アイデンティティ』。ブラッド・ピットとアンジェリーナ・ジョリーの共演で話題となり約190億円を売り上げた『Mr. & Mrs. スミス』。そして公開中の最新作『ジャンパー』。空間移動できる能力に目覚めた主人公(ヘイデン・クリステンセン)が世界中を“ジャンプ”しながら、楽しく優雅な生活を送っていたが、その能力に感づいた組織に追われて……というSFアクション&アドベンチャー。2月に公開されるや全米の興行成績№1を獲得。続けて公開された世界各地でも次々に№1を獲得した。つまり、端的に言うと、監督する作品すべて大ヒット、というヒットメーカー。それがダグ・リーマンである。

 「もちろん、それは意図的にやっていることではない。意図的に自分の映画のテイストを出そう、なんてできないと思う」とダグ・リーマンは淡々と言う。微笑をたたえながら静かに水を飲み、スタッフの日本語に耳を傾け「もしかして今、こう言った?」と日本語の聞き取りを学ぼうとする。
 
 シンプル&モダンなパークハイアット東京のスイートルームのリビングに座って話をするダグ・リーマンの、そんな静けさに、うかうかとだまされてはいけない。


日本のポップアートが
東京ロケにつながった?

© 2007 Twentieth Century Fox
© 2007 Twentieth Century Fox
 US Variety誌の辛口コラムニスト、アン・トンプソンによると『Mr.& Mrs.スミス』プロデューサーのアキバ・ゴールズマンは彼のことを、こう評している。「ダグは自動制御の竜巻みたいなものだ。巻き込まれたら本当にカオスだが、効率的なカオスだ」。また20世紀フォックスの副社長トム・ロスマンは「カッコいいメジャーな大作を創って、ヒットを出すことができる。それだけでもすごいことだが、彼はそれを自主制作映画の映画監督のスピリットを保ったまま、やり遂げるんだよ」とダグ・リーマンを表現したとか。

 メジャー作品を撮りながら、魂はインディペンデントなまま。いったいそんなことが可能なのだろうか? 大きな金額を費やすハリウッド映画だからこそ、“市場の論理”に左右されやすいのではないだろうか。そう尋ねると、彼は「例えば東京でのロケだけれど」とゆっくり言葉を選びながらこう答えた。

 「瞬間移動できる能力を持った主人公、という物語だから、脚本を読んだときから世界各国を映画に出すことは織り込み済みだった。とはいえ、世界中のあらゆるところでロケして回るのは非常にお金がかかるから、どの街で実際にロケし、どの街をスタジオセットでの撮影にするか、判断する基準は確かに必要となってくる。そのひとつがマーケット・バリュー、すなわち映画市場の大きさだ。スタジオとこの点で論議したとき、アジアでロケをするのがすんなり決定したのは、アジアの映画市場の大きさがもちろん利いてはいると思う」

 だが、とリーマンは続けて言う。
 「“東京”で実際にロケをしたのは、違う理由だ。今言った市場価値だけで言うと、アジアでさえあれば同じような波及効果が期待できるわけで、どこでもいい、といえばどこでもいい。でも“東京”はクールだ。日本のマンガを原作とした映画の製作が続々決定するなど、確かに今ハリウッドの中に“日本”がクールだ、という雰囲気がある。僕自身、ニューヨークの自宅に日本のポップアートを持っているんだ。だから今“東京”でロケをすることは、僕にとっては必然だった。そう言ってスタジオを説得したよ」
 

“パーソナルタッチ”が
映画の醍醐味になる

  「映画を創るときに僕が意識してやっているのは、『この映画は大作だ、だから大きいスケールでやろう』というような考え方をしないことだ。どんな映画も、僕自身が観たいと思うことが基本だと思うから。僕自身が好きなものなど、非常に個人的な思い入れやパーソナル・タッチを大切にすることが、映画を創っていく上で重要なんだと思う」

 今回の『ジャンパー』では、その“パーソナル・タッチ”が、東京でのロケにつながり、わたしたちは映画の中で自分達の見知った街をスピーディーに駆け抜けていくヘイデンを堪能できる幸運にあずかった、というわけだ。

 ではいったい、彼に“東京はクール”と思わせるにいたった日本のポップアートとは何だったのか?
 「ニューヨークの自宅に飾ってある絵のことかい? 奈良美智の絵だよ。ふくれつらをした女の子のね」
 なるほど。現代ポップアートの奈良美智とダグ・リーマン。どこか腑に落ちる組み合わせのような気がするのは、二人ともにメジャーに生きつつも自分を見失わない、強さがあるから、なのかもしれない。

『ジャンパー』
監督・ダグ・リーマン
出演:ヘイデン・クリステンセンサミュエル・L・ジャクソン、レイチェル・ビルソン、ジェイミー・ベル、ダイアン・レイン他
配給:20世紀フォックス映画
公開:3月7日(金)日劇1ほか全国〈超拡大〉ロードショー


ダグ・リーマン●1965年7月24日、ニューヨーク生まれ。
ブラウン大学卒業後、南カリフォルニア大学の大学院で映画とテレビの学位を取得。
96年にロサンゼルスの青春を描いた低予算映画の快作『スウィンガーズ』を監督(撮影も)して注目の的に。そしてマット・デイモン主演のサスペンス・アクション『ボーン・アイデンティティー』(02)が大ヒット。05年にはブラッド・ピット&アンジェリーナ・ジョリー主演の『Mr.&Mrs.スミス』でもヒットを放った。

photographs by Kenta Aminaka
text by Shoko Yamamoto(Variety Japan Tokyo)



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