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さまようアート系映画のカンヌでの行く末
飽和市場&売値高騰にバイヤーは慎重な姿勢崩さず

2008/05/13
“Two Lovers”主演パルトロウ&フェニックス
“Two Lovers”主演パルトロウ&フェニックス
 カンヌ映画祭のマルシェ(映画見本市)で、アートハウス系映画の売買交渉に臨むフィルムメイカーやバイヤー、セラーたちの間には、不穏な空気が漂っている。理由はいくつか考えられる。

 米ワーナー・ブラザースが5月8日に、ピクチャーハウスとワーナー・インディペンデントの閉鎖を発表したこと(5月9日関連記事)。昨年、マルシェで購入された作品が好成績を収めていないこと。さらに、毎年1月に開催される米最大のインディペンデント映画祭であるサンダンス映画祭の2008年の総セールス金額が、07年の5300万ドルから2500万ドルに激減したことが判明したことなどだ。しかも、そのうち1000万ドルは、フォーカス・フィーチャーズが獲得した“Hamlet 2”が単体で稼いだものだ。

 現在、市場はアートハウス系映画であふれかえっている。昨年の賞レース時期を見てもわかるとおり、多くの映画が公開され、またたく間に映画館から消えていく。そんな中、多くは小規模公開から異例のロングランとなり、幅広い観客へリーチした『JUNO/ジュノ』のような成功を夢見ている。

 一方で、こうした作品の販売価格や宣伝広告費は高騰し、米映画協会(MPAA)によれば、アートハウス部門が投資する広告費は平均2570万ドルにまで達している。アートハウス系映画を公開する配給会社にとっては、「アートハウス系映画レベル」の成功では収支が合わない状態で、いまや、「そこそこの投資にそこそこの見返り」という図式は成立しづらくなっている。

 例えば、昨年のマルシェで米コロムビア・ピクチャーズが1150万ドルで獲得したジェームズ・グレイの“We Own the Night”( マーク・ウォルバーグホアキン・フェニックス主演)は、昨年秋に全米2362館で公開し、2860万ドルの興行成績に甘んじた。ミラマックスが300万ドルで獲得し、ジュリアン・シュナーベル監督にオスカー監督部門のノミネートをもたらした『潜水服は蝶の夢を見る』ですら、600万ドルの成績に終わっている。

“What Just Happened?”主演デ・ニーロ
サンダンス映画祭にて
“What Just Happened?”主演デ・ニーロ
サンダンス映画祭にて
 カンヌ映画祭のクロージング作品である“What Just Happened?”(ロバート・デ・ニーロ主演)は、サンダンス映画祭で、どのバイヤーも約2000万ドルを支払うことを拒んだ作品だ。“カンヌのクロージング”という名誉でハクをつけたものの、最終的には、セールス会社である2929エンタテインメント自体のアートハウス部門マグノリア・フィルムズの配給に落ち着くことになりそうだ。この動きは、「限定公開するにはコストがかかりすぎる中規模作品がはんらん」するアートハウス作品市場の実情を表している。

 こうした状況に対する不安は、マルシェでの交渉に影響するはずだ。ジェームズ・グレイ監督による予算1500万ドルの“Two Lovers”(ホアキン・フェニックス&グウィネス・パルトロウ主演)やスティーヴン・ソダーバーグ監督による6000万ドルのスペイン語作品“CHE”(ベニチオ・デル・トロ主演)、チャーリー・カウフマン監督による1500万ドルの『シネクドキ・ニューヨーク(原題)』(フィリップ・シーモア・ホフマン主演)などのハリウッド長編映画ですら、配給先を求めてさまようことになるかもしれない。

 今年のマルシェのポイントは、「どの会社に、大きな買い物をする覚悟があるか?」ということに尽きるだろう。

 ミラマックスとフォックス・サーチライトは比較的好調で、ギャンブルをする余裕があるが、既に十分な作品をそろえている。フォーカスは、サンダンス映画祭で“Hamlet 2”に1000万ドルを使ってしまい、財布のひもが固いかもしれない。ソニー・ピクチャーズ・クラシックスは、大物買いに臆病になっている。ワーナー・インディペンデントとピクチャーハウスを葬ったワーナーのアートハウス系作品に対する取り組みは不明だ。

 一方で、オーバーチュアがトロント映画祭で獲得したトーマス・マッカーシー監督の“The Visitor”は、春のアートハウス系映画興行の中では、ひときわ輝きを放っている。あるスタジオのアートハウス部門役員が語るように「今の時代に映画を公開するということは、とても難しい勝負である」ようだ。

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