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現代アメリカを象徴する『スピード・レーサー』

2008/05/14
(C)2008 Warner Bros.Ent. All Rights Reserved
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 今年の夏興行の話題作の1本、アンディ&ラリー・ウォシャウスキー兄弟が監督を務める『スピード・レーサー』の本邦初となるマスコミ披露試写会が13日(火)、東京・サロンパス ルーブル丸ノ内で開催され、その全ぼうが明らかになった。

 ほぼ満席となるほどの注目度の高さはさすがで、ほとんどの観客がスクリーンの幕が降りる最後まで席を立つことなく画面に見入っていた。満足度は人それぞれだろうが、全体的にかなり高かったように見えた。

 作品を一言で表せば、監督が見た幸福な夢の異世界。言葉は悪いが、精神や感情を高揚させ、それを映画表現の場にぶつけた結果、異世界がスクリーンに現出したともいえる。思わずジャンキーというような言葉を使ってみたくなるほど、尋常な精神と相反する、過剰な幸福感に満ちあふれていた。本作のポイントはズバリ、そこを面白がれるかどうかだ。それによって、評価は大きく分かれる。私は、実に楽しく見られた。

 赤、黄、青など原色の衣装や風景のけばけばしさが、まずドラマやスペクタクルの土台にある。今まさに描かれんとする世界の出発点だ。こうした色彩の手法はハリウッドがときどきやる手だが、当初抱く映像的な違和感はすぐに消える。数回登場するレースシーンのスペクタクルは、当然ながら大きな見せ場になる。

 いくつかのレースシーンは、目にも止まらぬほどの疾走感に裏打ちされ、意図されたチープさとさまざまな光のまばゆさが主体となる。レーシングカーのチープな感覚が、とくに重要だ。リアリズムが狙いではなく、まるで子どもに合わせたようなかわいい車の装い。幸福な夢の原型のひとつが、これだろう。昔、日本の子どもたちの間ではやったレーシングカーゲームをほうふつさせもする。

 人物を前景にして、背後にさまざまな動きが移動していく手法も、見せ場の1つに入れて良いだろう。これ以上、大きな見どころたるレースシーンについて詳しく述べることは差し控えるが、要は進化し続けるハリウッドの映像テクノロジーと、監督が紡ぎだそうとする夢の映像が、幸福な合体をなしている。これに、大きな感動を覚える人も出てくるだろう。

 一抹の疑義がないこともない。ドラマ部分の弱さと、テクノロジーの進化の背後にある無節操な楽天性である。要するに、少しはしゃぎ過ぎではないかということだ。ただいずれにしろ、現代アメリカを象徴する作品になっていることは間違いない。日本での観客の反応が楽しみだ。(大高宏雄・映画ジャーナリスト)

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