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女性向け映画の未来に明るい兆し?
米スタジオの恐怖心を溶かした『SATC』の成功

2008/06/10
『セックス・アンド・ザ・シティ』
『セックス・アンド・ザ・シティ』
 『セックス・アンド・ザ・シティ』(SATC)の米国内外での大成功が、米スタジオの女性向け映画に対する“恐怖心”を溶かし、前向きな風を吹かせているようだ。

 ロマンティック・コメディやコメディ・ドラマなど、女性向けの作品を総称した“chick flick(チック・フリック)”というジャンルに対し、苦い失敗経験を忘れられないスタジオは恐怖心を抱いてきた。『プラダを着た悪魔』や『グッドナイト・ムーン』、『P.S.アイラブユー』といった女性向け映画を製作し、現在、“I Didn’t Fancy Him Anyway”の企画が進行中のウェンディ・ファイナーマンは、「『X-メン』がヒットしたから、『アイアンマン』にGOサインが出る、というのが男性向け映画に対するスタジオの決断スタイル。こうした成功例を次の企画につなげるスタイルが、女性向け映画には、採用されないのです」と話す。

 脚本家で監督のダイアン・イングリッシュは、13年間にわたり製作を熱望し続けた企画“The Woman”を、数々のスタジオの女性幹部に断られ続け、最終的にピクチャーハウスのボブ・バーニーからGOサインをもらうこととなった。最近のヒット作である『めぐりあう時間たち』などを例に挙げてプレゼンしても、“まぐれ当たり”だと相手にしてもらえず、「毎回、1からスタートしなくてはならないのです」。

初夏の大作と同等に戦う女性向け映画5本

『ベガスの恋に勝つルール』
『ベガスの恋に勝つルール』
 特に、25歳以上の女性をターゲットにした作品は、懐疑心を持って扱われ、『SATC』ですら、多くの分析家たちはかなり低い予想を立てていた。こうしたなか、公開週末だけで5700万ドルの興収をたたき出した成功には、反論を寄せ付けない圧倒的な力があり、ターゲットに向けてしっかりマーケティングした映画は、大金を稼ぎ出すことができることを証明した。また、大作が押し寄せる先週末の米国興収トップ10のうち、半分を占める存在感を示したのは、ほかに『ベガスの恋に勝つルール』や『近距離恋愛』、『忘却サラ・マーシャル』、“Baby Mama”といったチック・フリックだった。

 この傾向は、米国外でも顕著で、『SATC』は、5日間で3720万ドルを、5月に公開された米フォックスの『ベガスの恋に勝つルール』は9570万ドルを、米ソニーの『近距離恋愛』は3080万ドルを稼ぎ出している。イギリスでは、『SATC』がカップルのデート映画としても人気を博し、彼女に劇場まで引きずりこまれた男性たちも、結果的に大いに楽しんでしまったようだ。

先見の明と“二兎を追わない”手堅い作戦が成功のカギ

“Baby Mama”
“Baby Mama”
 事実、米ワーナー・ブラザースの幹部たちは、自分たちが“パス”した『SATC』の企画のポテンシャルを見抜いたニューライン・シネマを評している。ニューラインの代表トビー・エメリッヒは現在、“セックス・アンド・ザ・サバーブ(シティに対して、郊外の意)”とジョーク交じりに名づけた続編の可能性を探っている。また今夏に、若い女性4人の友情物語“Sisterhood of the Traveling Pants”をリリースする。

 7月18日に、米国で“Mamma Mia!”をリリース予定の米ユニバーサルの製作トップであるドナ・ラングレーは、『SATC』の成功について、「エキサイティングだけれど、とても異例」としつつ、成功の秘けつについて、「あるターゲット向けの映画をつくる際には、そのグループをしっかり取り込むことが重要」と念を押す。同時に、女性スターをアクションの主役に据えて、あわよくば、女性主役の映画を避けがちな男性を取り込もうとする“二兎追い作戦”が通用しないことは、ジョディ・フォスター主演の『ブレイブ ワン』やニコール・キッドマンの『インベーション』が証明している。

ひと足お先にチック・フリック・ブームの米テレビ業界

“Lipstick Jungle”
“Lipstick Jungle”
 サラ・ジェシカ・パーカーが、『SATC』の成功を「HBOが長年の苦労とともに築き上げてきたもののおかげ」とするなか、米テレビ業界では、ひと足お先にチック・フリック・ブームが始まっていた。映画にはニッチすぎると考えられる女性主役の小説が、次々とドラマ化されてきたのだ。「テレビのリモコンを握っているのは女性」と、テレビの企画担当者たちは、女性主体の作品に積極的になっている。

 成功の秘密は、ある種のタブーを破り現代の女性が共感しやすい時代精神に踏み込んだ企画であること。「SATC」は、“セックス”のタブーを破り、18~34歳の女性に支持を得ているNBCのテレビ・シリーズ“Lipstick Jungle”は、「仕事場で、出世の話をしてもOK」とばかりに、“野望”のタブーを破っている。また、Candace BushnellやGigi Levangie Grazer、Nora Rpbertsといった既に人気のある小説家の名前を前面に出すことも効果的なようだ。ライフタイム・エンタテインメントの代表スザンナ・ダニエルズは、「ビーチを歩きながら、女性がこの夏、どの本を読んでいるかをチェックしてから」、来シーズンの編成を決定するという。

 テレビや映画で、“女性のきずな”に焦点を当てた作品が続々と企画されるなか、これらの作品が新たな失敗例を作り、前向きになったスタジオが古いパターンに戻らないよう願うのは、製作陣とあらゆる世代の女性の願いだろう。

●最近の女性向けヒット映画(米国内での興行成績)●

マイ・ビッグ・ファット・ウェディング』(2002年)/ 2億4100万ドル
プリティ・ウーマン』(1990年)/ 1億7800万ドル
ベスト・フレンズ・ウェディング』(1997年)/ 1億2700万ドル
『プラダを着た悪魔』(2006年)/ 1億2500万ドル
『セックス・アンド・ザ・シティ』(2008年)★公開中/ 7300万ドル

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