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本年度オスカーは“スロー・スタート”我慢比べ
アートハウス映画は恩恵受け、投票者たちは睡眠不足必至

2008/10/14
いまだ多くの本命作品がスタンバイ中
いまだ多くの本命作品がスタンバイ中
 来年のアカデミー賞に向けた本命作品の公開に関し、各スタジオは我慢比べをしているようだ。全米の関心が集まる大統領選や、世界を巻き込む経済不況の影響もあるのだろうが、賞レースの目玉となる注目作の公開スケジュールが、全体的に遅くなっている。

 例年なら、10月中旬にはコンスタントに飛び込んでくるプレスや関係者向け試写会も、待ちぼうけの状態。ドリームワークスの“The Soloist”や米21世紀フォックスの“Australia”、パラマウント・ヴァンテージの“Revolutionary Road”や“Defiance”、米ソニー・ピクチャーズの“Seven Pounds”といった注目作は、いまだにお披露目されていない。

 物理的に準備の整っていない作品が多いのも現状だ。米パラマウントの“The Curious Case of Benjamin Button”は膨大なCGI処理に追われるポスト・プロダクションの真っ最中で、米ワーナーの “Grant Trino”(クリント・イーストウッド監督)はクランク・アップしたばかり。配給のハーヴェイ・ワインスタインと製作のスコット・ルーディンが公開時期をめぐって格闘していた“The Reader”(10月11日関連記事)は、スティーヴン・ダルドリー監督が11月13日に初日を迎えるブロードウェイ・ミュージカル“Billy Elliot”の準備に追われており、いまだポスト・プロダクションの段階にある。

“Revolutionary Road”
“Revolutionary Road”
“Defiance
“Defiance"
“Soloist”
“Soloist”
 スタジオ関係者たちは、駆け込みでオスカーを獲得した『ミリオンダラー・ベイビー』の成功をイメージしているのかもしれない。2005年公開に向けて製作が進んでいた同作は、突如、2004年12月に公開を早め、試写会も前評判もないままに突風のごとく作品賞をさらっていった。昨年のオスカーをにぎわせた『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』も、年末ギリギリに公開された作品だ。

 確かに、早い時期に公開した作品が記憶から薄れてしまうこともある。昨年秋に公開された『ジェシー・ジェームズの暗殺』や『告発のとき』、『イントゥ・ザ・ワイルド』、『イースタン・プロミス』といった作品はノミネートには絡んだものの、受賞にいたるまでの熱は持続していなかった。また、上半期に公開となった『マイティ・ハート 愛と絆』や『ゾディアック』は、高い評価を得たもののオスカーには一切絡んでいない。こうした状況を反映してか、今年はアメリカのテルライドやトロント、ヴェネチアといった映画祭で本命作品をお披露目するケースも少なかった。

 一方で、例年なら注目作に埋もれてしまいがちなアートハウス系映画は、恩恵を受けているようだ。ジョナサン・デミ監督、アン・ハサウェイ主演のドラマ“Rachel Getting Married”は、9館での公開から27館に拡大し、1館平均1万7198ドル、計88万2454ドルという好成績。7館で公開されたガイ・リッチー監督、ジェラルド・バトラージェレミー・ピーヴン主演のアクション“RocknRolla”は1館平均2万143ドル、計20万ドル、4館で公開されたマイク・リー監督のコメディ“Happy-Go-Lucky”は1館平均2万ドル、計8万ドルと、ニッチな限定公開作品としては堅実なスタートを切っている。

 映画祭から口コミが広がっているユニバーサルの“Changeling”やソニーの“I've Loved You So Long”、フォックス・サーチライトの“The Wrestler”や“Slumdog Millionaire”といった作品にも、いい流れが見込めそうだ。

 一方で、こうした“スロー・スタート”のあおりを受けるのは、賞レースを導くキー・プレイヤーたちだ。オスカーの行方を握るアカデミー協会員の多くは家族持ちであり、感謝祭直前の11月半ばからクリスマスを経て、投票の締め切りとなる12月26日までは、何かとプライベートで忙しい。怒とうのように押し寄せるDVDをさばくためには、その身を削らなければならない。

 オスカーの1カ月前に授賞式が行われるゴールデン・グローブ賞においても、ハリウッド外国人記者クラブの会員たちは、膨大な外国語映画やテレビ番組を網羅する必要がある。もちろん、誰しも本命作品のためには時間を割くものだが、1日に5~6本の作品を見なければならないような状態なら、エンタテインメントのこう水に溺れるのも、時間の問題だろう。

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