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中谷美紀『自虐の詩』と『嫌われ松子の一生』の明暗

2007/11/09
(C)2007「自虐の詩」フィルムパートナーズ
(C)2007「自虐の詩」フィルムパートナーズ
 中谷美紀主演の『自虐の詩』が公開されている。現在、全国の興行収入は1億4000万円に届くところ。最終的には3億円は超えてくるだろうが、決してヒットといえる数字ではない。

 この作品は、昨年ヒットした同じ中谷主演の『嫌われ松子の一生』を思い起こさせる。不幸な生涯を送る健気な女を、中谷が演じることで共通性があるのだ。しかし『嫌われ~』が13億円まで数字を伸ばしたのに、おそらく『自虐の詩』は5億円に届かない。その理由はいったい何なのか。

 まず、2作品は配給会社が違う。『嫌われ~』が東宝なのに対し、『自虐の詩』は松竹。後者の場合、製作総指揮として松竹の社長、企画として製作に参加する中谷の所属事務所社長の名前が入っている。これは重要である。ふつう、『自虐の詩』クラスの作品に、製作総指揮として配給会社社長の名前が入ることはない。つまりそれだけ、松竹が力を入れた作品だということだ。実はここに、両者の成績の違いが表れている。

10月20日(土)に行われた第20回東京国際映画祭のレッドカーペットに登場した『自虐の詩』中谷美紀、阿部寛
10月20日(土)に行われた第20回東京国際映画祭のレッドカーペットに登場した『自虐の詩』中谷美紀、阿部寛
 『自虐の詩』は、松竹大船調の人情劇だったのだ。落ちていく女を、最後ではっきりと救済している。反対に『嫌われ~』は、演出家の非情な目が、最後まで主人公を突き放しているようにみえる。パッケージは似ていても、中身の重要な点では、全く違った作品であった。

 突き放しているほうが、表面的には面白い。笑いもとれる。実際、『嫌われ~』のほうにより多くの若い観客がつめかけた。落ちていく女に、変な優越感ももてたのだろう。『自虐の詩』は、ふつうの人情劇に終わってしまったということだ。

 ただし『自虐の詩』は、『嫌われ~』の中谷を救済する作品と見れば、その価値はすごく上がる。演ずる中谷に幸福を与えようとした事務所の配慮ともみえるのだ。これは興行とは関係ないが、映画でそういうことが行われてもいいのである。

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