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2007年、どんな日本映画が海外で栄誉を受けたか?

2008/01/04
レッドカーペットで観客の声に応える『殯(もがり)の森』一行
レッドカーペットで観客の声に応える『殯(もがり)の森』一行
 2007年、海外で栄誉を受けた日本映画と映画人を振り返る。

 まずは、『殯(もがり)の森』の河瀬直美監督。第60回を迎えたカンヌ映画祭で、パルムドールに準じるグランプリを受賞。河瀬監督は、以前、同映画祭で新人監督に与えられるカメラドールも獲得している。スタンディングオベーションを受け、立ち上がった姿には、揺るぎない自信とその自信に裏付けされた華やぎが感じられた。受賞の報があった直後に始まった日本での公開では、上映劇場数が拡がらないなど、カンヌでの熱を伝えきれなかったことが惜しまれる。ただし現在も上映は続き、特に監督の講演などある回は大盛況となっている(河瀬直美インタビュー)。

 続いては『愛の予感』で、スイスの第61回ロカルノ映画祭でグランプリ、ヤング審査員賞、国際芸術映画評論連盟賞、ダニエル・シュミット賞で4冠を獲得した小林政広監督。伝統と革新の調和がとれた作品が並ぶこの映画祭で、日本人のグランプリ受賞は、故・実相寺昭雄監督『無常』以来37年ぶり。監督は「事実にどのくらい普遍性を持たせて描けるか」が支持されるポイントだと語っていたが、この種の悲劇がどの国でも一般的な事件となりつつあることが問題であるという逆提起を観客は支持したのだと思う(『愛の予感』レビュー)。

 北野武監督は、第64回ヴェネチア国際映画祭に35人の監督が競作したオムニバス『それぞれのシネマ』“To Each His Own Cinema”の一本を送り込み、ちょんまげ姿でヴィム・ヴェンダース監督らと談笑しながらレッドカーペットを歩く姿も話題となった。今回は、新設された今後の活躍が一層期待される監督におくる第一回“監督・ばんざい!賞 (Glory to the Filmmaker! award)”を受賞。一度キャリアを取り払って、次のステップへといく転換期にあたる作品と発言していた『監督・ばんざい!』を、ヴェネチアは次なるステップへの試金石と評価した。

 初監督作品で数々の映画賞を受賞したのは、『無花果の顔』の桃井かおり監督。第57回ベルリン国際映画祭のNETPAC賞をはじめ、計4つの映画祭で賞を獲得した。完成したばかりの頃は、「映画監督には向かない」などと発言していた桃井監督だが、相次ぐ受賞に「やはりこれでよかったんだ」と演出業に自信が持てた様子。新作も準備中であるという噂も聞こえてくる(桃井かおりインタビュー)。

 観客にセンセーションを巻き起こした『14歳』の廣末哲万監督は、第36回ロッテルダム国際映画祭でNETPAC賞を受賞。昨年もコンペ対象外ながら同賞を受賞して面喰っていたが、今年はコンペでのエントリーだっただけに、さらに上を望みたいところでもあった。

 アニメーションでは、アヌシー2007国際アニメーション映画祭で長編部門特別栄誉賞を受賞した『時をかける少女』細田守監督と、2007年オタワ国際アニメーション祭で最優秀インディペンデント短編アニメーション賞を受賞した『カフカ 田舎医者』山村浩二監督(対談:山村浩二×池内紀)の活躍が光る。ともに4大アニメーション映画祭(ほかはザグレブと広島)の重要な賞の受賞は、日本のアニメーション監督の新世代が国際的認知されたということを意味する。

『バベル』で助演女優賞を受け、アカデミー賞の授賞式に向かう菊地凛子
『バベル』で助演女優賞を受け、アカデミー賞の授賞式に向かう菊地凛子
 個人が受けた賞で印象的だったのは、なんといっても『バベル』でアカデミー賞の助演女優賞にノミネートされた菊地凛子菊地凛子インタビュー)。臆することなく堂々とインタビューに答える姿は、一昔前の日本人の女性像をいい意味で裏切る格好となった。ハリウッド映画で日本人女性の描かれ方が変わったとしたら、菊地の影響だろう。

 『嫌われ松子の一生』で、第31回香港国際映画祭の第1回アジアン・フィルム・アワード最優秀女優賞を受賞した中谷美紀の存在も忘れてはならない。伝えたいのは、たいてい感謝の言葉で終わる受賞のスピーチを、アジアの映画界の未来まで広げて語った中谷に、満座の関係者が感動したエピソード。あいさつ下手で、照れ屋な日本人像を、これまた覆した瞬間だった。

 2007年の日本映画は、これでも各国から映画を探しにくる映画祭プログラマーたちから「日本だけで完結してしまっている(日本人観客だけを想定して描かれる)映画が多い」(ニッポン・コネクション(ドイツ)、プログラマーが語る)と不評だった。2008年は、その評をくつがえすことができるだろう。世界中の観客が引き込まれる、普遍的なテーマを掲げた日本映画が多い。海外の映画祭で、それらが国と国、人間と人間の間でどのような媒介となってくれるか、その活躍がいまから楽しみだ。

2007年日本映画の海外での受賞一覧 (順不同/全てを網羅していません) 
受賞作品(監督名) 映画祭名
『14歳』廣末哲万 NETPAC賞 第36回ロッテルダム国際映画祭(オランダ)
『明日の記憶』堤幸彦 観客賞 第6回シネアジア映画祭(ドイツ)
『殯の森』河瀬直美 グランプリ 第60回カンヌ映画祭(フランス)
『時をかける少女』細田守 長編部門特別栄誉賞 アヌシー2007国際アニメーション映画祭(フランス)
『BoNES』日高晋作 ベスト・アニメーション・ワーク賞 第58回フィルムビデオ国際短編映画祭(イタリア)
『不老長寿 Eternally Yours』緒方篤 最優秀短編賞 2007年バンコク国際映画祭(タイ)
『愛の予感』小林政広 グランプリ(金豹賞)、ヤング審査員賞、国際芸術映画評論連盟賞、ダニエル・シュミット賞 第60回ロカルノ映画祭(スイス)
『監督・ばんざい!』北野武 監督・ばんざい!賞 第64回ヴェネチア国際映画祭(イタリア)
『カフカ 田舎医者』山村浩二 最優秀インディペンデント短編アニメーション賞 2007年オタワ国際アニメーション祭(カナダ)
『OOIOO “UMO”』後藤章治 最優秀音楽ビデオ賞 2007年オタワ国際アニメーション祭(カナダ)
『蟲師』大友克洋 最優秀特殊効果賞 第40回シチェス国際映画祭(スペイン)
『十二月の空』戸田博 観客グランプリ第1位、ニュー・アジアン・シネマ第1位  第13回リヨン・アジア映画祭
『HAZARD』園子温 ニュー・アジアン・シネマ第2位 第13回リヨン・アジア映画祭
『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』神山健治 アニメーション映画観客賞第3位 第13回リヨン・アジア映画祭
『あしたの私のつくり方』市川準 黄金の太陽賞(グランプリ) 第2回キノタヨ日本映画の映画祭(フランス)
『ヨコハマメリー』中村高寛 黄金の太陽賞(第一作目部門) 第2回キノタヨ日本映画の映画祭(フランス)
『ストロベリー・ショートケイクス』矢崎仁司 観客賞 第2回キノタヨ日本映画の映画祭(フランス)
『アリア』坪川拓史 観客賞 第2回キノタヨ日本映画の映画祭(フランス)
『受験のシンデレラ』和田秀樹 最優秀作品賞 第5回暴力描写のない映画のためのモナコ国際映画祭(モナコ)
『純愛』ジャン・チンミン インディペンデンススピリット 第5回暴力描写のない映画のためのモナコ国際映画祭(モナコ)
『無花果の顔』桃井かおり NETPAC賞 第57回ベルリン国際映画祭(ドイツ)
『無花果の顔』桃井かおり FIPRESCI賞 第5回フライング・ブルーム国際女性映画祭(トルコ)
『無花果の顔』桃井かおり 最優秀監督賞、最優秀女優賞 第5回ウラジオストク国際映画祭(ロシア)
『無花果の顔』桃井かおり 特別賞 第21回フリブール国際映画祭(スイス)
『ドロン』平林勇 公共短編部門:第3位 第13回リヨン・アジア映画祭
『ドロン』平林勇 グランプリ グラナダ国際短編映画祭(スペイン)
『ドロン』平林勇 グランプリ 第24回釜山アジア短編映画祭(韓国)
『ドロン』平林勇 映画祭チョイス賞 トロントジャパニーズ短編映画祭(カナダ)
『ドロン』平林勇 「ブロンズの海」賞 優秀短編映画祭(フランス)

2007年受賞者一覧 (順不同/全てを網羅していません)
受賞者(作品名) 映画祭
菊地凛子『バベル』 助演女優賞ノミネート 第79回アカデミー賞(アメリカ)
中谷美紀『嫌われ松子の一生』 最優秀女優賞 第31回香港国際映画祭第1回アジアン・ フィルム・アワード(中国)
寺島咲『受験のシンデレラ』 最優秀女優賞 第5回暴力描写のない映画のためのモナコ国際映画祭(モナコ)
豊原功輔『受験のシンデレラ』 最優秀男優賞 第5回暴力描写のない映画のためのモナコ国際映画祭(モナコ)
武田樹里『受験のシンデレラ』 最優秀脚本賞 第5回暴力描写のない映画のためのモナコ国際映画祭(モナコ)
小林桂子『純愛』 ベストプロデューサー賞、エンジェルピース賞 第5回暴力描写のない映画のためのモナコ国際映画祭(モナコ)
ポン・ボー『純愛』 最優秀助演男優賞 第5回暴力描写のない映画のためのモナコ国際映画祭(モナコ)
チャン・シャオホウ『純愛』 最優秀助演女優賞 第5回暴力描写のない映画のためのモナコ国際映画祭(モナコ)
棚木和人、松島恵利子『yoriko 寄子』 最優秀脚本家賞 第5回暴力描写のない映画のためのモナコ国際映画祭(モナコ)
香月秀之『yoriko 寄子』 最優秀原作賞 第5回暴力描写のない映画のためのモナコ国際映画祭(モナコ)
栗田豊通『スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ』 最優秀撮影賞 第40回シチェス国際映画祭(スペイン)
佐々木尚『スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ』 最優秀美術デザイン賞 第40回シチェス国際映画祭(スペイン)
蓜島邦明 『蟲師』 最優秀オリジナル音楽賞 第40回シチェス国際映画祭(スペイン)

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