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第80回アカデミー賞は欧州の俳優旋風
コーエン兄弟『ノーカントリー』作品、監督など意地の4冠

2008/02/25

主演賞はデイ=ルイス、コティヤール

オスカー像を手に笑顔のイーサン・コーエン、スコット・ルーディン、ジョエル・コーエン(左から)
オスカー像を手に笑顔のイーサン・コーエン、スコット・ルーディン、ジョエル・コーエン(左から)
 米映画界最大の祭典、第80回アカデミー賞授賞式が2月24日(日)、米・ロサンゼルスのコダックシアターで行われた。『ノーカントリー』が作品、監督、助演男優、脚色の主要4部門を獲得。主演男優賞は『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』のダニエル・デイ=ルイスが19年ぶり2度目の栄誉に輝き、主演女優賞は『エディット・ピアフ~愛の讃歌~』のマリオン・コティヤールがフランス人女優として49年ぶりの受賞となった。外国語映画賞にノミネートされていた浅野忠信主演の『モンゴル』は、惜しくも受賞を逃した。

オスカー像を掲げスピーチするダニエル・デイ=ルイス
オスカー像を掲げスピーチするダニエル・デイ=ルイス
 本命不在、混戦が予想されていたオスカーの行方。結果的には、今年の賞レースを常にリードしていたジョエル&イーサン・コーエン監督の『ノーカントリー』が底力を見せつけた。これまでに獲得した映画賞は計110個(うち作品賞25、監督賞23)。大トリとなるアカデミー賞で4個を加え、兄のジョエルは「イーサンと私は、子供のころから一緒に映画を作ってきた。今の仕事も昔と変わっていない。映画の中で遊んでいられるのだから、皆さんに感謝ですよ」と喜びをかみしめた。

 麻薬密売に絡む大金を下敷きに、人間の心に潜む欲を浮き彫りにしたサスペンス。プロデューサーのスコット・ルーディンも「深刻なテーマだが、本当の意味で心に語りかける作品。最高の映画にかかわれた満足感がある」と胸を張る。執拗に麻薬と金を追う殺し屋に扮し、助演男優賞を射止めたハビエル・バルデムも「本当にすごい。光栄です。僕がやれると信じてくれたコーエン兄弟に感謝したい。髪形はひどかったけど……」と母国のスペイン語を交えながら感激のスピーチだ。

マリオン・コティヤールは大事そうにオスカー像を抱きしめる
マリオン・コティヤールは大事そうにオスカー像を抱きしめる
 主演男優賞は、アカデミー賞が25冠目となるデイ=ルイスが貫禄の勝利。1989年『マイ・レフトフット』以来で、ジャック・ニコルソンの22年に次ぐ長いブランクでの戴冠に、「ナイト(爵位)になれるいちばん近い体験をさせてもらっている。ハンサムで見事な像、本当にゴージャスなものを頂いた」と笑顔。そして、ジョージ・クルーニーら他の候補者を称えながら「ポール・トーマス・アンダーソン(監督)の頭の中から素晴らしい作品が生み出された。すべての人に感謝を捧げたい」と話し、満場の喝采を浴びた。

 フランス人として『年上の女』(1959)のシモーヌ・シニョレ以来となる、主演女優賞に輝いたコティヤール。仏セザール賞の主演女優賞とのダブル受賞となり、「本当にありがとう。オリヴィエ(・ダアン監督)、あなたが私の人生を変えてくれたわ」と大きな瞳に感激の涙を浮かべた。授賞式後の会見でも興奮は収まらず、「感情が花火のようにパンパンとはじけているよう。これを全部とじこめるのは大変だわ」とボルテージは上がる一方。取材陣のリクエストに応え、ピアフの代表曲のひとつ「パダン・パダン」の一節をアカペラで披露するサービスも見せた。

俳優部門は欧州勢が独占。左からデイ=ルイス、スウィントン、コティヤール、バルデム
俳優部門は欧州勢が独占。左からデイ=ルイス、スウィントン、コティヤール、バルデム
 最も予想が難しいとされていた助演女優賞は、イギリス出身のティルダ・スウィントンが初のノミネートで栄冠。アメリカのエージェントが、オスカー像に似ているそうで「頭の形もお尻もそっくり。彼がいなければ、私はここに立てなかった。彼に賞を捧げたい」と感無量の面持ちだ。さらに、監督・脚本のトニー・ギルロイ、製作総指揮主演のジョージ・クルーニーにも最敬礼で「トニー、あなたが見事だったことが正式に発表されましたよ。そしてジョージ、あなたは本当に真剣に作品に取り組んでいた。『バットマン』のころとは違いますね」。ジョーク交じりのスピーチに、会場は拍手と笑いに包まれた。また、イタリア生まれのデイ=ルイスを含め、俳優部門はすべてヨーロッパ出身者が占める異例の結果となった。

 外国語映画賞はオーストリアの『ヒトラーの贋札』が獲得。同国からの受賞は初めてで、ステファン・ルツォヴィッキー監督は「かつてオーストリアにはオットー・プレミンジャーら偉大な映画作家がいたが、ナチスのせいで亡命してしまった。そのナチスをテーマにした作品での受賞はなんともふさわしい」と独特の言い回しで喜びを表現した。

 浅野は受賞こそならなかったが、セルゲイ・ボドロフ監督とともに堂々とレッドカーペットを練り歩き、存在感をアピール。WOWOWの生中継にゲスト出演した所属事務所の後輩の菊地凛子に向かって「凛子、来たぞお!」と呼びかけるなど、終始リラックスムードで、米映画界の最高峰の雰囲気を満喫したようだ。

 米脚本家組合(WGA)のストライキの影響で、ギリギリまで開催が危ぶまれた今年の授賞式。それだけに脚本賞への注目も高かったが、『JUNO/ジュノ』のディアブロ・コディが、脚本デビュー作で受賞する快挙を達成した。「なんてハプニングなの。賞はすべての脚本家に捧げたい。特に他の候補者に。なぜなら、皆さんから学んでいるからです」。初々しいコメントに、同作のジェイソン・ライトマン監督は客席から投げキスで祝福した。

 
◇第80回アカデミー賞受賞結果◇(★が受賞)
作品賞
 『つぐない』
 『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』
★『ノーカントリー』
 『JUNO/ジュノ』
 『フィクサー』

監督賞
★ジョエル・コーエン、イーサン・コーエン (『ノーカントリー』)
 ジュリアン・シュナーベル (『潜水服は蝶の夢を見る』)
 ポール・トーマス・アンダーソン (『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』)
 ジェイソン・ライトマン (『JUNO/ジュノ』)
 トニー・ギルロイ (『フィクサー』)

主演男優賞
★ダニエル・デイ・ルイス (『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』)
 ジョニー・デップ (『スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師』)
 ヴィゴ・モーテンセン (『イースタン・プロミス』)
 ジョージ・クルーニー (『フィクサー』)
 トミー・リー・ジョーンズ (『告発のとき』)

主演女優賞
 ジュリー・クリスティ (『アウェイ・フロム・ハー 君を想う』)
★マリオン・コティヤール (『エディット・ピアフ~愛の讃歌~』)
 エレン・ペイジ (『JUNO/ジュノ』)
 ケイト・ブランシェット (『エリザベス:ゴールデン・エイジ』)
 ローラ・リニー (“The Savages”)

助演男優賞
★ハビエル・バルデム (『ノーカントリー』)
 トム・ウィルキンソン (『フィクサー』)
 フィリップ・シーモア・ホフマン (『チャーリー・ウィルソンズ・ウォー』)
 ケイシー・アフレック (『ジェシー・ジェームズの暗殺』)
 ハル・ホルブルック (『イントゥ・ザ・ワイルド』)

助演女優賞
 ケイト・ブランシェット (『アイム・ノット・ゼア』)
 シアーシャ・ローナン (『つぐない』)
 ルビー・ディー (『アメリカン・ギャングスター』)
 エイミー・ライアン (“Gone Baby Gone”)
★ティルダ・スウィントン (『フィクサー』)

オリジナル脚本賞
★『JUNO/ジュノ』
 『フィクサー』
 “Lars and the Real Girl”
 『レミーのおいしいレストラン』
 “The Savages”

脚色賞
★『ノーカントリー』
 『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』
 『潜水服は蝶の夢を見る』
 『つぐない』
 『アウェイ・フロム・ハー 君を想う』

長編アニメーション賞
★『レミーのおいしいレストラン』
 『ペルセポリス』
 『サーフズ・アップ』

外国語映画賞
★『ヒトラーの贋札』 (ドイツ=オーストリア/ステファン・ルツォヴィッキー監督)
 『ボーフォート —レバノンからの撤退—』 (イスラエル/ヨセフ・シダー監督)
 『モンゴル』 (ドイツ=カザフスタン=ロシア=モンゴル/セルゲイ・ボドロフ監督、浅野忠信主演)
 “Katyn” (ポーランド/アンジェイ・ワイダ監督)
 “12” (ロシア/ニキータ・ミハルコフ監督)

美術賞
 『アメリカン・ギャングスター』
 『つぐない』
★『スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師』
 『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』
 『ライラの冒険 黄金の羅針盤』

長編ドキュメンタリー賞
 “No End in Sight”
 “Operation Homecoming : Writing the Wartime Experience”
 『シッコ』
★『「闇」へ』
 “War/Dance”

撮影賞
 『ジェシー・ジェームズの暗殺』
 『つぐない』
 『潜水服は蝶の夢を見る』
 『ノーカントリー』
★『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』

衣装デザイン賞
 “Across The Universe”
 『つぐない』
★『エリザベス:ゴールデン・エイジ』
 『エディット・ピアフ~愛の讃歌~』
 『スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師』

短編ドキュメンタリー賞
★“Freeheld”
 “La Corona(The Crown)”
 “Salim Baba”
 “Sari’s Mother”

編集賞
★『ボーン・アルティメイタム』
 『潜水服は蝶の夢を見る』
 『イントゥ・ザ・ワイルド』
 『ノーカントリー』
 『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』

メイクアップ賞
★『エディット・ピアフ~愛の讃歌~』
 『マッド・ファット・ワイフ』 (辻一弘、リック・ベイカー)
 『パイレーツ・オブ・カリビアン/ワールド・エンド』

音楽賞
★『つぐない』
 『君のためなら千回でも』
 『フィクサー』
 『レミーのおいしいレストラン』
 “3:10 to Yuma”

歌曲賞
★『ONCE ダブリンの街角で』“Falling Slowly”
 『魔法にかけられて』“Happy Working Song”
 “August Rush”“Raise It Up”
 『魔法にかけられて』“So Close”
 『魔法にかけられて』“That’s How You Know”

短編アニメーション賞
 “I Met the Walrus”
 “Madame Tutli-Putli”
 “Meme les pigeons vont au paradis”
 『春のめざめ』
★“Peter & the Wolf”

短編実写賞
 “At Night”
 “Il Supplente”
★“Le Mozart des Pickpockets”
 “Tanghi Argentini”
 “The Tonto Woman”

音響効果賞
★『ボーン・アルティメイタム』
 『ノーカントリー』
 『レミーのおいしいレストラン』
 『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』
 『トランスフォーマー』

録音賞
★『ボーン・アルティメイタム』
 『ノーカントリー』
 『レミーのおいしいレストラン』
 “3:10 to Yuma”
 『トランスフォーマー』

視覚効果賞
★『ライラの冒険 黄金の羅針盤』
 『パイレーツ・オブ・カリビアン/ワールド・エンド』
 『トランスフォーマー』

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