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『ノーカントリー』とコーエン兄弟の長く暴力的な旅路

2008/02/26
『ノーカントリー』
(c)2007 Paramount Vantage, A PARAMOUNT PICTURES company. All Rights Reserved.
『ノーカントリー』
(c)2007 Paramount Vantage, A PARAMOUNT PICTURES company. All Rights Reserved.
 『ノーカントリー』のプロデューサーであるスコット・ルーディンは、コーマック・マッカーシーの暗い小説を、インディーズ映画界の巨匠ジョエル&イーサン・コーエンに託すという完璧なマッチングをやってのけた。

 11月9日にたった28館で封切られた『ノーカントリー』は、これ以後、コーエン兄弟と助演男優のハビエル・バルデムは、フェニックス、シカゴ、ボストン、ワシントン、そしてニューヨークの批評家グループから、絶え間なく賞賛を浴びる。ゴールデングローブ賞、英国映画テレビ芸術アカデミー賞(BAFTA)、そして様々な専門職部門のアワードからトロフィーを持ち帰り、集大成であるアカデミー賞では、堂々の4冠に輝いた。

 「『ノーカントリー』は、ずっと賞レースで勝ち続けています。それがこれまでの作品にない新しいところです」と話したのは、マーケティング担当のテリー・プレス氏。「ハビエル・バルデムの対抗馬はいません」

 昨年、作品賞に輝いたマーティン・スコセッシ監督の『ディパーテッド』とは異なり、『ノーカントリー』は一部の大人たちだけにウケる作品ではなかった。R指定付きのアクション・スリラーであるというのが、若い男性ファンには魅力的に映ったようだ。

 『ノーカントリー』は一般層に広く受け入れられ、“必見の1本”になった。この理由は、確立されたアクション作品であり、満足できるクライマックスを用意しているだけではない。「この映画が描くのは、危険についてだ」と、プロデューサーのルーディンは語る。「われわれは安心することすら出来ない。どれだけ上手く生きられていても、予想もしない出来事に遭遇し、人生が試される。政治的でもある。正義の顔の下には、悪が隠れているんだ」。

オスカー像を手に笑顔のイーサン・コーエン、スコット・ルーディン、ジョエル・コーエン(左から)
オスカー像を手に笑顔のイーサン・コーエン、スコット・ルーディン、ジョエル・コーエン(左から)
 『ノーカントリー』の黒味がかってフェイドアウトしていく曖昧なエンディングには、多くの観客が意見を持ち、際限のない議論を繰り広げる。一般の観客が喜ぶようなエンディングには、批評家たちは満足しないと言うこともできる。配給のミラマックスは、作品の敷居の高さと、観客ウケする要素を、上手く混ぜ合わせながら宣伝を展開させた。

 また、業界はその長いキャリアのなかで、威厳やアイデンティティ、創造性の自由を失わずして、ハリウッドを先導してきたコーエン兄弟の業績を讃えた

 『ディボース・ショウ』と『レディ・キラーズ』という回り道はあったものの、コーエン兄弟は『ノーカントリー』で気骨のある脚本を書いた。作品をギリギリの極限に留め、マッカーシーのテキサス訛りのセリフを一切排除して、映像と、最小限に抑えた効果的な音で物語を綴った(『ノーカントリー』の製作費3000万ドルは、パラマウント・ヴァンテージとミラマックスが折半した)。

 しかし、コーエン兄弟は休まない。ジョージ・クルーニー&ブラッド・ピット共演のダークなスパイ映画パロディ“Burn After Reading”が控えており、70年代を舞台としたドラマ“A Serious Man”の撮影も、ミネソタ州で9月からスタートする。こちらの作品では、フランシス・マクドーマンドが地元の俳優たちと共演する。そしてすでに、兄弟監督は再びルーディンと組むべく、マイケル・シェイボン著のアラスカを舞台にした“The Yiddish Policemen’s Union”の脚本を書き終えている。

<参考:作品賞ノミネート作品の、国内外興行成績 アカデミー賞効果>
ノミネーション発表時の国内外興行成績累計
『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』 900万ドル 
『ノーカントリー』 5500万ドル
JUNO/ジュノ』 9200万ドル
『つぐない』 8400万ドル
『フィクサー』 7100万ドル

アカデミー賞当日夜までの国内外興行成績累計
『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』 4500万ドル ⇒ 伸び率:400%
『ノーカントリー』 1億100万ドル ⇒ 伸び率:84%
『JUNO/ジュノ』 1億6600万ドル ⇒ 伸び率:80%
『つぐない』 1億2000万ドル ⇒ 伸び率:43%
『フィクサー』 8300万ドル ⇒ 伸び率17%

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