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ショーン・ペンが描く“欲望”に中高年層が共鳴
監督作『イントゥ・ザ・ワイルド』スマッシュ・ヒット

2008/09/12
『イントゥ・ザ・ワイルド』
『イントゥ・ザ・ワイルド』
 ショーン・ペン監督の『イントゥ・ザ・ワイルド』が、好成績を続けている。今月6日から、東京・新宿のテアトルタイムズスクエア、日比谷シャンテ・シネ、恵比寿ガーデンシネマの3館で公開(全国では26館)。特に、タイムズスクエアは12日(金)までの1週間で700万円前後の興行収入が見込まれ、都内ミニシアター1館単位の1週間集計では、洋画のトップに立つとみられる。

 ペンは、『アイ・アム・サム』や『ミスティック・リバー』などで知られるが、監督としてもその力量には定評がある。監督デビュー作『インディアン・ランナー』は、対照的な性格の兄と弟の相克を描いた家族ドラマで、鮮烈なテーマとそれを的確に表現していく演出手腕が見事だった。ただ、暗い題材が影響したのか、興行的には全く奮わなかった。その後、ジャック・二コルソン主演の2作品などを監督し、作品的にはそれなりの力量を発揮したものの日本での興行は芳しくなかった。

 『イントゥ~』は、ある若者がアラスカを最終地点に米国内を放浪していく物語だ。時代設定は、1990年代の初め。一応、両親の不仲などをきっかけに若者が家出していく体裁がとられているが、金と欲に背を向けた1人の男の放浪の人生模様が、実に鮮烈に描かれているところが大きな見どころになっている。

 劇場に詰めかけている観客は、全体的には30代から50代以降の年配者が中心と言っていい。各メディアにおける作品の高い評価なども大きいが、その関心の根っこにあるのは、やはりテーマへの共鳴性だろう。書物が大好きで、そこから絶えず人生訓を引き出してくる若者は、この世にあるさまざまな束縛から自由になろうとしている。あらゆるものを超絶したかに見える彼の壮絶な生き方そのものが、人生の真っ盛りにいる人たち、さらに子育てが終わり老後について真剣に考えなくてはいけない人たちにとって、実に力強いものに映っている気がした。

 人間には、自然との共生感覚が根強くある。さまざまなしがらみからの離脱願望が、抜きがたくある。それが、生命の危機と紙一重の欲望であったとしても、人間の奥底にあるそのような原始の欲望はいかんともしがたい。映画は、若者が見続けるさまざまな風景を通し、人間にあるその欲望の在りかをえぐりだそうとしている。実に真しな試みであり、映画を見て観客は今一度、自身の今までの生き方、生活に思いをはせ
ることになるだろう。

 ペンの今回の作品にはテーマの強力な普遍性があり、それさえも超えた宇宙的な広がりさえ感じさせる。人間、家族、社会、風景、地球、宇宙といった広がり方であり、無意識ながら、そうした壮大な映画の世界像に敏感な人たちが、劇場に詰めかけている気がしてならない。

                                (映画ジャーナリスト 大高宏雄)

※『イントゥ・ザ・ワイルド』の主演エミール・ハーシュのインタビューはこちら

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