『ダージリン急行』
●製作:ウェス・アンダーソン、スコット・ルーディン、ロマン・コッポラ、リディア・ディーン・ピルチャー 製作総指揮:スティーヴン・レイルズ 共同製作:ジェレミー・ドウソン、アリス・バムフォード、アナディル・ホサイン 監督:ウェス・アンダーソン 脚本:ウェス・アンダーソン、ロマン・コッポラ、ジェイソン・シュワルツマン
●出演:オーウェン・ウィルソン、エイドリアン・ブロディ、ジェイソン・シュワルツマン、アマラ・カラン、ウォリー・ウォロダースキー、イルファン・カーン、バーベット・シュローダー、カミーラ・ラザフォード、ビル・マーレイ、アンジェリカ・ヒューストン
●2007年/アメリカ/91分/日本公開3月8日(土)
●配給:20世紀フォックス
●出演:オーウェン・ウィルソン、エイドリアン・ブロディ、ジェイソン・シュワルツマン、アマラ・カラン、ウォリー・ウォロダースキー、イルファン・カーン、バーベット・シュローダー、カミーラ・ラザフォード、ビル・マーレイ、アンジェリカ・ヒューストン
●2007年/アメリカ/91分/日本公開3月8日(土)
●配給:20世紀フォックス
疎遠だった3兄弟が絆を取り戻し、インドを旅しながら文字通りに荷物をなくし、比喩的な意味でも、のしかかる重荷を捨てていく悲喜劇、ウェス・アンダーソン監督が送り出す色彩豊かで躍動的な新作、それが『ダージリン急行』である。テーマにおいてなんら新しい分野を開拓しているものではなく、『ライフ・アクアティック』よりも『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』に近いものとなっており、彼が『天才マックスの世界』で見せた切実で感情をかき立てるような作品にはなっていない。とてもうまく独創的に設定された作品ではあり、映画通や若年層、カルト好きの観客など、彼が今まで育ててきた観客層を満足させるものにはなると思われる。しかし彼の過去作品を超える成績を上げるかというと、どうもそうではなさそうである。ヴェネチア国際映画祭とニューヨーク映画祭での披露の後、アメリカ公開は上映館数限定となった。
父親の葬式以来疎遠となっている3兄弟が会すインドの旅
インドの生き生きとした風景やさまざまな旅の形態、特にぎゅうぎゅう詰めの列車の中の様子は、アンダーソン監督の真骨頂でもある視覚的なユーモアやワイドスクリーンいっぱいに繰り広げられる動きと、とても相性がよかったのであろう。フレームの構図、演技の振り付け、身体を張ったコメディは、『特急二十世紀』、『マルクス兄弟オペラは踊る』、『ビートルズがやって来る/ヤァ!ヤァ!ヤァ!』など古典的で列車に関係の深い映画を参考にしている。
インドの色彩と混沌を要約した短めのプロローグ、アンダーソン作品常連のビル・マーレイもカメオ出演で顔を出す、そんなプロローグの後、映画はダージリン急行のファーストクラス寝台個室へと舞台を移す。そこに集まっているのがホイットマン兄弟の3人、フランシス(アンダーソン作品には欠かせない確信犯的な共犯、オーウェン・ウィルソン)、ピーター(エイドリアン・ブロディ)、ジャック(共同で脚本も手がけるジェイソン・シュワルツマン)である。3人は一年前の父親の葬式以来、これまで一言も言葉を交わしていない。
インドの色彩と混沌を要約した短めのプロローグ、アンダーソン作品常連のビル・マーレイもカメオ出演で顔を出す、そんなプロローグの後、映画はダージリン急行のファーストクラス寝台個室へと舞台を移す。そこに集まっているのがホイットマン兄弟の3人、フランシス(アンダーソン作品には欠かせない確信犯的な共犯、オーウェン・ウィルソン)、ピーター(エイドリアン・ブロディ)、ジャック(共同で脚本も手がけるジェイソン・シュワルツマン)である。3人は一年前の父親の葬式以来、これまで一言も言葉を交わしていない。
列車を追い出された3人の目的地は、母のいる修道院
兄弟3人が3人とも癒される必要があるということは、火を見るよりもあきらかで、長男のフランシスはバイク事故によりミイラのように包帯でぐるぐる巻き(この姿が意図されたものでなかったにせよ、ウィルソンの最近のプライベートにおける危機的状況を思い出した観客もいたことだろう)。次男のピーターは妻が妊娠したという事実を受け入れることができない。そして、3男のジャックは別れた恋人のことで頭がいっぱいで、彼女の留守番電話を盗聴し続けているという始末。
インド製の鎮痛剤をたんまりと携え、3兄弟は近況を確かめあっていくのだが、やはりいつもどおりの家族のあり方、関係に戻っていってしまう。フランシスは彼の立てた旅行プランと行動リストをごり押しし、ピーターは父親の形見を見せびらかし自分がお気に入りの息子だったことを案に示唆する。そしてジャックは、魅力的な客室乗務員リタ(アマラ・カラン)をめぐる兄たちの争いから逃れようと必死になる。
とんでもない違反行為を起こしたことで列車を追い出されてしまう3人。その直後、フランシスは旅の本当の目的を弟たちに告白する。それは、ヒマラヤの修道院で尼僧となっている母親(アンジェリカ・ヒューストン)に会いに行くというもの。だが、彼女の方は、息子達に会うことをそれほど喜んではいない。フランシスのとてつもなく不愉快な行動の原因がユーモアたっぷりに解き明かされるのは、この修道院の件であり、彼がスピリチュアルな癒しを得るきっかけにもなっている。
インド製の鎮痛剤をたんまりと携え、3兄弟は近況を確かめあっていくのだが、やはりいつもどおりの家族のあり方、関係に戻っていってしまう。フランシスは彼の立てた旅行プランと行動リストをごり押しし、ピーターは父親の形見を見せびらかし自分がお気に入りの息子だったことを案に示唆する。そしてジャックは、魅力的な客室乗務員リタ(アマラ・カラン)をめぐる兄たちの争いから逃れようと必死になる。
とんでもない違反行為を起こしたことで列車を追い出されてしまう3人。その直後、フランシスは旅の本当の目的を弟たちに告白する。それは、ヒマラヤの修道院で尼僧となっている母親(アンジェリカ・ヒューストン)に会いに行くというもの。だが、彼女の方は、息子達に会うことをそれほど喜んではいない。フランシスのとてつもなく不愉快な行動の原因がユーモアたっぷりに解き明かされるのは、この修道院の件であり、彼がスピリチュアルな癒しを得るきっかけにもなっている。
監督の茶目っ気と人為的スタイルが作品を辛辣に
ここで、アンダーソンの以前の2作品にも見られるように、彼の茶目っ気と非常に人為的なスタイルが登場人物の成長や感情の積み重ねを邪魔していき、作品は、深みのあるものというより辛辣なものとなってしまっている。ウィルソンとブロディは緊張感のある演技を見せているが、彼らがそれぞれ演じたフランシスとピーターは特に好ましい印象を与える人物になっていない。シュワルツマンとヒューストンは演じた人物に人間味を与え、持ち味を活かしていると言え、その一方、新人のカランはスイートライムのような甘酸っぱく、セクシーで強烈な印象を与えている。
脚本は、映画全体を通して意味を積み上げていくように何度も繰り返される台詞もあり、3兄弟の行動力学を完璧に描ききったものになっている。
技術クレジットには一流の技術者たちが名を連ねている。特にマーク・フリードバーグの華やかで手の込んだプロダクションデザインとロバート・イェーマンの軽快な撮影は、賛辞に値するものであろう。またルイ・ヴィトンが映画のために特別にデザインし、限定のナンバリングが施された旅行鞄も作中、重要な役割を担っている。
劇中音楽はインド映画のサウンドトラックから選ばれたものと、そこに組み込まれた選りすぐりのロック音楽が、効果的な雰囲気を醸し出している。
脚本は、映画全体を通して意味を積み上げていくように何度も繰り返される台詞もあり、3兄弟の行動力学を完璧に描ききったものになっている。
技術クレジットには一流の技術者たちが名を連ねている。特にマーク・フリードバーグの華やかで手の込んだプロダクションデザインとロバート・イェーマンの軽快な撮影は、賛辞に値するものであろう。またルイ・ヴィトンが映画のために特別にデザインし、限定のナンバリングが施された旅行鞄も作中、重要な役割を担っている。
劇中音楽はインド映画のサウンドトラックから選ばれたものと、そこに組み込まれた選りすぐりのロック音楽が、効果的な雰囲気を醸し出している。
効果的に添えられた短編はインターネットやDVDで
ヴェネチア国際映画祭で上映された際、本作には、エンディング・クレジットに『ダージリン急行』のパート1と銘打たれた、洒落た13分のショートフィルム、『ホテル・シュヴァリエ』がついていた。2005年に製作されたこの短編には、タイトルと同名の架空のホテルを舞台にした、ジャックと別れた恋人(ナタリー・ポートマン)の姿が描かれている。
この短編は本作品の重要なプロローグであり、ジャックが3人の中で最も同情すべき人物であるということをさらにはっきりと示していると同時に、本編で繰り返し登場する視覚的なモチーフにより強い印象を与える効果を持ち合わせている。アンダーソンの希望により、『ホテル・シュヴァリエ』は劇場公開されず、インターネットや映画祭、またDVDでのみ見ることができるようにされている。
この短編は本作品の重要なプロローグであり、ジャックが3人の中で最も同情すべき人物であるということをさらにはっきりと示していると同時に、本編で繰り返し登場する視覚的なモチーフにより強い印象を与える効果を持ち合わせている。アンダーソンの希望により、『ホテル・シュヴァリエ』は劇場公開されず、インターネットや映画祭、またDVDでのみ見ることができるようにされている。

































