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外国人の視点で、広く、鋭くなった日本映画

2008/05/02

●2007年/日本=中国/カラー/ステレオ/123分/2008年5月3日より日本公開
●配給:ナインエンタテインメント

日本人の気づかなかったことを気づかせてくれる

 すぐれたドキュメンタリーである。見ていてさまざまなことを考えさせられる。

 毎年8月15日の敗戦の記念日には、東京九段の靖国神社には、かっての日本軍の軍服を着た集団や、大東亜戦争肯定論を演説する人々が集って異様なにぎわいになる。そうした動きに反対する人も少数やってきて小ぜりあいも起る。それを中国人のリ・イン監督は、どっちが正しいとか間違っているといった解釈のコメントはつけず、双方の言い分をあくまで客観的に撮り、録音して伝えてゆく。それどころか、どうしたって白熱化してしまう議論に見る人たちまでが頭を熱くして巻き込まれることを静めるかのように、ときどき、この神社に奉納される日本刀の刀工の老人とリ監督との静かな会話の場面が入る。じつは靖国神社の御神体は一振りの日本刀なのだそうで、そんな日本人の私も知らなかったことまで研究したうえで、この神社の意味を考えようとしているのである。取材もすでに10年にわたって続けているそうで、決して一時の政治的トピックとしてセンセーショナルに取り組んだものではない。

たんねんな取材から、予想もしていなかった意外な場面

 たんねんに取材しているので予想もしていなかった意外な場面もある。ひとりのアメリカ人が星条旗と「小泉首相を支持します」という紙切れを持って立っている。すると何人かの日本人が気をよくして話しかけ、日米親善、日米同盟の気分を盛り上げる。しかし次にはこの場所に星条旗を持ち込むとはけしからんと息まく男たちが数人現れ、警備の警察官も星条旗はトラブルのもとになるからと言って出てゆくように指示する。日本語の分らないこのアメリカ人は、なぜ追出されるのか分らないような顔をして去ってゆく。これはこの場で展開されている激論の全体から言えばほんの傍流の取るに足らない幕合狂言のようなエピソードにすぎない。しかし今の日本に星条旗をいまわしい不浄なもののように感じる意識が残存していて警察もこれをこの場では認めているというのは私には新鮮な発見だった。そんなところにまで目くばりが利いているので、意外と複雑で多様な、ふだんは見えない日本の現実が浮びあがってくるのである。

痛切な、台湾人女性の主張

 ひとしきり大東亜戦争肯定論の演説を聞いたうえで、韓国、台湾、沖縄、さらには日本の仏教のお坊さんの、なぜ自分たち遺族の承諾なしに自分たちの家族の霊を祀るのかという批判は痛切である。とくに台湾からもう7回も抗議に来たという女性の理路整然として気迫のこもった主張は心をゆさぶる力を持っている。

 いまインディペンデントの日本映画でシリアスな内容を持つ作品がたいていそうであるようにこれも文化庁からいくらかの助成金を得て作られているが、日本人にとっても気づかなかったことを気づかせてくれる良い作品になった。日本映画はこうして外国人の視点を取り込むことによって日本の現実を見る見方も広く鋭くなってゆくのである。

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