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正統派の中世剣劇に近い
ナルニア“続編の第1弾”

トッド・マッカーシー
2008/05/22

●原題:The Chronicles of Narnia: Prince Caspian/2008年/アメリカ/140分/2008年5月21日から日本公開
●配給:ディズニー

 ナルニア暦で、第1作目から1300年の時を超え、“続編の第1弾”となる本作は、これまでのロビンフッド映画やアイバンホー黒騎士映画の全てを足したものよりも、多くの剣と剣がぶつかり合う類の映画になっている。2005年の『ナルニア国物語/第1章 ライオンと魔女』で描かれたファンタジーや異国への旅といったものより、正統派の中世剣劇ものに近いこの新作。少々暗く、より型通りではあるが、作りとしては歯切れの良いものになっている。なんと言っても、1作目は米国で2億9200万ドル、そして海外では驚きの4億5200万ドルを稼ぎ出しているフランチャイズだけに、余りあるほどの驚異的な映像と相当量のアクションの助けもあり、ディズニーとウォールデン・メディアは、前作の成績をそう大きく下回ることはないと考えてよさそうである。

子ども子どもしていた俳優たちの成長で
地に足の着いた印象になった2作目

 1950年代初頭に書かれたC.S.ルイスの7冊の本の第2作目となる本作は、ナルニア暦の上では1000年以上の時を超え、前作で白の魔女を倒し、自らが王、そして王女となったペベンシー家の4人の兄弟を、またしても魔法の国へといざなう。前作では、子ども子どもしていた俳優たちが、すっかり大きくなってしまったこともあり、映画は一味違った、地に足の着いた印象になっている。その大きな要因は、本作の題名でもある、もうひとりの中心的人物の存在。その若き戦士は、本来は彼のものであった“王としての地位”を取り戻すために戦い続けなければならないのだ。

 前作に続き、再びメガホンを取るアンドリュー・アダムソン監督、そして共同脚本家のクリストファー・マーカススティーヴン・マクフィーリーは、映画化にあたり、原作小説の構成に対し、ナルニア国で子どもが生まれ、カスピアン王子(ベン・バーンズ)が暗殺の危機にさらされるという冒頭部分の変更を加えている。城からの撤退を余儀なくされたカスピアン王子は、彼らの種族が決して足を踏み入れることのなかった森の奥へと入っていくのだった。

戦火のロンドンを離れた4人の兄弟が
廃墟と化した思い出の地にいなざわれる

 ナルニア暦において、前作に登場していたクリーチャーや話をする動物たちなど、さまざまな種族たちは、聞きなれない地中海風のアクセントで喋る黒髪のテルマール人との権力闘争に敗れ、奥地へと追いやられてしまっている。テルマール人に心底不信感を持っている小人たちやケンタウルス、話好きで毛むくじゃらのクリッターたちは、欲得づくの叔父ミラース卿(セルジオ・カステリット)に、その地位を奪われ逃げてきたカスピアン王子の正体を怪しむしか手立てがない。

 そこに現れるのが、イギリスから来た4人の兄弟である。戦火のロンドンを離れることに嬉々としていたのだが、思い出の地が廃墟と化してしまっていることにすっかりしょげ返ってしまう彼ら。そんな中、年長のピーター(ウィリアム・モーズリー)、花開こうかという年頃になったスーザン(アナ・ポップルウェル)、10代になったエドモンド(スキャンダー・ケインズ)、そしてまだ小さなルーシー(ジョージー・ヘンリー)は、彼らの姿が洞窟の中の壁画に描かれていることを知り、ちょっといい気分になる。全能のライオン、アスランを見つけることはできなかったが、ルーシーは森の中で、誰にもわからないように彼と連絡を取ろうと試みる。

自身2作目となる実写版映画で
確かなセンスを見せつけるアダムソン監督

 『シュレック』の監督でもあり、自身2作目となる実写版映画で確かな映画的センスを見せつけているアダムソンは、現代的な見せかけで飾り立てるのではなく、昔流のやり方にも敬意を払い、勢いのある画面作りで、押しよせるようなアクションシーンを構築している。難攻不落の岩の上に立ち、深い峡谷を渡る橋だけで外界と結ばれ、堂々たる象徴でもあるテルマール人の城からカスピアン王子が撤退するシーンや、夜目にまぎれて誰にもわからないように城に戻るシーンなどは、意図的に相当な暗闇の中で撮影され、ドラマの雰囲気を大いに盛り上げている。ティルダ・スゥイントン演じる白い魔女の再登場も、ワクワクするような驚きになのだが、残念な副産物も生み出してしまっている。彼女自身も、その場面で中心的な役割を果たすべく必死で願っている姿を見るにつけ、彼女はなぜ氷の窓枠から出てきてくれないのだろうか、と思ってしまうのである。

 結局のところ、この作品は、紛れもない戦争映画なのである。カスピアン王子が逃走すると、ミラーツの軍勢が川に大きな橋をかけ、森への道を確保しながら、着々と強情なナルニア族を征服しようと準備を進める。最後の対決には、2つの舞台が用意されている。まずは、対峙する2つの軍勢が大虐殺を避けるように、虚栄心の強いミラーツとピーター(結局、彼は15年もの間、ナルニアの王の座についていたので)の間で、全てをかけた一騎打ちをすることになる。この戦いの場面には、通常では見られない詳細まで描かれ、激しく、そして緊張感のある演技が光る。

 しかし、この戦いが功を奏さなくなると、両軍がなだれ込み、押しつ押されつの衝突はCGIで作り出された殺戮シーンとともに、延々30分近くも続く。結果がどのようになるのかに関しては誰もが知っている通りであり、大事なところに来てアスランが戦いを収めることもわかっているが、それでも本作は、これまで観客が見たこともないような視覚効果を見せて、観客を楽しませてくれている。

ティーンや女性を魅了するベン・バーンズの精悍さ
大人になったスーザンとの恋がロマンチックさをプラス

 バーンズの暗く、精悍な姿は、通常、こういった戦闘もの映画に集まってくるよりも多くのティーン、特に女性を集客してくれるであろうし、彼と大人になったスーザンの間に垣間見られる恋心も、作品にロマンチックな魅力を加えている。また、スーザンがアクションをもこなすヒロインとなっていく様も、本作品の魅力となっている。全体的には4人の子どもたちが、よりはっきりとした個性を持ち、以前よりもずっと楽しく見ていられる。また、イタリア人俳優カステリットの見せる悪役も、とことん無慈悲でありながら、大げさになっておらず、とても印象深い役になっている。

 森や山、そして広々とした原野など、ニュージーランドからポーランド、スロベニア、そしてチェコ共和国に求められたロケーションも、全体的には時を感じさせない、手つかずの大自然といった趣を作り出している。大量に投下された視覚効果も、前作より印象に残る。製作的な価値は一級品であり、ハリー・グレッグソン・ウィリアムスの音楽も、威圧的になり過ぎず、映画が前に進んでいこうとする様を、生き生きとサポートしているのだ。

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