ヘッダーの始まり

グローバルナビゲーションの始まり
ホームニュース特集インタビュー動画コラムレビュー(選択中)ランキングフォトギャラリーピックアップ
最新映画情報V ブログ教えて!エンタ業界転職情報フロムジャパンV プラスメールマガジンプレゼント映画データベース
パンくず式ナビゲーション

みずみずしい緑が、輝くばかりに

2008/05/21

●2008年/日本/カラー/ヴィスタサイズ/ドルビーデジタル/94分/5月24日から日本公開開始
●配給:東宝

場の空気を重んじる映画監督、清水宏

(c)2008 フジテレビジョン・J-dream・東北新社・東宝
(c)2008 フジテレビジョン・J-dream・東北新社・東宝
 昔、清水宏という監督がいた。1930年代、40年代に主に松竹で活躍した人で、商業大作をソツなくこなしてのちの東宝の『大学の若大将』シリーズの原形となる『大学の若旦那』シリーズをヒットさせたと思うと、他方全く自分の好きなままに作ったオール・ロケのロードムービーの『有りがたうさん』や、子どもたちと遊びながら作ったような『子供の四季』でロケ本位の風物詩人として批評家たちに賞賛された。

 よく伊豆にロケに行って、温泉を楽しみながら半ば即興的に映画を作るのが好きで、そうして作られたのが『按摩と女』や『簪』であったという。親しいスターが現場に尋ねてきたりすると、その場で役を工夫して出演させたりしたという伝説が伝わっているが、どこまで本当かは分らない。景色を撮るのに妙を得ていて、撮影の最中に演技している俳優にとつぜん、「芝居をするな」と言ったりしたという。いい風が吹いて木の葉がゆれて、演技が邪魔に思えたのだそうである。そんなその場の気分を重んじる撮り方が新風をもたらしたのである。

驚くほど正確な再現の“カバー”

 石井克人監督の『山のあなた 徳市の恋』はその『按摩と女』のリメークである。元の作品は1938年、70年前のものである。ただしリメークという言葉は使わないで、完全にカバーしたのだと言っている。たぶん、たんなるリメーク以上にもとの作品を忠実に写しとっているという意味であろう。即興的に軽やかに撮った作品を厳密に忠実に再現するというのは逆説的な矛盾だと思うが、驚くほど正確な再現であることに感心する。とくに山あいの小さな温泉町のたたずまいなど、いまはもうこんなひなびた風情の宿屋はどこにもないのではないかと思えるような気分をよく再現していてお見事と言うよりない。

 ストーリーは単純である。季節によって働く場の温泉を変える徳市(草なぎ剛)と福市(加瀬亮)という二人の目の不自由な按摩が今年もこの山間の温泉場に歩いてやってくる。なにしろ元気で意地っぱりな連中で、目明きの旅人を何人追いぬいたということが自慢である。で、旅人たちとの意地のはりあいというところから漫才もどきのギャグがどんどん出てくる。彼らは宿におちついて仕事にはげむが、徳市は東京からひとりで来ているというちょっと謎めいたところのある女に惚れてしまい、彼女のためと思って奮闘する。さあどうなるかは見てのおたのしみ。

日本人の日常の、態度や風情の変化

 昔は、徳大寺伸という俳優が徳市を、日守新一という俳優が福市をやっていた。こんどの草なぎ剛や加瀬亮も上手いしよくやっている。しかし昔の二人のほうがどこか人の好さとぬけたところがあったと思うのだが、どうだろう。これは上手下手以前の問題で、70年前といまと、ふつうの庶民としての日本人一般の日常の態度や風情の変化の問題である。

 かつての白黒の、わびしくくすんだ画調とは違って、こんどは山あいの温泉でもみずみずしいばかりに輝いている。昔、映画批評家の岩崎昶は、映画の国家統制を批判する論文を書いてアカとして逮捕され、一年間刑務所暮しをして釈放されて家に帰った数日後友人だった清水宏から温泉へ行こうと誘われてホッとしたという。岩崎は清水の友情が本当に嬉しかったらしい。あのとき我らの大先輩の二人が見たのもこんな輝くばかりの緑だったのではないか。これはぜんぜん余談だが、映画を見ながら思い出した。

BOOKMARK Yahoo!ブックマークに登録 livedoorクリップに登録 Buzzurlにブックマーク はてなブックマークに登録   E-MAILメールで送る   PRINT印刷する


パンくず式ナビゲーション
広告エリアの始まり

フッターナビゲーションの始まり
フッターの始まり