●原題:The Illusionist/2006年/アメリカ=チェコ/109分/カラー/ビスタサイズ/SR-D/SDDS/5月24日(土)より日本公開
●配給:デジタルサイト/デスペラード
●配給:デジタルサイト/デスペラード
19世紀末のウィーンを舞台に、密通、魔術、そして殺人を題材にした奇妙な物語が、十分な魅力を放つ本作。長編2作目となる監督、脚本家ニール・バーガー(“Interview With The Assassin”)の手によって、非の打ちどころのない出来となっているのだが、アートハウスの観客には、低級雑誌の読み物のようで型通りだと思われてしまうだろうし、現代の一般的な観客には、貴族趣味が高尚過ぎると思われてしまうだろうから、興行的には落としどころが難しい作品になるであろう。しかし、新し物好きで進取的な人々がプロモートすれば、この古典的で非常に高い演技力に裏打ちされたメロドラマの、めくるめくような魅力を楽しんでくれる観客を見つけることができるはずである。
物語に身を委ねてみようという気持ちが生まれてくる作品
作家スティーヴン・ミルハウザー(小説「マーティン・ドレスラーの夢」で、1997年度のピューリッツァー賞を受賞)による短編小説を脚色し、映画化した本作の主人公は、舞台で活躍する幻影師。その圧倒的な奇術の力は、やがて、ハプスブルグ帝国の根底を揺るがす脅威を与えるようになってしまうという物語。出来事の中には、荒唐無稽な展開に観客が目をつむらなければならないようなところや、生の観客の前では披露するのが難しいだろうと思われるマジックもあるのだが、バーガー監督の説得力ある演出に、俳優たちの技量、フィリップ・グラスによる波のように推進力を持つ楽曲、そして、1900年代の古きよきウィーンの壮麗さがもつ魅力も相まって、物語に身を委ねてみようという気持ちが生まれてくる作品となっている。
謎の幻影師を突き動かす、淡い初恋と失ってしまった愛
短めのプロローグの中、天才幻影師として、もてはやされるアイゼンハイム(エドワード・ノートン)は、何も知らず憤慨する観客の目の前で、ウィーン警察に逮捕される。その理由は、レオポルド皇太子(ルーファス・シーウェル)が、アイゼンハイムに擦り付けられる嫌疑がないかどうか調べろと命じたため。それに続く短めの回想シーンで、若き日のアイゼンハイムとかわいらしい上流階級の娘ソフィの淡い初恋、そしてその恋が許されぬものであったことが語られ、青年アイゼンハイムが広い世界を見るためにオーストリアを去っていく姿が描写される。
そして15年後、アイゼンハイムの名声を聞きつけたレオポルド皇太子は婚約者を連れて、彼のショーにやってくる。その婚約者こそ、かつてのアイゼンハイムの恋人ソフィ・フォン・テスチェン公爵令嬢(ジェシカ・ビール)、その人であった。アイゼンハイムが、観客の中から死を恐れぬ、奇術への参加者を募ったとき、レオポルドはソフィに舞台に上がるように薦めてしまう。
御前上演の次の出し物は何か?と皇太子に尋ねられたアイゼンハイムは、生意気にも「あなた様を消してご覧に入れましょう」などと、身分の違う恋敵に執拗な攻撃を仕かけ始めてしまう。アイゼンハイムの見せる奇術が、さらに皇太子レオポルドを侮辱し続けると、ついに皇太子はアイゼンハイムの公演中止を命ずる。
2人の男の間に挟まれてしまったのがウール警部(ポール・ジアマッティ)なのだが、洗練された都会的な彼も、自身の昇進で皇太子に目をかけられていたことから、命令には従わなければならない。同時にアイゼンハイムの才能に引き込まれる警部は、彼の秘密を幾度となく解き明かそうとしながら、この謎の奇術師によって、2人がいかに簡単に国から追放されてしまうかをも警告して行く。
そして15年後、アイゼンハイムの名声を聞きつけたレオポルド皇太子は婚約者を連れて、彼のショーにやってくる。その婚約者こそ、かつてのアイゼンハイムの恋人ソフィ・フォン・テスチェン公爵令嬢(ジェシカ・ビール)、その人であった。アイゼンハイムが、観客の中から死を恐れぬ、奇術への参加者を募ったとき、レオポルドはソフィに舞台に上がるように薦めてしまう。
御前上演の次の出し物は何か?と皇太子に尋ねられたアイゼンハイムは、生意気にも「あなた様を消してご覧に入れましょう」などと、身分の違う恋敵に執拗な攻撃を仕かけ始めてしまう。アイゼンハイムの見せる奇術が、さらに皇太子レオポルドを侮辱し続けると、ついに皇太子はアイゼンハイムの公演中止を命ずる。
2人の男の間に挟まれてしまったのがウール警部(ポール・ジアマッティ)なのだが、洗練された都会的な彼も、自身の昇進で皇太子に目をかけられていたことから、命令には従わなければならない。同時にアイゼンハイムの才能に引き込まれる警部は、彼の秘密を幾度となく解き明かそうとしながら、この謎の奇術師によって、2人がいかに簡単に国から追放されてしまうかをも警告して行く。
生きている人間の「幽霊」を操る幻影師の真意とは?
しかし、ソフィともう一度結ばれるべく決意したアイゼンハイムを止めることができるものは何もない。ソフィから、皇太子が彼女との婚約を発表するつもりであると聞いても、それは変わらない。アイゼンハイムはソフィに婚約発表の取り止めを説得し、それを受け入れさせるが、悲しいかな、レオパルドは“拒絶”の2文字を素直に受け止めるような男ではなかった。
映画の後半は、さらに奇想天外な幻影師として進化するアイゼンハイムを中心に展開する。彼は何と、生身の「幽霊」を舞台に登場させ、話をさせる魔術を披露する。「霊的な社会」を扇動していると、人々からは英雄視されるが、不安を募らせた皇太子レオポルドは、変装してアイゼンハイムのショーにもぐりこむ。
2人の男がぶつかり合う様は、全てを知りすぎたウール警部に、自制心が崩壊するような状況を突きつけるが、それも最終的には、ある意味とってつけたような、そして魔術師の力が信じ込ませたものから、ある意味そう遠くない解決方法にたどり着いていくのである。
映画の後半は、さらに奇想天外な幻影師として進化するアイゼンハイムを中心に展開する。彼は何と、生身の「幽霊」を舞台に登場させ、話をさせる魔術を披露する。「霊的な社会」を扇動していると、人々からは英雄視されるが、不安を募らせた皇太子レオポルドは、変装してアイゼンハイムのショーにもぐりこむ。
2人の男がぶつかり合う様は、全てを知りすぎたウール警部に、自制心が崩壊するような状況を突きつけるが、それも最終的には、ある意味とってつけたような、そして魔術師の力が信じ込ませたものから、ある意味そう遠くない解決方法にたどり着いていくのである。
洗練され、押し殺したようなトーンで話す俳優たちの名演
タイトルにもなっている主人公は、意図的に手の届かないような、知ることのできない謎の人物として描かれている。彼の魔術、そしてそれを生み出す彼の知性は、ある意味、人知を超えているように見える。しかし、そんな彼を突き動かしているのは、結局のところ、失ってしまった愛なのである。そういった構成の中で演技をするノートンは、とても説得力のある人物像を創り上げていると言える。彼は、成功しないと思ったことには決して手を出そうとしないのである。
慣れない時代背景と外国という設定の中、潔癖なまでに身だしなみを整えたジアマッティは、犯罪、秘密、そして社会的な道徳観の住人というクロード・レインズのような役どころをしっかりと押えている。また、他の俳優が、なぞるようなオーストリア人っぽさを見せている中、洗練された英語を駆使するジェシカ・ビールは死をかけて戦う姿を見せ、十分にすばらしく、シーウェルもまた、肩書きどおりの横暴さや残酷さを見せつけている。出演している俳優はみな、洗練され、押し殺したようなトーンで話しており、これも作品の謎めいたムードをさらに盛り上げている。
製作面での成功は、ウィーンの代わりに採用されたプラハのロケーションの壮麗さをうまく活かしていることに因るところが大きく、撮影監督ディック・ポープのレンズは、オンドレイ・ネクヴァシールのプロダクション・デザイン、ナイラ・ディクソンの衣装とともに、控えめな深みをもって、その姿をしっかりと捉えきっている。
慣れない時代背景と外国という設定の中、潔癖なまでに身だしなみを整えたジアマッティは、犯罪、秘密、そして社会的な道徳観の住人というクロード・レインズのような役どころをしっかりと押えている。また、他の俳優が、なぞるようなオーストリア人っぽさを見せている中、洗練された英語を駆使するジェシカ・ビールは死をかけて戦う姿を見せ、十分にすばらしく、シーウェルもまた、肩書きどおりの横暴さや残酷さを見せつけている。出演している俳優はみな、洗練され、押し殺したようなトーンで話しており、これも作品の謎めいたムードをさらに盛り上げている。
製作面での成功は、ウィーンの代わりに採用されたプラハのロケーションの壮麗さをうまく活かしていることに因るところが大きく、撮影監督ディック・ポープのレンズは、オンドレイ・ネクヴァシールのプロダクション・デザイン、ナイラ・ディクソンの衣装とともに、控えめな深みをもって、その姿をしっかりと捉えきっている。











































