ヘッダーの始まり

グローバルナビゲーションの始まり
ホームニュース特集インタビュー動画コラムレビュー(選択中)ランキングフォトギャラリーピックアップ
最新映画情報V ブログ教えて!エンタ業界転職情報フロムジャパンV プラスメールマガジンプレゼント映画データベース
パンくず式ナビゲーション

一攫千金の興行ならずとも
五分五分強の勝算あり

ジョー・レイドン
2008/06/05

●原題:21/2008年/アメリカ/122分/スコープサイズ/5月31日(土)より日本公開
●配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント

 カードの数を数えて、ラスベガスで大もうけをした大学生たちの驚くべき実話を華々しく映画化した本作は、作品自体を賭けとした場合、五分五分より、少し高めの勝算を持ち、興行成績競争でもしかるべき位置につけるだろう。若く魅力的な主人公たちと寡黙なベテラン俳優たち、そうなればいいなぁという想像を満足させてくれる“プロット”といったカードを抜け目なく混ぜ合わせ、都会的で洗練されたパッケージに仕上がっている。逆境を何とか打開しなければと、一度ならずとも思い描いた人であれば、誰でも魅力を感じるはずである。ただ本当の意味での大人気スターが出演していないということで、一攫千金というわけにはいかないかもしれない。

イギリスの新星スタージェスの印象に残る演技

 適度に説得力のあるボストン訛りを身につけたイギリスの新星ジム・スタージェス(『アクロス・ザ・ユニバース』)は、聡明で、少年のようなかわいらしさを残し、それでいてすこぶる内気な数学と科学の天才児ベン・キャンペルを演じ、印象に残る姿を見せている。ベンは、マサチューセッツ工科大学(MIT)の3年目を終えたところで、ハーバード医学部に転入することを希望しているのだが、問題は、彼にも、夫と死別して1人身となっている母(ヘレン・ケリー)にも、医学部の学費を払うお金がないということだ。

 それゆえ数学の教授にして、統計学の天才、冷ややかなゲームショーのホストのように大学の教室を取り仕切る、魅惑的でありながらいつも不機嫌なミッキー・ローザ(ケヴィン・スペイシー)が、MITの優秀な学生たちを集めて作り上げた秘密のチームへ、ベンを引きずり込むのにそれほど大がかりな説得はいらなかった。必要だったのは、セクシーな女子学生ジル(ケイト・ボスワース)の魅力だけ。ミッキーは、週末ごとにラスベガスを訪れ、ブラックジャック台のカードの数を数えるという、ほぼ間違いなく勝てる賭けのシステムを使った一攫千金の小旅行に、ベンをやすやすと誘い入れてしまう。

不正行為の肝を事細かに説明し、巧みにドラマ化

 作戦には、“大物狙い”を任命することが不可欠だ。ベンか、チームで一番のベテラン、フィッシャー(ジェイコブ・ピッツ)ということになるのだが、ベンの役割は、低い賭け金でテーブルの様子を探る“監視役”からの合図を待つことから始まる。監視役として場の動きを探るチームメイトのジル・チョイ(アーロン・ヨー)、そしてキアンナ(ライザ・ラピラ)から、ある台のディーラーが“切っている札が熱くなっている”という知らせが入ると、大物狙いがその台につき、大きな賭け金を動かし始める。大きな賭けは、監視役が退却の合図を出すまで続けられるのだ。

 より一般的な犯罪映画のように、本作も不正行為の肝といったところを事細かに説明し、巧みにドラマ化していくことで、脳裏に焼きつくようなサスペンスを生み出すことに成功している。自ら考えるゲームプランを説明し、ここが勝負どころというときに興奮してはいけない、と何度何度も繰り返すミッキー。 演じるスペイシーはダークな笑いを誘うと同時に、氷のように冷たい威厳を見せつけてくれる。

 チームのメンバーは、ルールに従わない場合には容赦なく罰するとミッキー本人からはっきりと伝えられる。そうは言っても、カードを数える不届き者を阻止するため自ら直接手を下す、いかにも悪辣なカジノの“用心棒”コール・ウィリアムス(とても強面なローレンス・フィッシュバーン)に手を下されるときほど残虐ではないだろう。

切り落とされ、使い勝手のよくなった
“高級な大根”のようなスペイシーの演技

 題材となったのは、1990年代に実在した、ラスベガスから数百万ドルを掠め取ったMITの学生の話を綴ったベン・メズリックのベストセラー小説「ラスベガスをぶっつぶせ(原題:Bringing Down the House)」。ロバート・ルケティック監督(『キューティー・ブロンド』、『ウエディング宣言』)と、脚本家のピーター・スタインフェルドアラン・ローブは、時として意図的に、わかりやすい登場人物たちの成長や、論理を引き伸ばしただけのプロットのひねり、そして大上段なメロドラマ性に頼っているところがある。第3幕で、ミッキーをがっかりさせるメンバーの1人に、かくも容易に彼の鉄の意思を伝授できたのかは、結局、語られずじまいであるし、ベンが、ボタンを1つ残らず留めているようなオタクから、「ビバ! ラスベガス」と歌い上げるような放蕩者へ変身したのも、この作品での描かれ方(より正確には、知らされ方)からすると、完全にもっともらしいとは言いがたい。

 スタージェスは、観客に、思わず彼の演じる人物を応援したくなるような気持ちを持ち続けさせるだけの、一流の仕事をしている。とは言っても、配役としては申し分のないボスワースとのシーンになると、これ見よがしかと思えるほど熱が生まれてこない。スペイシーは、切り落とされて使い勝手のよくなった“高級な大根”と呼んでもいいような演技を見せており、それゆえに、とても面白いものになっている。超ダサいオタクの仲間ジョシュ・ガッド、そしてサム・ゴリザリを含む脇役陣の演技はピカイチである。

視覚効果により、スカっとするほどシュールに見えるカードやチップ

 グレイ・マーシャルに率いられた視覚効果チームは、カメラ技術やCGIトリックを駆使し、ブラックジャックのゲームに、芸術的なレベルのビデオゲームに見られるような、派手派手しさを与えている(とんでもないクローズ・アップで、トランプカードや賭け金のチップを映すと、スカッとするほどシュールなものに見えてくる)。そうした手法は、ただ人々が賭けのチップを置き、トランプのカードを切っているぐらいしか物語性がないシーンでの興奮を、増幅させたいルケティック監督にとって、とてもありがたいものであったに違いない。

 撮影監督ラッセル・カーペンターは、雪深いボストンとネオン瞬くラスベガスのロケーションに、あからさまな対比を持たせることで、作品全体をさらによいものにしている。サウンドトラックも、適切に選ばれたポップ・ミュージックに溢れているのだが、ただひとつ、エンディング・クレジットががっかりするほど浮いてしまっているのは、ローリング・ストーンズの楽曲「ユー・キャント・オールウェイズ・ゲット・ホワット・ユー・ウォント」のリミックスが、メジャー映画の中で流れる曲としては、あまりにも最悪なためだ。

BOOKMARK Yahoo!ブックマークに登録 livedoorクリップに登録 Buzzurlにブックマーク はてなブックマークに登録   E-MAILメールで送る   PRINT印刷する


パンくず式ナビゲーション
広告エリアの始まり

フッターナビゲーションの始まり
フッターの始まり