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人形の上手さと相半ばする、喜劇本来の味わい

2008/06/30

●原題:長江7号/2008年/香港/88分/2008年6月28日よりシネマスクエアとうきゅうほか日本公開
●配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント

小気味よく決まる、爆笑王のギャグ

© 2008 Sony Pictures Entertainment(J) Inc. All Rights Reserved. © 2008 Sony Pictures Digital. All Rights Reserved.
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 建設現場の労働者であるお父さん(チャウ・シンチー)が、そんな身分には不似合いな金持の子ばかりが行く私立の小学校に息子のディッキー(シュー・チャオ)を通わせている。クラスでひとりだけ、貧乏人ここにあり、みたいな恰好をしているディッキーはクラスでいじめの標的にされる。しかし貧しくても誇り高い生き方を教えてくれるお父さんが大好きな彼は、決してひるむことなく、いちいちきちんと反撃して愉快なおとしまえをつける。反撃といっても荒っぽい暴力的なものではなくてマンガのような調子のギャグである。脚本と監督はお父さんの役も演じているチャウ・シンチー。あの『小林サッカー』の爆笑王だ。じつに小気味よくギャグがきまってゆく。お見事。

立派なコメディアン、ナナちゃん

 さらにディッキーは、宇宙からやってきた気の良さそうな不思議な小動物のミラクル7号と知り合い、これをかわいがって一緒に悪ガキどもと戦う。このアイデアは言うまでもなくスティーヴン・スピルバーグの『E.T.』から学んだものだろう。ただしこいつがスピルバーグの映画のように何も出来ない弱者ではなくて、意表をつく奇抜なことをやってのけて楽しませるあたりは「ドラえもん」を思い出さずにはいられない。愛称をナナちゃんというこの小動物が立派なコメディアンで、表情ひとつで笑わせるあたり、作りものの人形のくせになかなか達者な演技者ぶりである。とくに眼つきなどの変化ひとつで雄弁に感情を示して笑わせるあたりはたいした演技術である。

人形が上手ければ上手いほど……

 ただし、人形が上手ければ上手いほど、映画としては巧妙な工芸品のようになっていって、人間が息せききって動きまわるところにこそなんとも言えない親しみが生じてくるドタバタ喜劇本来の野生的な味わいは薄れて、精巧で少々品の良いものになっていると言えるかもしれない。人形やCGで精巧な表現が出来るようになってゆけばゆくほど、生身の人間と人間のドタバタや、からみ合う息づかいからこそ生まれてくる笑いの生理的なナマナマしさはかえって表現し難くなってゆくのかもしれない。人形はとってもよく出来ていて上手いが、ドタバタはやっぱり生身の人間が醜態をさらけ出しながらやってこそ、ヘマをやることの楽しさという意義があるのではなかろうか。この映画は近年の香港映画の洗練ぶりの一例である。笑わせながらしんみりとさせる、その何気ない呼吸なんて本当にうまいのだが……。

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