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学生映画の枠を大きく超えた、長篇ドキュメンタリー

2008/07/03

●2007年/日本/カラー/DV/102分/7月5日からポレポレ東中野にて日本公開
●配給:バックドロップフィルム

はじめは学校の卒業制作のつもりから……

 日本映画学校で映画の作り方を学んでいる若者たちが、はじめは学校の卒業制作にするつもりで東京の青山の国連大学で、国連に難民申請をしているトルコのクルド人の一家の取材をはじめた。そこで出来た人間関係の強い絆に導かれるようにして、彼らは結果として学生映画の枠を大きく超える長篇映画を作り上げ、今年はじめに発表された毎日映画コンクールで2007年の日本の最優秀ドキュメンタリー作品賞を受賞した。

本当の若者ふたり、トルコまで父子を追って

 日本は豊かな先進国であるのに、必死の思いで母国から逃れてくる貧しい難民たちを滅多に受け容れようとしない珍しい国である。トルコで少数民族として迫害されてきたというカザンキランさんは座り込みをしながら必死に苦境を訴えても相手にしてもらえないのに業をにやして、これでも日本は民主主義か、日本人はあわれだ! と、見守っている通行人の日本人たちに叫ぶ。そうまで言われるとただの見物人ではいられなくなるのが本当の若者というものだろう。

 ある日カザンキランさんとその息子が、入国管理局に出頭すると、その場でとつぜん不法滞在者として収監されて直ちにトルコに送り返される。日本で17年ぶりに一緒になれたという妻と娘を残したままという強引さである。いったい彼らはどうなるのだ? そもそも難民とはなんなのだ。そこまで手厳しい扱いを受けなければならない存在なのだろうか。日本での彼らのじつに楽しそうな一家団らんぶりを取材していた監督の野本大とプロデューサーと編集と撮影をした大澤一生はトルコまでカザンキランさん父子を追ってゆく。そして現地でクルド人たちと親しくなり、その生活や意識のありかたに迫ってゆく。

日本の若者の正義感と、知りたいことを知る感銘のみずみずしさ

 クルド人の独立派の動きをトルコ政府は厳しく取り締まっているから正面きった思想調査的な取材はできない。しかしクルド人の村を訪ねて彼らと親しくなるだけでも貴重な経験である。カザンキランさんは難民申請で言っていたような迫害を本当に受けていたのかどうか。それが必ずしも事実ではなくても、差別の現実は村人たちとの和気あいあいとした交歓の中からでも鮮やかに浮びあがってくる。たとえばクルド語の使用を禁じられているとか。それでも実際には日常生活では使っているとか。そういうナマナマしい生きた知識がこの映画にはたっぷり詰まっている。

 さいわいカザンキランさん一家は無事で、あらためてニュージーランドに出国し、そこで家族として生きてゆこうとしている。若者たちはそこまで彼らを追って行って、なんとしても一緒でありたいという彼らの家族主義の真骨頂に接することができる。家族崩壊の時代の日本の若者としてはこれは新鮮な発見である。知るべきことを知るために積極的に行動する。そういういまの日本の若者たちの正義感と、知りたいことを知る感銘のみずみずしさが、この作品を珍しく生きのいいドキュメンタリーにしているのだ。

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