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元気な天才中年が超人力になる
新鮮&優雅な“自家製スーパーマン”

トッド・マッカーシー
2008/09/30

●原題:IRON MAN/2008年/アメリカ/125分/2008年9月27日(土)から日劇3ほかにて日本公開
●配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント

数々のハリウッド大作から勝ち逃げしたヒット作

© 2008 MVLFFLLC. TM & © 2008 Marvel Entertainment. 
All Rights Reserved.
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 これはついに、近代中東の戦争を題材にした映画によって、金儲けをする確実な方法にたどり着くものが現れたということであろうか。それもマーベル・コミックのスーパーヒーローを争いの中に放り込み、反乱者を叩きのめさせるだけでいい、と。コミック・ブックにアイデアを得た大作アクション作品『アイアンマン』が、この夢物語を実現するためだけに作られたにしろ、そうでないにしろ、このスケールが大きく、ド派手に楽しませてくれる特殊効果作品に対する観客の楽しみに変わりはないだろう。ロバート・ダウニーJr. ほどの実力俳優を特殊効果重視の作品の中心に持ってきたことは、大変なプラスであるし、使い古されたフォーマットをかなり格好よく描き直したことで、米国にて夏公開された数々のハリウッド大作の中から勝ち逃げし、驚くべき興行収入をあげてみせた。

最近復活したバットマンよりも、よほどの“自家製スーパーマン”

 そもそも、突然スーパー・パワーを手に入れるのが、オタクの若者ではなく、元気な天才中年だということが、まず新鮮である。その上、敵と戦うために必要な高度な手段を、全て自ら手に入れているところが素晴らしい。ごく最近復活したバットマンよりも、実はよっぽどの“自家製スーパーマン”なのである。私たちは過去に多くの仮面をつけたり、重力をモロともしなかったりするヒーローを見てきたわけだが、本作で主人公が装着する装備は、まるで優秀なスキー・ブーツの製造会社によって作られたかのようであり、画期的である上に、数々の素晴らしい機能が満載なのだ。

 30分に及ぶ導入部分は、主な登場人物の背景と欠陥だらけの主人公の極端に危険な側面をうまくつなぎ合わせている。横柄で口が悪く傲慢なトニー・スターク(ダウニーJr.)は、米軍のために世界で最も精巧な武器を作っている。大酒呑みで女垂らし、“超”のつく億万長者の彼(もともとハワード・ヒューズを大いに参考にしている)は、亡き父親からスターク・インダストリーズを受け継ぎ、父親のパートナーであったオバディア・ステイン(ジェフ・ブリッジス)と共同で会社を経営している。“テクノロジーのダ・ヴィンチ”と称えられ、“死の商人”と非難される彼は、欲しいものを常に手に入れるような男なのである。

アフガニスタン捕虜体験により「世の中への貢献」に目覚めるスターク

 しかし、アフガニスタンでの実演旅行に向かう途中、トニーは肌の色の浅黒い反乱者たちに待ち伏せされ、突然、誘拐されてしまう。彼らはトニーを洞窟に連れ込み爆弾を装着すると、彼らのために最新の素晴らしい武器を製造するよう命令する。しかし厳しい監視下に置かれながらも、抜け目のない彼はハイテクの武装スーツを作り上げ、それを装着することによって自身を“破壊的なロビー・ザ・ロボット”に変身させる。スーツを装着した彼は誘拐者を振りきり、砂漠の中へと飛び立っていく。砂漠にたどり着いた彼は、米軍に救出される前に素早く、そのスーツを破壊してしまうのだ。

 帰国したトニーはまるで別人のようになっていた。捕まっていた間に、「爆破物を製造するよりも、もっと世の中に貢献することができることに気づいた」という彼は、業界から身を引くことを宣言する。それによって彼の会社の株は急落し、冷酷なオバディアを敵に回すことになってしまう。

無敵スーツの実験シーンで見せる素晴らしく完璧な視覚効果

 これから先の人生で何をなすべきか答えを探すトニーは、間に合わせで急造したスーツをより洗練したものにする改良を進めていく。本作で最も素晴らしいシーンのひとつは、彼が倉庫で実験をする場面である。継ぎ目のない完璧な視覚効果で、スーツにすっぽり包まったトニーがブーツとグローブから出るジェット噴流により空中に舞ったり、急上昇したりする姿を描き出している。印象的な初飛行で、彼はマリブの本拠地から飛び出し、サンタモニカ上空を切り裂くように飛びながら、彼の偉大な発明が大気圏外のどこまでたどり着くことができるかを実験するのである。

 その頃、アフガニスタンの悪者たちは、トニーが即興で作ったスーツの残骸をつなぎ合わせ、過去に盗みだし貯蔵していたスターク社の武器で、一般の人々を苦しめていた。これがどういう方向に向かっていくかは火を見るより明らかで、ほどなくしてトニーはアフガニスタンまでひとっ飛びして、悪者たちを練習台に、ちょっとした照準調整のための射撃訓練を行うのである(なぜ彼が帰り道にイラクに立寄り、そこでも事態を整えてこなかったのだろうと思うのは、嫌みな人だけである)。

超音速のアイアンマンと米空軍戦闘機の激しいドッグ・ファイト

 ちなみに、海外における誘拐とその復讐という形式は1963年4月に出版されたマーベル・コミックの「アイアンマン」初版のストーリーラインから変わっていない。ただ、その当時の悪役は“ベトコン”だった。現在の敵は、ある特定の宗教やイデオロギーを信奉していないのだが、そのリーダーであるスキンヘッドのラザ(ファラン・タヒール)は、“現代のジンギス・カン”になるという野望を口にしている。

 トニーが自ら選んだ国際的な護衛者としての役割は、米当局にはうまく受け入れてもらえない。彼のペンタゴンの友人ローディ(テレンス・ハワード)でさえ、そうであった。その流れで、先に述べたものとはまた別の大きなアクションの見せ場となるのが、超音速のアイアンマンが米空軍戦闘機と激しいドッグファイトを繰り広げるシーンなのである。

カメラ前後の才能溢れる顔ぶれが、親しみのある奇想天外さを実現

 海外の悪人が片付き、まぁ少なくともその一時だけは片付いたということにしておき、最終章で展開するのは、トニーと裏切り者のオバディアとの一騎打ちである。子どもたちは、きっと気に入るだろうけれど、クライマックスの“巨大スーツ VS. 巨大スーツ”の対決は、可動パーツの多いマシンと、その結果ガチャガチャと金属のぶつかりあう音ばかりになってしまって、本作品中、唯一の欠点になっている。

 カメラの前後に並んだ才能溢れる顔ぶれは、新鮮なエネルギーと様式的な磨きで、親しみのある奇想天外さを作り上げている。マーク・ファーガス(『トゥモロー・ワールド』)とホーク・オストビー、そしてアート・マーカムマット・ホロウェイという2組の脚本チームは、効果的に融合して物語の展開を進めており、早口でしゃべり続けるダウニーにいくつもの気の利いた台詞を提供している。常に表現力豊かな監督のジョン・ファヴローは、スタークの手下としてちょっとしたシーンに登場している上に、きびきびしていながらも決して大慌てにならないようなペースを維持している。撮影監督のマシュー・リバティックやプロダクション・デザインのJ・マイケル・リーヴァ、そして最高水準の視覚効果チームともうまく手を取り合い、この手のジャンルの映画には珍しく、優雅な作品に仕立て上げている。

バッグス・バニーが人参にかじりつくように、バリバリと台詞を口にするダウニー

 まるでバッグス・バニーが人参にかじりつくように、バリバリと台詞を口にするダウニーは彫刻のように整ったひげを蓄え、こういったジャンルを演じてきたいかなる役者も成すことができなかったような方法で、物語の全てを活性化させている。最初、トニーの持つマット・ヘルム的なライフスタイルを、まるで当たり前のように演じて見せるダウニーだが、彼は第2幕でトニーの原動力になるものや、その頑迷さを完璧に演じきる、比類なき激しさも持ち合わせている。そんな彼の最大の弱点は彼自身のハートで、最初は爆弾の破片に、その後は自身のスーパーパワーの中心に来るものとして、そして、いつでも忠実な味方であるアシスタントのペッパー・ポッツとの密かな恋愛関係として、脅かされることになる。そのペッパーを演じるのは意外な配役のグウィネス・パルトロウであり、知性と魅力を十分に振りまいている。

 スキンヘッドに豊かな髭を蓄えた姿が、どことなくブルース・ウィリスを彷彿とさせるブリッジスは、堂々とした悪役を演じている(2番手にクレジットされているハワード演じる陸軍将校や、その他の役柄はどれも深みに欠けたものになってしまっているが)。技術面は、全てにおいてトップクラスといえる。

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