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幸運が尽きた「盗まれた街」
創造的、商業的にも判断を放棄か

デニス・ハーヴィー
2007/10/23

(c) 2007 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. - U.S., CANADA, BAHAMAS & BERMUDA.
(c)2007 VILLAGE ROADSHOW FILMS (BVI) LIMITED - ALL OTHER TERRITORIES.
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(c)2007 VILLAGE ROADSHOW FILMS (BVI) LIMITED - ALL OTHER TERRITORIES.
●製作:ジョエル・シルヴァー 製作総指揮:ロイ・リー、ダグ・ディヴィソン、スーザン・ダウニー、スティーヴ・リチャーズ、ロナルド・G・スミス、ブルース・バーマン 監督:オリヴァー・ヒルシュビーゲル 脚色:デイヴィッド・カイガニック 原作:ジャック・フィニィ「盗まれた街」 撮影:ライナー・クラウスマン
●ニコール・キッドマン、ダニエル・クレイグ、ジェレミー・ノーサム、ジャクソン・ボンド、ジェフリー・ライト、ヴェロニカ・カートライト、ジョセフ・ソマー、セリア・ウェストン、ロジャー・リース
●2007年/アメリカ/99分/2007年10月20日より渋谷東急ほか日本公開
●ワーナー・ブラザース配給

 すべての善きものには、いつか必ず終わりが来る——ジャック・フィニイによる1955年のSF小説「盗まれた街」を原作とした作品群が、これまで賜ってきた幸運もついに尽きるときがきた。今回は残念ながら、そうなってしまったようだ。トラブルが報じられていた『インベージョン』の製作現場——監督オリヴァー・ヒルシュビーゲルのつないだ作品が会社側を満足させることができなかったとして、その後ウォシャウスキー兄弟が三度にわたり再撮を重ねたと報じられている——そんなことのあった作品は、おしゃれには出来上がっているが、これといった個性もなく、すぐに忘れられてしまうようなスリラーに終わってしまっている。ニコール・キッドマンの魅力もあり、ボンド役以後初めてダニエル・クレイグが得た大作としてPG-13のレートがついたアクション・ホラーは、オープニングの週こそ、まずまずの成績を収めるだろうが、翌週からの興行成績の急落は避けられそうもない。DVDやテレビ放映で黒字にするのがやっとの作品だろう。

それぞれの味を出していた、これまでの映画化作品

 どの作品も興行成績で大成功を収めているわけではないが、この小説を映画化したこれまでの作品は、それぞれの意味でうまくいっていたと言える。ドン・シーゲル監督の『ボディー・スナッチャー/恐怖の街』(56年)は、アメリカの小さな街に起こる異星生物の事件を描いた古典的名作であり、フィリップ・カウフマン監督の『SF/ボディー・スナッチャー』(78年)は舞台をサンフランシスコに移し、よく考えをめぐらせている一作となっており、アベル・フェラーラ監督の『ボディ・スナッチャーズ』(93年)は軍事基地を舞台にし、ぞくぞくするような気味の悪い作品に仕上がっている。そしてロバート・ロドリゲス監督の『パラサイト』(98年)は、続編と認識されていないまでも、明らかにオリジナルからの書き写しで、だがそこは抜け目なく、異星物の侵略物語を、高校の仲間同士のプレッシャーから生まれる別のかたちの物語にうまく置き換えているのである。

意図が見えないドイツ人監督ヒルシュビーゲルの狙い

 英語による長編映画監督デビューとなったドイツ人監督ヒルシュビーゲルと脚本家デイヴィッド・カイガニックが何をしたかったのかって、観客がそれを知るのはたぶん、ディレクターズ・カットのDVDが発売されるとしたらという頃になってしまうだろう。漏れ聞くことによれば、オフビートで政治的に毒があり、ほぼドキュメンタリー的なスタイルで撮るということが監督たちの狙いであったというのだが、その狙い、今回の『インベージョン』では、どこかで行方不明になってしまったのだろう。これ以前の作品にも折を見て敬意を表しているのだが(カウフマン監督のバージョンで記憶に残る演技を見せたヴェロニカ・カートライトがちょっとした役で登場している)、それもどれも以前の作品のほうがよっぽどよかったということを思い出させてしまう要因にしかなっていない。

ご都合主義のストーリーに不自然な回想シーン

 物語は、ばらばらになってしまったスペース・シャトルが、計画になかった大気圏再突入を敢行し、地球上のそこかしこに残骸をばら撒いてしまうところから始まる。調べてみると、その残骸は伝染性の高い異星物胞子に汚染されていることが判明。最初に感染してしまったのが疫病対策センターの局長タッカー・カウフマン(ジェレミー・ノーサム)であったため、これが、病原体を瞬く間に政府やメディア、警察、そして他の社会基盤の隅々にまで侵入させる原因になってしまう。当初「危険なインフルエンザのウィルス」と報道されていたものは、実は、人々を感情のないロボットのようなものに変えてしまう病原体であったのだ。彼らが狙うのは、彼らに協力しようともしない人々を次々とわなにかけていくことだけなのだ。

 タッカーの別れた妻キャロル・ベネル(キッドマン)は、偶然にも、ワシントンD.C.で精神科医を営んでいる。長い間音沙汰がなかったにもかかわらず、突然息子(ジャクソン・ボンド)に会わせてほしいと言ってきたタッカーに、苦々しい思いを持っていた。彼女は、しぶしぶ息子を父親タッカーの家に外泊させる。その後、彼女は外交官の夕食会に出席し、その夜をベン・ドリスコル(クレイグ)の腕の中で過ごす。ベンは医者であり、彼女とは友人以上の関係になりたいと願っている。その夜遅く、彼女は帰宅するが、挙動不振な、恐ろしげな国勢調査員と名乗る男に家宅侵入されそうになる。

 翌日、周りの人間たちの様子もおかしくなっていく——そして40分が過ぎたあたりから、映画は不自然に、ジャンプカットで回想シーンを挿入し始める(現在に戻るカットも不自然)。すでに何かがおかしいとはっきりとわかっているのに、そのことを観客がもしかしたら分かっていないかもしれないからと、まるで疑われたかのような気分にさせられる。キャロルは次から次へと起こる、大げさな追跡シーンで始終危険にさらされるが、味方であるベンと彼の同僚スティーブン・ガリアーノ医師(ジェフリー・ライト)の力を借り、息子(都合のいいことに、この菌には免疫があることになっている)を奪回しようと試みる。


耳を疑うメッセージ

 以前の翻案作品は、フィニイの物語的な前提を隠喩的に生々しく描いていたのだが、今回の『インベージョン』は、ということになると、創造的にも商業的にも自らの判断を放棄してしまったとしか感じられないのが残念だ。

 背景で流れるニュース報道が、病原体の伝染が起こることで世界中の紛争が沈静化していると伝えるところは、うまいやり口なのだが、それにしても、ラストに向かって本作は、戦争と暴力が我々の人間性を作り出す主要な事柄なのだと、とんでもない提言をしてしまっているように見える。ドラマ『ヒトラー ~最期の12日間~』を監督した人物からのメッセージかと、耳を疑う。反対に、物語を押し進める手法としては、家族の価値を大切にするという感傷的なものを使う、という決まりきったものだ(レプリカントを爆破させながら、「誰も、私の子供に手を触れさせないわ!」などと、武器を持ったキッドマンが叫んだりする)。


演技でカバーしきれない退屈な人物設定

 胞子の侵入は人間が眠っている間に起こるので、キッドマンが演技力を見せられるのは、不眠症で極度に疲れているという演技だけ。彼女も、そして出番の少ないクレイグも、つまらなく書かれてしまった人物像を説得力のあるレベルに持ち上げることはできなかった。こういった場合によくあることなのだが、本作一番の演技を見せるのはタッカー役のノーサム。とは言え、器用で、気味が悪く控えめな彼の演技をもってしても、ゾンビになってまで、怒ってばかりいる、典型的なダメ元亭主としか描かれていなかったタッカーのシーンを立て直すことはできなかったようだ。

 技術的な面やデザイン面は、みなプロの仕事だが、それでも独特の雰囲気やサスペンス、映像的な興味深さを作り出すことはできていない。たぶん、今回の『インベージョン』で唯一特筆すべき要素があるとすれば、それは本作が、我々の生きる映画のような時代を代表するかのような、新しい病原菌伝染経路を確立したことであろう。勢いよく噴出される嘔吐物による伝染経路というものを。

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