
(C)2007 TWENTIETH CENTURY FOX
●製作総指揮:トッド・キング 製作:マイケル・ロイフ 監督:エイドリアン・シェリー 脚本:エイドリアン・シェリー 撮影:マシュー・アーヴィング 編集:アネット・デイヴィー 音楽:アンドリュー・ホランダー
●出演:ケリー・ラッセル、ネイサン・フィリオン、シェリル・ハインズ、エイドリアン・シェリー、リュー・テンプル、エディ・ジェイミソン、ジェレミー・シスト、アンディ・グリフィス
●2006年/アメリカ/107分/2007年11月17日シャンテ シネほか全国順次日本公開
●配給:20世紀フォックス
●出演:ケリー・ラッセル、ネイサン・フィリオン、シェリル・ハインズ、エイドリアン・シェリー、リュー・テンプル、エディ・ジェイミソン、ジェレミー・シスト、アンディ・グリフィス
●2006年/アメリカ/107分/2007年11月17日シャンテ シネほか全国順次日本公開
●配給:20世紀フォックス
『ウェイトレス~おいしい人生のつくりかた』の脚本家兼監督エイドリアン・シェリーの40歳での悲劇的な死(2006年11月1日、騒音トラブルに巻き込まれ殺害)から3ヶ月足らず。『ウェイトレス』のサンダンス映画祭でのプレミア上映は本当にほろ苦いものだった。この映画は、世界を揺るがすような名作ではないかもしれないが、シリアスな部分もある心温まる良く出来たコメディで、シェリーの過去の監督作品 “Sudden Manhattan”と “I’ll Take You There”の時よりも、才能が円熟味を増したことがうかがえる作品である。シットコムの領域に近いところもある一方で、不幸な結婚と危険な不倫との板ばさみになった、田舎町に住むヒロインを描いたこの話は、作り手が意図した通りに可笑しくてチャーミングだ。大人の女性の観客たちには大ウケしそうな話だし、テレビ放映やDVDレンタルでも充分楽しめる映画である。
パイ作りの天才の孤独な夫婦関係
ジェンナ(ケリー・ラッセル)は“パイ作りの天才”だ。想像力に富んでしかも美味しいパイを考え出す才能は、今は亡き母親から受け継いだもの。(映画の中に登場するデザートは、色を強調したマシュー・アーヴィングの撮影のおかげで、垂涎ものの映像モチーフとして登場する。)常連客たちは、彼女が毎日焼く最新作パイと定評のある人気パイに惹きつけられて、小さな南部の町にあるジョーズ・パイ・ショップを訪れていた。
しかし、彼女の人生は行き詰っていた。夫のアール(ジェレミー・シスト)は粗野で支配欲が強く、そんな夫へのジェンナの愛は冷めていた。彼女は夫のもとを去りたくてしょうがなかったが、他に行くあても無かったし、夫の振る舞いは暴力をふるいそうな危険性をはらんでいるように思われた。自由の身になる唯一の道は、しばらくの間、自分独りで暮らせるだけの金が出来次第、夫のもとから素早く逃げ出すしか無いと考え、ジェンナはチップの金を少しずつ貯めていた。
しかし、彼女の人生は行き詰っていた。夫のアール(ジェレミー・シスト)は粗野で支配欲が強く、そんな夫へのジェンナの愛は冷めていた。彼女は夫のもとを去りたくてしょうがなかったが、他に行くあても無かったし、夫の振る舞いは暴力をふるいそうな危険性をはらんでいるように思われた。自由の身になる唯一の道は、しばらくの間、自分独りで暮らせるだけの金が出来次第、夫のもとから素早く逃げ出すしか無いと考え、ジェンナはチップの金を少しずつ貯めていた。
妊娠中に知り合った医者との禁じられた恋
そんなわけで、映画の冒頭で、自分が妊娠していることを知っても、彼女は全く喜ばない。(酒に酔った勢いで夫とセックスした結果だという、今どき珍しいような妊娠である。)ジェンナは、自分の苦境はベビーのせいではないことが判っているので中絶はしないが、気がつかれる前に逃げ出すことを見込んで、アールにも妊娠の事実は伝えようとはしない。
しばらくの間、ジェンナ以外に彼女の妊娠のことを知っているのは、引っ越してきたばかりの町医者のポマター先生(ネイサン・フィリオン)だけとなる。ジェンナとポマター先生は、あるまじき行為ではあるが、ほとんど一目惚れのように御互いに強く惹かれ合ってしまう。
しばらくの間、ジェンナ以外に彼女の妊娠のことを知っているのは、引っ越してきたばかりの町医者のポマター先生(ネイサン・フィリオン)だけとなる。ジェンナとポマター先生は、あるまじき行為ではあるが、ほとんど一目惚れのように御互いに強く惹かれ合ってしまう。
パイ・ショップを取り巻くさまざまな人々
その頃、ジョーズ・パイ・ショップでは、いつも通りの日常が展開していた。マネージャーのキャル(リュー・テンプル)は皆に怒鳴りまくっていたし、愛せる人を探している内気な同僚のウェイトレス、ドーン(シェリー)は、最初は嫌悪感を抱いていた男(エディ・ジェイミソン)を愛するようになる。“もうろくした病人”と結婚しているという派手なベッキー(シェリル・ハインズ)は、誰かと遊んでいるらしいが、相手の正体は明かそうとしない。このダイナーのオーナーで気難しいオールド・ジョー(アンディ・グリフィス)は、ジェンナのパイを楽しみにしてやって来るが、彼女の個人的な事をせんさくする。彼は、虚勢を張っているだけで本当は情にもろいのである。
程無くして、ジェンナとハンサムなドクターは情事に身を焦がすが、彼女の妊娠が進んでアールに気がつかれてしまう。それでも、彼女はどうにかして逃げ出したいと考える。しかし、彼女が遂に決心をする際には、メロドラマ的あるいはコメディ的なわざとらしく不自然な展開にはならず、爽快なぐらいシンプルな心境の変化が訪れる。
程無くして、ジェンナとハンサムなドクターは情事に身を焦がすが、彼女の妊娠が進んでアールに気がつかれてしまう。それでも、彼女はどうにかして逃げ出したいと考える。しかし、彼女が遂に決心をする際には、メロドラマ的あるいはコメディ的なわざとらしく不自然な展開にはならず、爽快なぐらいシンプルな心境の変化が訪れる。
コメディになりすぎない自制した演出と演技
この映画には、時としてぶりっ子っぽいシーンがあるし、ダイナーの動的なシーンは、70年代のシットコム「アリス」にちょっと似過ぎているところもある。しかし、ほとんどの場合、監督のシェリーは、自制を利かせつつ手際良く、脚本のコメディ・ドラマにおちいりそうな可能性を遮断している。
その点において大きな助けになっているのは、ラッセルの簡潔で堅実な演技で、この映画のシリアスな部分をしっかり押さえると同時に、コメディタッチで楽しめる場面とのコントラストを際立たせるのに役に立っている。例えば、ドクターに対する突然の恋心で顔を輝かせているジェンナの可愛らしくて可笑しいモンタージュ・シーンでは、それまで抑えられていた感情が一気にほとばしり、監督は、そのコントラストを充分活用して演出している。
その点において大きな助けになっているのは、ラッセルの簡潔で堅実な演技で、この映画のシリアスな部分をしっかり押さえると同時に、コメディタッチで楽しめる場面とのコントラストを際立たせるのに役に立っている。例えば、ドクターに対する突然の恋心で顔を輝かせているジェンナの可愛らしくて可笑しいモンタージュ・シーンでは、それまで抑えられていた感情が一気にほとばしり、監督は、そのコントラストを充分活用して演出している。
すべてのレベルで愛情を込めてまとめられた作品
シストは、アールに脅威的な面と同時に或る種の悲哀を持たせることで、偏狭で酷薄な田舎者という陳腐な人間像になるのを避けた。と同時に、田舎者の不運を漂わせることによって、この映画が、必要以上に暗すぎるドメスティック・バイオレンスの領域に引きずり込まれることなく、快活な作品であり続けられるようにしている。ジェンナにぞっこん惚れ込んでいるドクターを演じているフィリオンには、ちょっと間の抜けたチャーミングさがある。
『ウェイトレス』は、おそらくシェリーの死後(彼女はマンハッタンの自宅アパートで殺された)、ポストプロダクション作業が行われて完成した作品であろうが、全てのレベルで愛情を込めてまとめられた作品であり、細やかに注意が払われた活気あるプロダクション・デザインは食べたくなるほど“おいしそう”である。
『ウェイトレス』は、おそらくシェリーの死後(彼女はマンハッタンの自宅アパートで殺された)、ポストプロダクション作業が行われて完成した作品であろうが、全てのレベルで愛情を込めてまとめられた作品であり、細やかに注意が払われた活気あるプロダクション・デザインは食べたくなるほど“おいしそう”である。

































