●監督:マイケル・ウィンターボトム 脚色:ジョン・オーロフ 原作:マリアンヌ・パール「マイティ・ハート」 撮影:マルセル・ザイスキンド 編集:ピーター・クリステリス 音楽:モリー・ナイマン、ハリー・エスコット 製作:ブラッド・ピット、デデ・ガードナー、アンドリュー・イートン
●出演:アンジェリーナ・ジョリー、ダン・ファターマン、イルファン・カーン、デニス・オヘア、アーチー・パンジャビ、ウィル・パットン、ゲイリー・ウィルメス
●2007年/アメリカ/103分/2007年11月23日 日本公開
●配給:UIP
●出演:アンジェリーナ・ジョリー、ダン・ファターマン、イルファン・カーン、デニス・オヘア、アーチー・パンジャビ、ウィル・パットン、ゲイリー・ウィルメス
●2007年/アメリカ/103分/2007年11月23日 日本公開
●配給:UIP
『マイティ・ハート/愛と絆』は、ウォールストリート・ジャーナルの記者、ダニー・パールの悲劇的な死の物語を、事実関係に忠実であると同時に感情面のドラマも損なうことなく映画化した作品である。この映画が初のスタジオ作品になるマイケル・ウィンターボトム監督は、パキスタンでのパールの誘拐殺人事件を簡潔明瞭に秩序立てて説明していると同時に、パールの帰還を求める人々の目を通して、この事件から膨大な量のディテールを引き出している。9月11日テロやその後遺症を描く映画は敬遠されていることを考えると興収は伸びにくいだろうが、パールの未亡人を演じるアンジェリーナ・ジョリーの演技が興行的な見通しを明るくしてくれるはずである。
控えめな語り口がテーマに最適であるウィンターボトム監督
過去に、『イン・ディス・ワールド』と『グアンタナモ、僕達が見た真実』で、思い切って中東の政治問題に取り組んだウィンターボトムは、マリアンヌ・パールの痛ましい回想録の映画化という任務には最適だったことは明らかだ。イギリス出身のウィンターボトムは、多作でありながら同じような作品は二度と作らないカメレオンのような監督だが、複雑な話をうまくまとめ、センセーショナリズムにはしるようなことは一切避けて、少しずつ恐怖を盛り上げていくという、ドキュ・ドラマの話法に長けており、この作品にはこれ以上無いほどの適任者となっている。
複雑な迷路のような物語を図解するように語る脚本
2002年1月23日、9/11のテロ事件後の米軍のアフガニスタン爆撃を取材するため、パール夫妻は、ジャーナリストとしてパキスタンのカラチに滞在していたが、夫のダニー(『カポーティ』の脚本家ダン・ファターマン)は、靴爆弾未遂事件の犯人、リチャード・リードについての記事を書くために、タクシーに乗り込んだまま帰って来なかった。映画は、妊娠後期に入っていたマリアンヌ(ジョリー)に密着して、メディアの注目を浴び続けながらダニーの行方と誘拐犯たちの正体を追求する不安な5週間を詳述する。
脚本は、誤った手がかりと、ダニーが消えた夜に彼が連絡を取ったかもしれない仲介者たちに対する無益な尋問とが絡み合う迷路のような話を、歯切れ良く図解するように語っていく。最終的に、外国人誘拐の前科があるイスラム過激派で、とらえどころの無いオマール・サイード・シェイク(アリ・カーン)が最有力容疑者と目される。
シェイクは他の容疑者たちと同様、ほんの少しの間登場するだけで、可能な限り客観的に描かれている。ウィンターボトムは、刑事物犯罪ドラマのようなキビキビした推理物のスタイルで、苦渋に満ちた段階を追いながら救出活動を綿密にたどっていくが、その際、観客には悲劇的な結末が判っていようとも、絶対に余計な情報を与えないようにしている。例えば、パキスタン人の容疑者が宙吊りにされて尋問されているシーンの言外の意味や、ジャーナリスト夫婦がマスコミによる激しい取材攻勢にさられるという残酷なアイロニーなどといった、より大きな政治的問題さえ、ストーリーを語る流れの中に取り込まれている。
脚本は、誤った手がかりと、ダニーが消えた夜に彼が連絡を取ったかもしれない仲介者たちに対する無益な尋問とが絡み合う迷路のような話を、歯切れ良く図解するように語っていく。最終的に、外国人誘拐の前科があるイスラム過激派で、とらえどころの無いオマール・サイード・シェイク(アリ・カーン)が最有力容疑者と目される。
シェイクは他の容疑者たちと同様、ほんの少しの間登場するだけで、可能な限り客観的に描かれている。ウィンターボトムは、刑事物犯罪ドラマのようなキビキビした推理物のスタイルで、苦渋に満ちた段階を追いながら救出活動を綿密にたどっていくが、その際、観客には悲劇的な結末が判っていようとも、絶対に余計な情報を与えないようにしている。例えば、パキスタン人の容疑者が宙吊りにされて尋問されているシーンの言外の意味や、ジャーナリスト夫婦がマスコミによる激しい取材攻勢にさられるという残酷なアイロニーなどといった、より大きな政治的問題さえ、ストーリーを語る流れの中に取り込まれている。
難しいアクセントを操り、抑制を利かせた注意深い演技のジョリー
ストーリーが進んで行く過程で、映画は、ダニーの意志の強い同僚アスラ・ノマニ(アーチー・パンジャビ)や、この事件でパキスタンの評判が傷つかないよう苦慮する、キャプテンと呼ばれる地元の刑事(イルファン・カーン)、悪い報せの全てに希望の兆しを見出しがちなアメリカ領事館の保安問題担当官ランダル・ベネット(ウィル・パットン)、厳しい試練の知らせを聞いてパキスタンにやって来るウォールストリート・ジャーナルの上司で快活だが気分を安らげてくれるジョン・バッシー(デニス・オハラ)といった、マリアンヌの主要な支援者や味方を鮮やかに描写していく。
しかし、これは最終的には、マリアンヌ・パールに密着したストーリーであり、アンサンブル・キャスト全体を形どる自然な骨組みの中にしっくり納まっているジョリーに負うところが大きい作品である。ジョリーは、大きな付け腹をして、手のかかった髪形をして、非常に難しいアクセント(アフリカ系キューバ人とオランダ人を祖先に持つマリアンヌはフランス育ちである)で台詞をしゃべっているが、よく知られたセレブリティの顔の陰から演技者の存在が消えうせるようにしてスターが堂々と演じているといった演技ではない。早計に過ぎる悲しみと根強く残る希望との間にとらわれている女性を、抑制を利かせて注意深く描写した演技なのである。
しかし、これは最終的には、マリアンヌ・パールに密着したストーリーであり、アンサンブル・キャスト全体を形どる自然な骨組みの中にしっくり納まっているジョリーに負うところが大きい作品である。ジョリーは、大きな付け腹をして、手のかかった髪形をして、非常に難しいアクセント(アフリカ系キューバ人とオランダ人を祖先に持つマリアンヌはフランス育ちである)で台詞をしゃべっているが、よく知られたセレブリティの顔の陰から演技者の存在が消えうせるようにしてスターが堂々と演じているといった演技ではない。早計に過ぎる悲しみと根強く残る希望との間にとらわれている女性を、抑制を利かせて注意深く描写した演技なのである。
夫婦の愛情関係を感傷的になりすぎないよう表現
ジョリーは、マリアンヌを辛辣で怒りっぽいが、高潔で、夫に愛情を注いでやまない女性として演じている。ウィンターボトムは、賢明にも、必要以上に芝居じみた演技を引き出すのを拒否するかのように、彼女が激しく感情をほとばしらせるシーンでは、遠くから撮ったり、非常に暗い中で撮影している。
非常に短いラブシーンを含む、マリアンヌとダニーの結婚生活の幸せな日々を控えめに描く回想シーンが時おり入るが、この作品の非感傷的アプローチを損なうものでありながらも、叙情性を加えている。
非常に短いラブシーンを含む、マリアンヌとダニーの結婚生活の幸せな日々を控えめに描く回想シーンが時おり入るが、この作品の非感傷的アプローチを損なうものでありながらも、叙情性を加えている。
短いショットを多用し、速いテンポで事実を描写
この映画は、広く出回ったパールの殺人のビデオを見せるか、見せないかという難題にも直面したが、論議を呼んだ映像の生々しくない部分を再現した非常に短い映像を見せることによって、最も抑制を利かせたやり方で事実をわからせることに成功している。
この作品は、パキスタン、インド、フランスというロケーションにて、ウィンターボトム作品の常連である撮影監督のマルセル・ザイスキンドの手持ちHDカメラによって撮影されたことで、真実味があるダイナミックな映像が得られた。また、ピーター・クリステリスによる速いテンポでの編集によって、ほとんどのショットは数秒以下という短さになっている。
この作品は、パキスタン、インド、フランスというロケーションにて、ウィンターボトム作品の常連である撮影監督のマルセル・ザイスキンドの手持ちHDカメラによって撮影されたことで、真実味があるダイナミックな映像が得られた。また、ピーター・クリステリスによる速いテンポでの編集によって、ほとんどのショットは数秒以下という短さになっている。

































